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うちの猫は液体です  作者: 秋葉夕雲
第二章
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第8話 のんびりとした昼食

 買い物を終えて葵の自宅に帰った佳穂は元気に、五月は静かながら丁寧に帰宅を告げる。

「ただいまー」

「ただいま戻りました」

 とてとてと駆けてきたのはアポロ。ひょっこりとどこかから顔を出したのはさつまだった。

「おおー、やっぱり二人とも賢いねー」

 近づくとさつまはさっと身をひるがえしたが、アポロはおすわりの姿勢のままだった。軽く手を振ってから台所に向かう。当然ながら下ごしらえをしている葵が目に入る。

「おかえり。とりあえず冷蔵庫の前に置いといて」

(ん?)

(あれ?)

 葵のどこかピリピリとした口調に何かを感じ取ったのか。

(葵ちゃん、機嫌悪い?)

(ですね。何かあったんでしょうか)

 ひそひそ声で話す二人。

 だが二人とも思い当たることは何もなかった。

「ちょっと。聞こえてないけど何言いたいかは見当つくわよ。……別にあんたたちが悪いわけじゃないから、気にしないで」

 葵の反応は不可解だったものの、藪をつついて蛇を出すのは避けたかった。

「じゃ、買って来たもの置いとくね。何かしたほうがいいことある?」

「んーとくには……あ、そうだ。アポロちゃんのブラッシング五月に教えてくれる? こいつ、びびるくらい下手だから」

「び、びびる……え、私そんなにブラッシング下手ですか?」

「犬飼ってないわたしから見てもやばすぎるわよ。アポロちゃんは我慢してるみたいだけど、換毛期なんだからちゃんとしないとだめよ。じゃ、頼むわね」

「おっけーい。じゃ、五月ちゃん、いこっか」

「え、ええ。よろしくお願いします」

 ブラッシングが下手な自覚がなかったのか、珍しくショックを受けている五月だった。




 およそ三十分にわたる佳穂のブラッシング講座を受け終わり、ややげっそりした様子の五月が姿を見せた。

 葵はソファでさつまを撫でており満面の笑みだった。さつまのおかげで機嫌は回復したらしい。

「あ、終わったの。こっちももうすぐ……」

 葵の言葉が終わる前にぴぴぴと電子音が鳴る。

「魚、焼き終わったわね。それじゃあお昼にしましょうか」

 葵はエプロンを脱ぎ。

「あ、アポロちゃんとさつまのごはんも用意してね。忠一ちゃんはさっきおやつあげたからいいわ」

 二人に単純なお願いをしてから台所に向かった。さつまとアポロは基本的に一日二食だが、休日など時間に余裕があるときは少なめの一日三食にしている。

「今思ったんですが……もしかして私たちペット扱いされてませんか?」

 五月が佳穂にぽつりとつぶやいた。

「あははは。そんなことないよ。あたしたちは絶対にさつまちゃんより立場は下だから」

 笑顔を浮かべながら親指でグッドサインを作る。

 果たしてそれは喜ぶべきところなのだろうかと首をひねっていた。


 テーブルには湯気の立つ料理の数々が並んでいた。

「いただきます」

「いただきまーす」

「はい、いただきます。あ、そっちの甘辛こんにゃくにはゴマかけたほうがいいわ。あと、酢玉ねぎとキャベツのサラダはコショウかけてもいいかも。自分で調整しなさいね」

 三人で手を合わせる。

 葵はすまし顔、五月はいつもの無表情、佳穂だけはにこにことほほ笑んでいた。


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