第3節:黒薔薇クラスの噂
転移して、目覚めた私――シルヴィア・ド・ノワール。
異世界で、私は貴族令嬢として生きることになった。
そして――
黒薔薇クラスという、特別なクラスに配属された。
「黒薔薇クラス……?」
メイドに案内されて、教室の前に立った私は、首を傾げた。
「はい。第二皇子殿下の婚約者候補を集めた、特別なクラスです」
「婚約者候補……」
(つまり、お嬢様学校ね)
私は、内心で理解した。
教室に入ると――
十数人の令嬢たちが、既に座っていた。
皆、豪華なドレスを着て、優雅な雰囲気を漂わせている。
「あら、新しい方ですわね」
一人の令嬢が、私に声をかけた。
赤い髪の、凛とした少女。
「はじめまして。シルヴィア・ド・ノワールと申します」
私は、優雅に一礼した。
「まあ、お美しい……。私、エリザベート・フォン・クリムゾンと申しますわ」
赤髪の令嬢――エリザベートが、微笑む。
「よろしくお願いしますわ」
「こちらこそ」
席に着くと、隣の席の令嬢が小声で話しかけてきた。
「ねえ、知ってる?」
「何を?」
「この黒薔薇クラスって――本当は、婚約者候補じゃないのよ」
「……え?」
私は、驚いた。
「実は――国家暗躍のために、悪の令嬢を育てる場なんですって」
「え……」
私は、絶句した。
(国家暗躍? 悪の令嬢?)
「だから、私たち、特別な訓練を受けるのよ。表向きは婚約者候補だけど、裏では――王国の影の支配者になるための……」
隣の令嬢が、目を輝かせる。
(……これ、完全に妄想じゃない?)
私は、内心でツッコミを入れた。
その時――
教師が、教室に入ってきた。
「それでは、授業を始めます」
教師――初老の女性が、教壇に立つ。
「今日は、社交術について学びます。パーティーでの振る舞い、会話の作法――」
(……普通の婚約者候補教育だ)
私は、安堵した。
どうやら、教師は普通に授業をしているようだ。
「悪の令嬢育成」なんて、完全に生徒たちの妄想だ。
だが――
授業が進むにつれ、私は気づいた。
生徒たちが、教師の言葉を――
まったく別の意味で解釈している。
「社交術とは、相手の心を読み、場を支配することです」
教師の言葉に――
「支配……!」
生徒たちが、目を輝かせる。
(……いや、普通の社交術の話だから!)
私は、内心で叫んだ。
こうして――
私の異世界生活は、妄想と勘違いに満ちた日々として始まった。
第2節:偽装皇子の潜入
黒薔薇クラスに入学して、一ヶ月が経った。
そして――
ある日、新入生が紹介された。
「皆さん、今日から新しい仲間が加わります」
教師が、一人の少女を連れてくる。
金色の髪。
眼鏡をかけた、知的な雰囲気。
質素だが清潔な服装。
「セーラと申します。よろしくお願いします」
少女――セーラが、深々と頭を下げた。
(……え?)
私は、彼女を見て――
瞬時に理解した。
(これ、男の子じゃない?)
体格、声、仕草――
すべてが、女性にしては不自然だ。
しかも――
(この顔、どこかで……)
そう思った瞬間、記憶が蘇った。
王宮で見た肖像画。
第二皇子、セラフィン・ルクス・アークライト。
(……完全に一致してる)
私は、内心で驚愕した。
(皇子様が、女装して潜入してる!?)
セーラが、私の隣の席に座った。
「よろしくお願いします、シルヴィア様」
「ええ、よろしく……セーラさん」
私は、努めて冷静に答えた。
だが――
(バレバレすぎる……)
その時――
エリザベートが、セーラに話しかけた。
「セーラさん、初めまして。エリザベートと申しますわ」
「あ、はい……よろしくお願いします」
セーラが、緊張した様子で答える。
「ところで、セーラさん」
エリザベートが、少し首を傾げる。
「お声が、少し……男性的ですわね」
「え、あ、あの……!」
セーラが、慌てる。
「風邪を引いていまして……!」
「まあ、大変。お大事になさってくださいね」
エリザベートが、優しく微笑む。
(……エリザベート、気づいてるよね?)
私は、確信した。
でも、あえて言及しない優しさ。
そして――
放課後。
私は、セーラを呼び止めた。
「セーラさん、少しお話が」
「え、あ、はい……」
セーラが、恐る恐るついてくる。
人気のない廊下で、私は振り返った。
「セラフィン殿下」
「……!」
セーラ――いや、セラが、固まった。
「ば、バレて……!?」
「一目で分かりますわ。女装が下手すぎます」
私は、苦笑した。
「う……」
セラが、うなだれる。
「でも、ご安心ください。私は口外しません」
「本当ですか!?」
「ええ。ただ――」
私は、セラを見つめた。
「なぜ、こんなことを?」
「あ、あの……」
セラが、恥ずかしそうに答える。
「婚約者候補の、性格を……観察したくて……」
「観察……」
「はい。どんな方々なのか、直接見てみたかったんです」
セラの瞳は、真剣だった。
「……なるほど」
私は、理解した。
(真面目な皇子様なのね)
「分かりました。私も協力しますわ」
「本当ですか! ありがとうございます!」
セラが、顔を輝かせる。
こうして――
私と皇子の、奇妙な共犯関係が始まった。
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