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第6章

10月も下旬に入り、いよいよ新システムの移行に向けての準備が本格化してきた。管制チーム全体がその移行に向けて気を引き締める中、片山たちのチームは休日を利用して、羽田空港の敷地内にある国土交通省東京航空局東京空港事務所の管制業務シミュレーターでの研修に臨むこととなった。

研修当日、片山たちは施設に集合した。施設は最新の設備が整い、管制業務をリアルに体験できるようになっている。

「本日の研修を担当します、東京航空局の永井です。皆さん、今回の研修では新システムの基本操作や、緊急時の対応についても学んでいただきます。」

研修開始の挨拶をするのは、新システム導入を統括している担当官の永井和樹だった。彼は冷静で的確な指導で知られる人物で、今回の研修ではインストラクターを務める。

「みんな、今日は新システムに慣れるための重要な研修だ。各自の役割を確認し、確実に習得してくれ。」と佐藤が言った。

研修は二部構成で、午前中はシステムの概要説明と新機能の解説、午後は実際の運用を想定したシミュレーション演習が行われる予定だった。

「今回導入されるシステムは、これまでの操作性を維持しつつ、安全性と効率性を向上させることを目的としています」と永井が説明を始める。

片山は真剣な表情でスライドを見つめ、ノートに要点を書き込んでいた。隣に座る真奈美もメモを取りながら質問を投げかけた。

「永井さん、このシステムはリアルタイムの気象情報も統合されるんですか?」

「はい、気象データは自動で更新され、管制官が即座に判断を下せるように設計されています。特に台風や突風のような状況下で有効です。」

鈴木は真奈美の質問に感心しつつ、「便利になるのはいいですけど、逆に操作が複雑になりすぎたりしないんですか?」と加えた。

永井は微笑みながら答えた。「その点も考慮しています。直感的なインターフェースを採用していますので、慣れれば今まで以上に効率的に使えるはずです。」


________________________________________

午後の演習では、実際に新システムを操作し、緊急事態を想定したシナリオを体験することになった。最初のシナリオは通常の離着陸業務、次に機材トラブルや悪天候が絡むケースだった。

片山と真奈美、そして鈴木が管制塔シミュレーターに入り、レーダー室では三津谷が指揮を執り、内田と篠田がそれぞれの役割を果たしていた。

最初の演習では滑走路の使用スケジュールが逼迫する状況を再現。片山が迅速な指示を出し、真奈美がタイムリーに状況を報告する。

「滑走路34Rは離陸可能な状態です。他の機体のタクシーウェイ進入を調整します」と真奈美。

「了解。デルタ745便を34Rに誘導、ユナイテッド120便を一時ホールド」と片山。

演習は順調に進んでいたが、次のシナリオでは突風による着陸中止が発生。三津谷がレーダーから情報を送る。

「突風によりANA104便がゴーアラウンドします。」

片山は冷静に対応し、真奈美と鈴木が周囲の状況をチェックする。内田と篠田も迅速にバックアップ。

「さすがですね、片山さん。」と鈴木がつぶやくと、片山は「一人じゃ無理だ。チーム全員の力が必要だぞ。」と返した。


________________________________________


研修終了後、全員が施設の休憩室に集まり、振り返りを行った。

「新システムは慣れるまでは大変かもしれないが、確かに効率的だ。特に緊急時の対応がスムーズになる」と片山が感想を述べる。

真奈美も「私たちの仕事がますます重要になると感じました。これを活用してより良い運航を支えたいです」と意欲を見せた。

三津谷は「まあ、正直まだ慣れない部分も多いですが、実践してやっていくしかないですね」と笑った。

佐藤は満足げにうなずき、「みんな、これからもチームとして協力しながら頑張ってくれ」と締めくくった。

研修を終えた片山たちは、それぞれの役割の重要性を改めて実感しながら、これからの業務に向けて決意を新たにした。

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