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うちの猫は液体です  作者: 秋葉夕雲
第一章
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第19話 気づかれざる攻撃

「それであっさりのせられたということですか」

「悪かったわね。猫と一緒に一人暮らしをしてると半額とかセールとかそういう言葉に弱くなるのよ」

「別に構いませんよ。私も何か飲んでおきたかったところですし」

 私が飲んでいるのは柚子蜂蜜ティー。五月は地元産のハーブティーらしい。まだ寒いというのにアイスだ。

 カフェといっても少し大きめの家に椅子などを配置しただけで、あまり外食という感じはしない。

 もちろんそれが居心地は良いとも言えるし、杉の香りがするカフェというのも乙なものだ。

 店主らしき男性が一人で運営しているが、そもそも大人数の客を想定しておらず、飲み物だけを提供するという形らしい。

 縁側に二席。店内に二席。なんともこじんまりしていてほのぼのする。ちなみに私たちは縁側に座っていた。

「ねえ。こういう場合だとギフテッドはどう映るの?」

 先ほどとは違い、アポロちゃんは近くの柱にしっかりとリードを繋がれており、さつまも同じようにして、お店の人に貸してもらったペット用のお皿で水を飲んでいる。

「状況次第ですね。ペット入店禁止ではない店など、立ち入ってもおかしくない場所のギフテッドは認識されるようです」

 ふうん、と店先を眺める。新しく一人の女性が店に入ってきた。

 そこで。

「……ねえ。なんか暑くない?」

 妙に体が熱いことに気づいた。

「いえ、まだ春ですし、暖房のきいた屋内ならともかく……皆本さん? 顔が赤くありませんか?」

「え? ああ、そう……ね。あ、れ?」

 立ち上がろうとして、椅子から転げ落ちる。体に上手く力が入らない。汗がだらだらと噴き出ている。まるでお風呂にずっと入っていたみたいにのぼせている。

「これ、もしかして……」

「ええ。もう攻撃されています。一度離れましょう。ほとんどのギフトは距離を取ると効果が減衰します」

 ふと、さつまが水を操った時を思い出した。さつまから離れれば離れるほど遅くなった気がする。五月は手早くリードをほどき、さつまをキャリーバッグから出そうとする。

 代金は前払いのため、すぐに店を出ても問題ない。しかし。

『ベット』

 どこからともなく声が響いた。

 白黒の貝の紋様のカードが宙に浮かぶ。

 オーナーが何らかのアクションを行った時に現れるこのカードの模様は本人にとって大事なものを表すことが多いらしい。

 この白と黒の貝はきっと……アワビが生きていたころに使っていたお皿だろう。そんな郷愁を振り払い、カードの文字をぐらつく頭で凝視する。

 弱点。

 そう書かれていた。

「……『フォールド』」

 これは誰にも明かせない。私の予想が正しければさつまのギフトは……。

 そして相手の弱点が明かされた。

 炎。

(範囲多すぎて絞れないわよ!)

 心の中で臍をかむ。火で死んだ神や魔物はいくらでもいる。これは向こうにとって有利なアクションだったらしい。

「皆本さん。よかったんですか?」

「レイズしても今影響を受けてるギフトそのものがなくなるわけじゃないんでしょ? だったら明かすわけにはいかないわよ」

『インペディメンタム』

 どこかから声が聞こえた。

 相手のスキルが発動したようだが、何も起こらない。不気味だが、いつまでもぼさっとしているわけにもいかない。


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