表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

さばねこである、小さな君が

夏の始まりに、小さな君と出会った。


小さいながらも灰色に立派な縞模様が入った毛並みの君は、小さな男の子の両手に抱かれてやってきた。


海辺の街生まれの君は、5匹兄妹のうちの1匹で、三毛模様の姉妹がいる男の子。

君そっくりのお母さんは、男の子の家族に拾われたらしい。(多分お父さんは三毛猫だ!)

お母さんと君と一緒に生まれたうちの1匹の兄妹は、男の子の家族が面倒をみるという。


男の子のお母さんは、君のことをこう話した。


‘他の兄妹達よりも慎重な君は、みんながご飯を食べ終え、動き回った後から動く。

たまにお漏らしをする。’

(きっとのんびり屋で、綺麗なトイレじゃないと嫌なんだ!)


うちにやって来た日から、君にはみんなが手を焼いた。

小さな君はまだ生まれて2ヶ月。

ひとりで眠ることもできない。

僕がいなくなると、寂しくて泣き続けるし、一緒に寝ればおねしょの大洪水。

見つかると、部屋中走り回り、カーテンをよじ登って上へ逃げていく。

とてもやんちゃで、怖いもの知らず。

初めて会う人や動物にも物怖じせず、素知らぬふりして真横をとことこ歩いていく。

(一緒にいるこちらがはらはらする!)


しばらくして、君には新しい家族が増えた。

君の家族の数は全部で5。(君を合わせると6)

君より先に家族になったうさぎの女の子は、君の姉役をかってでた。

君が悪戯をしかけると、カウンターキックをすることに彼女は決めたようで、君はそれから彼女に手出しを控えるようになった。

君のおねしょは止まず、君は1匹寝もできない。

おトイレは増えてもなかなか気に入らず、家族はたまに怒りをぶつけていた。(今では妬けるほど仲が良い)


君は遠くへ車で移動することになった。

小さな君は車の中でじっとできず、時には人の手が届かないダッシュボードの中に入り込んで、泣き続けるような男の子。

鳴かなければ、君が何処へ消えたのか分からない。

車の外に逃げてしまったと探し回った末、小さく鳴く君を、君を探す誰かが見つけた。

ゲージに閉じ込めると、ずっと鳴き続けるから、車を休ませる度に君を、そこから出さなければならない。

君は興味深々で運転席にやってきて、外の景色を伺おうとする。

車の周りが人や車で騒がしくなれば、恐れて足元に座り込む。

小さな君にとっては、大きな大冒険。


君はようやく新しい家に馴染んできた。

一緒に寝てもおねしょしなくなったし、いつの間にかお姉さんうさぎよりも大きくなった。

相変わらず1匹寝は苦手で、誰かが寝ている側で大抵一緒に寝ている。

少し窮屈な場所が好きで、腕や足の凹みや、お腹の上に最初はやってくる。(後で寝返りの下敷きにならない場所に避難しているようだけど)

誰かが部屋に入ってくれば、待ってましたと迎えにいくし、話しかければ、猫の言葉で返事を返す。


君が一歳の誕生日を迎えた時、君は人よりも早いスピードで大人になった。

君へのプレゼントは新しい名前入りの首輪。

君はたまに部屋から他の部屋へ脱走する。

(家の外に脱走することはなくなったね!)

君につけられた鈴は、上手く隠れた君を探すためのもの。

君はかくれんぼが大好きで、一目散に走って、上手く隠れようとする。

誰かが君を見つけて抱き上げると、君は満足そうに喉を鳴らす。

見つけられたい君に、ちりんとなる小さな鈴は必要だね。


いつの間にか大人になった君は、身体が大きくなることはなくなった。

君が喧嘩をするのは、庭にやってきた近所の猫と窓越しに鳴き合うくらい。(たまに窓ガラスがバンバン叩かれてる…)

うさぎとはよく陣取り合戦を繰り広げて遊んでいるし、人ともそうやって遊びたがる。


ある時体調を崩して、君にしばらく会えない時があった。

君は近寄ってきてしばらく遊んでいくと、急に威嚇するように噛みついてきた。

(すごくびっくりした!)

しばらく遊んでも、君を捕まえて話を聞いても、君は一向に態度を変えない。

君達の3階建てのアパートメントを見て、ようやく気づいた。

2階のお姉さんうさぎの水がなくなっている。

それに気づかなかったことを君が怒っていたのか。

君はいつの間にか動物達のボス猫になっていたようだ。

ボス猫だったら、怒るのは当たり前だね。

水が貰えたうさぎを見て君は、満足そうにお姉さんうさぎの部屋の前に座っていた。


昨日は雪が降った。

君はうっかり窓から飛び出して、初めて雪を踏んだ。

飛び跳ねるように庭の少し奥まで行くと、しばらく立ったまま周囲を窺っていた。

そしてあっという間に部屋の中に飛び込んだ。

かなり寒かったのか、あたたかい場所から動かない。

君の初雪探検はそうやって終わりを告げた。

翌日雪は無くなったが、君は窓を開けた途端に庭へ出ていく。

君にとって外の世界は魅力的で、飛び出す衝動は抑えられぬようだ。

でも君は遠くまで行かず、少し離れた場所で、新しい世界をじっと見ている。

君にとって外の世界が安全であれば、たまには出してあげられるんだけどね。


春が近くなり、君は家の住人の隙を見ては、たびたび外に出るようになった。

扉の鍵などものともしない君は、逃げ出すとたいてい暗がりの倉庫や庭の片隅に佇んでいる。

暗い場所が居心地のよい場所らしくて、家の中でもマイポジションは暗い寝室の布団の上。


でも、二歳になる頃。

君はいろんな音に悩まされるようになった。

家の中で響く奇妙な音。

君はその正体を探しに、または音から逃げるように、家から飛び出すことも多くなった。

猫の君には人の聞こえぬ音も聞こえているようで、君は外の景色が見える窓の近くで、時折耳を澄ましたまま立ち止まる。


20250110 作成

20250506 変更

20260105 短編集に編入

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ