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うちの猫は液体です  作者: 秋葉夕雲
第一章
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第11話 悪の組織

 話を聞き終わった私は思わず頭を抱える。

(二重の意味で神からの贈り物ってそういうこと。本当に神様なんてものが……ううん、既存の神話や宗教とは全然違う。むしろこの善の神と悪の神は人間の宗教や神話を利用しているような……いや、それはどうでもいいか)

 思考を打ち切ってこれからどうするかを考える。

 悪の神とやらのいい加減さもそうだが、どうやら勝手にそちら側の陣営に組み込まれた点がやりきれない。

「念のために確認するけど私は悪の神とやらの陣営なのよね」

「でしょうね。悪の神のやることは適当ですから。そもそも善側なら一度戦いに参加するかどうか確認があるらしいです」

 らしい、そう語ったということは。

「あんたも悪側なの?」

「はい。特害対はほぼ全員が悪側の組織です」

「……リアルに悪の秘密組織に加入することになるとは思わなかったわ」

「……言われてみればそうですね」

 二人そろってため息をつく。

 子供のころに魔法少女を応援したことはあるけれど、逆の立場になるとは思わなかった。あの頃の自分が今の話を聞けば何を思うだろうか。……殴られそう。

「そうなるとこれがマスコット枠になるの……?」

 目を向けたのはスマホに映る怪生物。

「……最近の流行りはマスコットが黒幕だそうですよ」

「それだと嬉しいわ。こいつ一回殴りたいし」

「それには同感です」

『お前ら俺にもうちょっと敬意を持ってもいいんじゃねえか?』

 無理に決まっているだろう。二人の視線はそう雄弁に語っていた。

「まあ大体わかったわ。その善の神の陣営を壊滅させるために力を貸せってこと?」

「いいえ。すでに善側は一部の生き残りを除いて壊滅しています」

「なんでよ」

競争でスタートと同時にゴールした気分だ。

「善側ってそんなに弱いの?」

「まさか。きちんと選ばれたギフトを持ったギフテッドとオーナーです。圧倒的に向こうが強いですよ。話によると悪側三組と善側一組で互角だったとか」

「じゃあ、統率がとれてなかったとか?」

「それも違います。この戦いを生き残れば神々が褒美を与えると言われていますが、悪側は最後に残った一組だけに対して、善側は悪側を全滅させればそれだけで褒美を与えると言われています」

 つまり目の前のこいつ含め特害対の全員とも最終的に戦うことになるらしい。そんな状況では連携も何もあったものじゃない。

 個人でも、組織力でも勝っているはずの相手が壊滅した理由。歴史を紐解いて考えるのならば。

「まさかとは思うけど、内部分裂でも起こったの?」

「勘がいいですね。私はその頃オーナーではなかったので知りませんが、当時最も強かったギフテッドが離反したそうです。特害対が確認しているだけで善側は五十組ほど倒されたらしいですね」

 つまりなんだ。

 その最強のギフテッドとやらは単純計算で私の百五十倍強いということ?

「何者だったのよ……そいつ……」

「詳しくは聞いていませんがコピーのギフトだったらしいです」

「コピー? ギフトの?」

「はい。あなたはコピー能力が何故強いと思いますか?」

 明らかに試しているような口調だった。上等だ。満点を取ってやる。

「一つ質問。ギフトは神様や魔物の力をモチーフにしたもの。なら、その特徴も引き継いでるの?」

「ええ。長所や弱点も伝承通りになります」

「なら予想できるわ。ギフテッド同士の戦いは情報と相性が重要だからよね。コピーならギフトを推測するのは難しいもの。相性っていうのは……例えば北欧神話のオーディンはフェンリルに殺された。だからフェンリルのギフトを持ったオオカミには弱い。みたいな力関係があるんじゃない?」

「そうですね。その話だと、オーディンはフェンリルだけでなく、オオカミと関わるギフト全般に弱いでしょう。他にも上司と部下のような関係だと上司の方が有利になる。そういうシステムみたいですね。さらに言えばもとになった神や魔物が退治されたりした状況を再現するのも有効です」

 例えばアポロちゃんのギフトのショロトルはケツアルコアトルの従者である。ケツアルコアトルは金星を司り、羽毛ある蛇とも呼ばれる。

 金星の神のヴィーナスやイシュタル、あるいは蛇の魔物ゴルゴンなんかにも弱いかもしれない。

 それらのギフテッドにショロトルを殺害した凶器である火打石でも持たせておけば対策は万全なのだろうか。


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