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うちの猫は液体です  作者: 秋葉夕雲
第二章
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第16話 おばさん

 何故か葵の自宅に自転車がなかったため、路上駐車してあった自転車を拝借し、五月は道をかっとばす。歩行者や車がいないので交通ルールなどは一切気にする必要がない。

 当然ながらアポロはごく普通に走っているだけだったが、自転車の五月に全く遅れる気配がなかった。

 さすがの健脚である。

(……犬脚、なんて思いついてしまったのは心の中にしまっておきましょう)

 今日の昼にも同じようなことがあったが、ここが夢の世界であるからか、それとも気分が落ち着かないせいなのか、自転車で駆け抜ける爽快感はない。

 やがて二人が出会った公園にたどり着いた。普段なら夜中でもない限りほどよい人気があるはずなのだが、今は人どころか鳥や虫の鳴き声さえないため廃墟のような寂しさがある。

 公園の奥まで走り抜け、以前葵と戦った池まで直行する。池のほとりは誰も見当たらない。

「皆本さん! いらっしゃいますか!?」

 密かに緊張しながら叫ぶ。

 同時にアポロが遠吠えをして自分の位置を知らせる。

「でかい声出さなくても聞こえてるわよ。五月」

 ざり、と砂を咬む音と共に葵が姿を現した。

 ハーネスをつけたさつまのリードをしっかりと保持する姿を見てほっとしたことを五月は自覚した。

「ねえ、あんた今までどこにいたの?」

「あなたの家ですが……そちらは?」

「わたしもわたしんちよ。……お互いに見えてなかったってことかしら」

「そうでしょうね。ひとまずこの夢の世界から脱出する方法を探しましょうか」

「っつっても、ギフテッドかオーナーを探すべきなんでしょうけど……手がかりないのよね」

「え? 皆本さんも喉の奥の違和感の正体に気づいたんじゃないんですか?」

「ん? 何それ?」

「ワウン? もしやお互いにラプラスから情報を取得したものが違うのですワン?」

「そういうことですか。ではまず情報交換ですね」

 そしてお互いに気づいたことを話し始めた。




「なるほど。私がギフテッドを特定」

「で、わたしが神話を特定……はできてないけど絞り込むことはできた。いつもの手順ね」

「あと、夢川さんがオーナーの可能性も少し低くなりましたね」

「佳穂の家はわりと近所だしこの公園に来たことはあるはずよ。ま、正直ほっとしたわ」

 もちろんこの池に来たことがない可能性もあるのでゼロではないが、誰だって友人を疑うのは気が滅入るものである。

「そうなると……ラプラス。何か追加の情報はありますか?」

 五月は自分のスマホを取り出し、みょうちきりんな顔の自称悪魔を呼び出した。

『ああ、あるぜ。このギフテッドのオーナーは緑の会に関係している』

「緑の会……? どこかで聞いたことがあるような……」

「え!? それってあのやたら無礼で口やかましいばば、ごほん、おばさんがいるところじゃない!」


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