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うちの猫は液体です  作者: 秋葉夕雲
第二章
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第6話 お買い物

 さわやかな日差しが降り注ぐ道をよくあるネイビーの自転車で走る。

 真っ白な、しかしでかでかと猫をあしらったステッカーが貼られている自転車が前を走る。他にもバッグなどの小物には動物をあしらったアクセサリーが多く取り付けられている。やはり佳穂は根っからの動物好きなのだろう。

 まだ道に不慣れな五月に対して佳穂が先導を買って出たため、佳穂が先に行くことになった。

 あまり交通量の多くない大水市の道を進む。

 都会とも田舎とも呼べない半端な町だったがすでに五月はこの町が好きになり始めていた。

 さわやかな風と、ささやかな緑が心地よいからかもしれない。

 もっとも、日本の蒸し暑い夏になればその意見も変わるかもしれない。海外を転々としていた五月だが、日本に滞在していたこともある。湿度の高い日本の夏は非常に不快指数が高い。

 あの暑さはどうしても苦手だった。

 ただ少なくともあと二か月ほどはそれほど暑さを気にしなくていいだろう。

 しかしそれがあくまでもこの生活が続くということが前提だ。冗談のような話だが、五月と葵は命がけの戦いに参加している。

 可能性はそれほど高くないとはいえ命を落とすことはあり得るし、敗退すれば記憶を失う。そうなったとき、この生活が続く保証はない。

 何故か、風切り音が物寂しい気がした。




 駅からはやや離れた場所にあるが、自宅からは一番近いスーパー。街路樹の隣に備え付けられたベンチに親子が座って何かを飲んでいた。

「はい、とーちゃくー。あ、そういえばここのポイントカードって持ってる?」

「皆本さんから預かってます」

「さすが葵ちゃん。抜け目ないねー」

 そうして二人はスーパーに入ろうとして、チラシを配っている女性に声をかけられた。よく見ると女性の後ろには華奢な少女が控えていた。

「すみません、お時間よろしいですか? わたくし、緑の会のものです。ご存じですよね?」

「いえ、今から買い物ですので」

 女性は笑顔だったがうすら寒いものを感じた五月はさっさと離れようとした。

「本当に、お時間はいただきません」

 するりと進行方向に回り込まれ、進路を塞がれる。

 そんなことをされて話を聞きたがる人間はごく少数であり、五月は少数には当てはまらなかった。

「すみませんが失礼します」

 無視しようとするがなおも女性は食い下がる。さすがに不快だが、かといって乱暴を働くわけにもいかない。何とかここを離れる口実を探していると。

 けたたましいアラーム音が鳴った。

「あ、電話じゃない? 早くでないと!」

 そう言ったのは佳穂だった。

 やや大げさな声と動作をしてから五月の手を取り、そのまますたすたと歩きだし、五月もそれに逆らわない。

 その間にもスマホはなり続けており、ついに女性は止めるタイミングを見失ってしまった。


 出入り口から死角になる場所まで離れたところで佳穂は手を放した。

「ふう。ああいうのはもう完全に無視しちゃった方がいいよ」

「そうですね。参考になりました。それとありがとうございます。あのアラームは夢川さんのものですよね」

「うん。タイマーセットしてすぐに鳴るようにしたんだ。思いつきだったけどなんとかなってよかったよー」

 しげしげとにこにこ笑う佳穂の顔を見る。

 意外な機転の良さに五月は驚きを感じていた。


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