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うちの猫は液体です  作者: 秋葉夕雲
第二章
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第24話 夢中

 戦端が開かれてまずきらめいたのは爪牙ではなく舌鋒だった。

「「「『ベット!』」」」

 オーナーである三人の声が完全に一致する。

 ギフテッドのスキルを使用するためのアクションだが、実のところ現在さつまはギフトが使えないため、葵はアクションを行っても意味がない。つまりこれはブラフだった。

 五月の前に一枚のカードが。

 真子の前には二枚のカードが出現する。

 真子は葵ではなく五月にアクションを行ったらしい。ちなみに一度に行えるアクションは一つだけだ。

 五月のカードは葵も以前見た滝をあしらった模様。真子のカードの柄は植物の南天だった。

「『コール!』」

 五月が叫ぶ。

 それと同時にアポロは狭い室内を走り出す。

 アポロが攻撃するよりも先に真子が叫んだ。

「『レイズ!』 『コール!』」

 そして同時に机の上に置いてあったカップを五月に向かって投げてくる。

「!」

 この世界では誰も傷つかないが反射的に五月は腕で自分の顔を庇う。カップが割れて、中の液体が飛び散る。

 それを見てから鞄をひっつかんだ真子とククニはベランダに飛び出す。

「積極的なんだが消極的なんだがわかんないわね。コールだから……こっちにも情報は開示されるはず」

 ベットで相手に自分のギフトの情報を開示する代わりにスキルを使えるようにするが、コールは開示される情報と同じ情報が相手にも開示される。

「関係する動物……って蛇じゃない! わかってるわよそんなこと!」

 開示される情報は基本的にランダムなので意味のない情報があかされることもある。

「五月。あんたはどう? レイズって確かこっちのベットが無効になる代わりに二つ情報が手に入る奴……五月?」

 五月は目を開いているがどこでもない空中を見つめている。

「五月様!? いかがいたしましたワン!?」

 アポロも心配そうに駆け寄ってくる。

「ちょ、五月!? あ、そうか、水!」

 この世界で水に触れると誰かの過去を見せられる。その法則はまだ生きているらしい。

 ばしばしと肩を叩く。

「……あれ、私……」

 すると五月は正気に戻りあたりをきょろきょろ探るが、すぐに失態に気づいた。

「やられました。過去を見せられている間にギフトの情報の開示が終わっています」

「ち、だからあれだけ積極的にアクションしたのね。ラプラス!」

 たまらず葵は審判を呼び出した。

『うけけけ。どうした?』

「あいつオーナーに攻撃したわよ? オーナーに攻撃したらペナルティがあるんじゃなかったっけ」

『知らねえなあ? 傷もついてねえし、この世界の法則として水に触れると過去が映されるのは攻撃じゃねえからな』

「なるほどね。五月」

「ええ。あの子、意外に戦いなれています」

 真子はおどおどした様子だったが人は見かけによらない。かなり戦術を練っている。

「今のアクションの状況だと……さつまがスキルを一つ使える状態」

「そして相手がスキルを三つ使える状態ですね」

「……まずくない?」

「かなり」

 スキルは多種多様にわたるが、思いもよらない効果を発揮するものも多い。

 現在の状況は敵が三丁銃を持っているのに対してこちらは弾丸の無い銃を一つ持っているようなものだ。

 少し強く下唇をかむ。

「『ヴェリタス』」

 アパートのどこかの部屋から声が響く。

「相手のスキル。効果は……ん、これ」

 五月の頬を軽くつねる。

「皆本さん? 何を……いえ、痛みがありますね」

「痛むってことは傷もつくかもしれない。夢の中でも他人を傷つけられるようにできるスキルかしら」

「でしょうね。さすがに自分にも効果があるでしょう」

 もしも一方的に敵だけを傷つけられるスキルならいくらなんでも強すぎる。ここからがお互いにとって本番だということだ。

「これならさつまもギフトが使えるし、アポロちゃんもギフトが正常に機能する。上等よ」

『ひひひ。勇んでるてめえに朗報だ。レベルが上がったぜ?』

「ここで? じゃあ新しいスキルが使えるのよね?」

『ああ。ま、その暇があればだけどな』

「『ナティビタス』」

 敵の新しいスキルが使われ、隣の部屋からずしんと重い音が聞こえた。

「上等。ぶっ飛ばしてやるわよ」

「私もです。もう不覚はとりません」

 さつまとアポロも短く吠えて戦意を整えた様子だった。


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