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うちの猫は液体です  作者: 秋葉夕雲
第一章
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第7話 オールイン

 逃げる葵とさつまを追う五月とアポロは二人が木々のおい茂る森に入るのを目撃した。

「アポロ。不意打ちに気を付けてください」

「お任せを、ですワン!」

 彼女は自分たちが負けるとは思っていない。事実として二組の間には大きな実力差がある。一方で五月は実力差をひっくり返されて勝敗が決することがあることも知っている。

 油断はない。少なくとも本人はそのつもりだった。

 森を歩んでいるアポロは静かに警告した。

「五月様。この先に水場があります」

「まさか臭いを消すつもりでしょうか。いえ、それとも……」

「『ベット』」

 どこからともなく宣言が聞こえる。

 五月の目の前には裏面に滝の紋様が刻まれたカード。そこに書かれていた文面を読んで素早く宣言する。

「『フォールド』」

「良いのですかワン?」

「ええ。この情報は明かせません。むこうも詰め込んで勉強してきたようですが、そう甘くないことを教えてあげましょう」

 敵側の新しいスキルを迎え撃つために身構える。

「『フルーメン』」

 そう木の影から葵が宣言すると同時に森の奥の泉から大玉ころがしの玉ほどの水が持ち上がった。なぜか妙に可愛らしい肉球の形をしている。

「自分を液体にするのではなく周囲の水を操るスキルですか。そういえば土地勘は向こうにありましたね。ですが」

 アポロが自分の出番だと言わんばかりに前に出る。

 肉球の形をした水はおそらく数百キロほどの重量であり、ただの水でも十分な打撃力はあるはずだ。

 しかしそれも速さが伴えば。

 水は人が小走りする程度の速さしかなく、対処も逃亡も容易だ。

 アポロは二対になった右前足を水に叩きつける。

 奇妙なほどに規則正しい波紋が広がり、宙に浮かぶ水はぎゅっと縮まったかと思うと針でつついた風船のように破裂した。

 それが地面に落ちるよりも先に。

「『オールイン』」

 木の影から姿を現した葵がさつまを連れだって宣言した。


 敵の姿を認めたアポロは烈火のごとき勢いで一人と一匹に迫り、その牙を突き立てようとする。

 しかしそこにラプラスが割り込む。

『おおっと。魔法少女の変身中も、ロボットの合体中も、探偵の推理中も攻撃禁止だぜ? それがお約束ってやつだろ?』

 スマホから飛び出た自称悪魔はけたけたと笑いながら不可思議な力でアポロの突進を止めていた。オールインが宣言された場合、ラプラスは運営側として戦闘を一時中断させる義務を持つ。

「アポロ。下がってください」

「はい! ですワン!」

 尻尾を振りながらとてとてと異形を揺らし主の元に戻る姿はどこかユーモラスだった。

「ずいぶん強気ですね。もうアポロのギフトがわかったんですか?」

「ええ。当ててあげるわよ」

 自信満々に言い切る葵だが、五月もまた余裕を崩さない。

「わかっているんですか? 制限時間以内にオールインに成功しなければその後十分間オールインは不可能。さらにこちらにギフトの情報が開示されます」

「わかってるわよ。しっかり解き明かしてあげようじゃない」

 余裕の笑みを見せながら、しかし内心では緊張しながら葵は宣言した。


ここまで読んでいただき、まことに感謝します。

次回の投稿は4月16日の水曜日の予定です。

もしよろしければ読者の皆様もアポロのギフトを推理してください。


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