表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うちの猫は液体です  作者: 秋葉夕雲
第一章
28/190

第27話 暗闘

「アポロ! 皆本さんを台所まで!」

「ワン!」

 アポロは蜂を蹴散らしながら葵の襟をくわえ家の中を引きずる。それを追う形で五月も台所に向かう。

「きゃああああ!!」

「ひ、ひいいいい!!」

 香山と黒井は叫び声を上げながら外に向かって逃げ出す。助けている余裕はないと五月は判断した。

「台所に向かって、どうするつもりよ……」

 先ほどよりも消耗が濃くなってきた葵は声がまた弱弱しくなってきていた。

「広いところにいるとどこから襲われるかわかりません。籠城したほうが賢明です。一応防護策も用意していますから。その間に……」

「ギフトを突き止めろってことよね」

「はい。その間、私とさつまで敵を防ぎます。私はそれほど神話に詳しくないのでギフトの特定は苦手です。でも、あなたなら」

 葵は引きずられながら頷いた。

 そして台所につくと真っ先に五月はやかんを掴んだ。ちゃぷんと揺れたそれには何かの液体が入っているのだろうが、熱くはなさそうだった。

 すぐさま蜂の群れも追ってくる。

 一糸乱れぬ統率で部屋の中を埋め尽くす。

 黄色と茶色のカーテンのようだった。

 その中に一匹、なぜか赤く光る蜂がいた。

「五月。あれ……」

「ええ。なぜか光っています。なるほどこれがボーナスということですか」

 犯人をただ当てるのではなく、きちんとその理由まで説明したご褒美。数ある蜂の中にあるリーダーを特定できる効果があるようだ。

『あら。わたくしの姿が注目されているようですわね』

 頭の中に直接声が響く。これが女王蜂の会話方法らしかった。

 そういうイメージなのか、上品な声として聞こえていた。

「あのような品性下劣な男と付き合うのも大変ですね」

『なんとでもおっしゃい。わたくしはあの方のために戦うのみですわ』

「そうですか。なら、お互いに譲れないようですね」

 ちりりと火花が散る。

 すりガラスから透ける日光がちらつく室内で暗い死闘が始まった。


 五月はまず手に掴んだやかんをミツバチの群れに向かって放り投げた。

 空中に投げ出されたそれから液体がまき散らされ、それと同時にさわやかな香りが広がる。

「これ……ハーブ? ああ、確か蜂はミントの香りが苦手だとか……」

「ええ。こういう時に備えてさっき準備しておきました」

「いや、殺虫剤使いなさいよ……」

「そういう化学兵器を使うとラプラスに止められるので」

「原始的な兵器だと文句言われないってことね」

 その効果は決して無視できるものではなかったらしく、先ほどまで一糸乱れぬ統率で編隊を組んでいたミツバチたちは戸惑うように飛び回り始めた。

『静まりなさい! 敵は目の前にいますのよ!』

 しかし女王蜂のグレイスの一喝によって慌ただしさは収まり、再び秩序が取り戻される。

 だがそんな隙を見逃すはずもない。

 アポロが女王蜂に向かって多足を振りかぶる。

 しかし女王蜂は舞うようにひらりと躱し、反撃とばかりにミツバチたちがアポロに襲い掛かる。

 アポロは水を吹き飛ばすようにぶるぶると体を震わせると群がるミツバチを弾き飛ばした。

「アポロ! 絶対に刺されてはいけません! 毒はもちろん、体温の上昇はあなたのギフトでは治せません!」

「はいですワン!」

 今度はその体を突進させ、古民家の壁にずしんと衝撃を轟かせ、ひびを入れる。しかしグレイスは狭い室内でも機敏な動きを見せて的を絞らせないが、ミツバチの数は順調に減っている。

 もちろんミツバチの数は膨大で、まさに焼け石に水かもしれないが……無限ではない。消耗戦になる兆しを見せたその時。

「『ベット』」

 松本の宣言が響いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ