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うちの猫は液体です  作者: 秋葉夕雲
第一章
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第51話 水と地

「さつまのギフトは吸血鬼……ですか?」

 葵は会心の笑みを。ラプラスは驚愕の表情を浮かべた。

『おいこら! なんでわかったんだよ!?』

「最初の今朝あって今ないもの。これは太陽です。今朝は晴れていましたが今は雨ですから。そしてさっきの言葉。頭を使えって何度も言いましたよね。あれは文頭をつなげろということ。じ、ゆ、う、じ。つまり十字です」

 葵としてもこんな小学生みたいな言葉遊びはしたくなかったが、これしか思いつかなかったのだ。

「そして太陽と十字。これに関連してなおかつ極めて有名な魔物や神。まあそりゃわかるわよね」

「しかし一体いつから気づいていたのですか?」

「さつまがギフトをもらってから何日かさつまのことを調べてた。でも写真に写らなかったのよ」

「ギフテッドなら写真を撮れないこともあるはずですが……いえ、普段から?」

「そ。家にいるべきさつまなのにさつまは写真に残せなかった。これってちょっとおかしいわよね。しかもここに来る途中確かめたんだけど電車の窓にさつまは映らなかった」

「なるほど。吸血鬼は鏡に映らないと言われているんでしたか。おそらく吸血鬼のギフトを得たことによる副作用ですね。鏡だけでなく何かに映ることがなくなっているのかもしれません。ですが疑問があります。ギフトが吸血鬼ならなぜ太陽の影響を受けないのですか? 少なくともギフトの使用中は悪影響があってしかるべきです」

 五月はなにも意地悪でこんな質問をしているわけではない。万が一オールインが不発に終わるとさつまを救う機会を逃してしまうことを心配してのことだ。

 それに対して葵はなんともやるせない表情を浮かべた。

「それ、勘違いされがちなんだけど……少なくとも世界で一番有名な吸血鬼小説の吸血鬼は太陽を浴びても平気なのよ。主に夜に行動するのは確かなんだけどね」

「そう……なんですか?」

 もしも五月に表情があれば驚愕した顔が見られたことだろう。無論、葵以外は。

「吸血鬼の元祖はギリシャ神話にまでさかのぼるとされているけど、近代的なイメージの吸血鬼が誕生したのは十九世紀の作家たちによるもの。そこからさらに二十世紀になって映画などの民衆娯楽によってイメージが固まっていく。その過程で弱点が大量に盛られたらしいわ。だからもともと十字架や太陽は致命的な弱点じゃないのよ」

「ギフトが複数のルーツを持つ場合、どのような伝承や神話が採用されるかは運営側のさじ加減らしいですからね」

 無表情ながらもじろりとラプラスを睨みつける五月。

 オーナーたちの間では人の神経を逆なでする発言の多いラプラスは非常に嫌われている。

 もちろん当のラプラスは何一つとして痛痒を感じていないのだが、それがまたより一層不満を募らせるのだ。

「そして猫とどう関係するか。葬儀の際に猫や犬が横切ったら吸血鬼になると言われてるわ。そして霧になったりするともね」

「霧は水。だから液体化ですか。納得しました。では……」

「そうね。行きましょう」

 武器はそろった。

 あとは……進むだけだ。

「では……『オールイン』。さつま。あなたのギフトは、吸血鬼です」

 雨を切り裂くように鈍色に光る鎌が突然出現する。

 さっと振るわれたその軌跡すら追えず、水の像は一刀両断された。


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