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うちの猫は液体です  作者: 秋葉夕雲
第二章
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第42話 木を隠すなら

「ふうん。状況が悪くなったから裏切ったわけ?」

「そうだよ。悪いか?」

「いいえ。ただよく悪側が受け入れたわね」

「簡単だよ。俺は自分のギフトでオーナーの人数が一定以下になると敗北を認めるっていう契約を交わしているんだ」

「そういえばそんなギフトなんだっけ」

 契約のギフト。

 絶対に破れない約束を結ばせるギフト。組織に必要なのがルールであり、長に必要なのがルールを守らせることだと考えると集団行動する上ではこれ以上のギフトはないだろう。

「もともと善側は戦闘向きと補助向きのギフトに分かれてたんだ。俺はギフトの性質からトップを任された。最初は上手くいってた。が、あいつが裏切って全部ひっくり返った」

 この話題になると子供らしさが消えうせ、修羅場をくぐった戦士の表情になっていた。

「あ、あいつ?」

 そのあたりの話を全く知らない真子が疑問を述べる。

「コピーのギフテッドだよ。知らないのか?」

「お嬢さん。たしか以前戦った相手がそのようなことを言っていたはずですな」

 口をはさんだのはククニだった。

「あ、ああ。なんか、助けてあげるから、ギ、ギフテッドを倒すのをて、手伝えとか言ってきたおばさん……」

 話の内容から察するに真子は夢の中で善側のギフテッドと戦って勝ったらしい。

 少しヒヤリとする場面だったが、元同僚を倒したことを草野は咎めるつもりはないらしい。

「そもそもなんで裏切ったの?」

「いや、俺も……っていうか誰も詳しくわかんなかったけど……どうもギフトがコピーだってことを隠してたみたいなんだよな。それで揉めてオーナーが殺された」

「それに逆上したギフテッドが離反。そういう流れらしいですね」

 リアルタイムでそれを見ていた草野はかなり苦々しい表情だった。組織をまとめきれなかったことを悔いているのかもしれない。

 五月は他人事だったが、何度も聞いていたことのためよどみなく答えた。

「そういうわけだからさ。俺は裏切られたり、組織が瓦解するのを今度こそ防ぎたいって思ったわけ。例え立場が変わったとしてもな。ぶっちゃけもう、誰が勝とうがどうでもいい」

「本末転倒じゃない?」

「自分が立ち上げた組織がつぶれてく様子を見る気持ちなんてお子様にはわかんねーよ」

「あんたも子供でしょ。見た目は」

「ま、そりゃそうだ。ついたぜ」

 着いたのはよくあるオフィスビルの会議室のような場所の前だったが、そこには特別獣害対策委員長、という表札がかけてあった。

「すぐに入って扉を閉めろよ。虫が入ると面倒だから」

 そのまま草野は扉を開ける。

 それに従って葵たちも室内に入ると、むせかえるような緑の匂いに圧倒された。

 室内用の観葉植物だけではない。色とりどりの花にくわえて、庭先に植えるような高木が切りそろえられていた。

 ちょっとした植物園のようですらある。

「紹介するぜ。この中のどれかが、俺のギフテッドだ」

 どうやら草野は自分のギフテッドの正体を隠すために大量の植物を世話しているらしい。木を隠すなら森、ということか。

「草野さんのギフテッドのギフトは他人に見られている状況でないと使えないらしいのでこういう形をとっているらしいです」

「確かにこれは絞れないわね」

 草野のギフテッドが倒されたり、ギフトにオールインが成功した場合、今までの契約がどうなるのか、少なくとも葵は知らない。一時的に停止するのか、すべての契約は破棄されるのか。

 どちらにせよ、リスクを下げるためにできることはやっているらしい。

 蝉取りにきた少年のように軽やかに木々の合間を歩み、草野は椅子に腰かけた。

「じゃ、本題に入ろうか」


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