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エクストラムマン2  作者: モッズコート
怪の一 牡丹ちゃんの電話
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第七話

 しばらくして勝平が帰ってくると、勝平は隼人の前に男子生徒をべしゃりと叩き落とした。それは梅田であった。教室の中が騒然として、皆が隼人と勝平に注目する。


「それで、何がわかったの?」

「全くの出鱈目だってよ。こいつが噂の出所だよ。オリジナルの都市伝説が出来たから皆に言い触らして回ってたんだよ」

「それだけ?」


 梅田がすかさず「そうだ! なのにこの間抜けは」と言う。


「うちの勝平がそれだけで暴力的になる筈がないですよね。何かいけない事をしたのなら、場所を変えて俺達に打ち明けて頂ければ」

「こいつ、吉田(よしだ)梓の盗撮をしてたぜ」

「盗撮?」

「違う!」


 梅田が大きな声で遮った。


「それはこの男の全くの出鱈目だ! 俺が盗撮!? そんな訳なかろうが! いい加減にしろよ滝隼人!」

「そりゃまぁ、まだ相棒が勝手に言ってるだけですし……信じちゃいねェけど……もしそれが本当だとしたらかなり大変ですなあ」

「だから石田の嘘だ!」

「ええ。だからまだ信じちゃいませんよ。証拠品が出てこなきゃ。証拠品っていうのは、盗撮映像あるいは盗撮写真ですかね。データなり現物なりがないと、俺も相棒の言葉を信じてやれない」


 隼人は勝平に「根拠となる証拠品等はあるの?」と尋ねる。すると、勝平は梅田のスクールバッグを持ち出して、逆さまにした。使わない教科書や筆記用具が落ちて来る。


「それがどうした?」

「スクールバッグって底に板あるだろ」

「底板のこと? あるねぇ。ボストンバッグってだいたいあるイメージ」

「底板をバッグにはっ付けていやがったぜ~。それをちょちょいのちょいで外すと」


 茶封筒が落ちた。それを拾い上げて、隼人はすぐ傍で隼人の青いギターを弄っていた女子に渡してみる。


「どう? 朝日(あさひ)ちゃん」

「真っ黒」


 女子──佐々木(ささき)朝日はそう言って、隼人に写真のうちの一枚を見せ付ける。隼人は慌てて両目を隠した。更衣室に仕掛けられていたのだろう、服を脱いでいる吉田梓の写真があった。


「な、なんてひどいことをするんだ。梅田先輩……この行為は、吉田さんの尊厳を害う行為だ、本来なら、警察が出張る行為だ」

「それはこの男が仕組んだ物だろうがァ~!」

「それはないですよ」

「言いきれないッッ!」

「だってそいつ、学校にいる間や休日は常に俺の横にいて便所にすらついて来る始末ですよ。授業が終わればすぐに俺のところに来ますし。部活はこいつが俺の腕を引いて連れてくし。それなのに、どうやって更衣室にカメラを仕掛けられるんですか」


 そこに教師がやって来る。


「その話は本当か梅田ァッ!」


 生活指導の村山が怒りながら歩いている!


「違いますよ村山先生! こいつら俺を陥れ様として」

「滝がそんなことするか……? 嘘つくなガキッ!」


 贔屓はダメだろ、と勝平は思った。


「そうだよ、そいつができなくともそいつが誰かに頼めば言いだろうが!! ウンコしてる間は流石に離れるだろ」

「…………まぁ……普通はそう思いますよね」

「離れるよな……? 村山先生、石田やばいっすよ!」

「クソボケ隼人! 含みを持たせるなよ! 離れるわ!」


 誰がこんなクソバカのうんこ見たいんだ、と勝平は言う。


「じゃあ可能じゃないか!」

「俺こいつ以外に友達いねェし」

「友達じゃなくとも可能だろうがクソボケッ!! 脳みそにチンカス詰まってんのかテメェッ!」

「落ち着いてください、梅田先輩」

「黙れ滝!」


 梅田はいきなり立って、隼人の顔面に拳を入れた。

 村山先生が怒り、梅田の首根っこを掴む。

 しかし、常軌を逸した怪力で、村山ははじき飛ばされた。壁に当たるというところで、勝平が片腕でそれを受け止める。


「クソ! クソ! ここで息の根止めてやるぜファック!」


 隼人は殴られながら、びくともせず、梅田を睨みつけた。すると、梅田は恐怖をおぼえて、びくっと跳ねた。


「本当にやっていないならそれを証明すればいい話ですよ。梅田先輩。俺はこんな話をするためにあなたと話してる訳じゃないんだ」

「クソ、クソ、ほら見ろ、滝隼人は化け物だ!」

「睨まれてビビっただけじゃねぇかよ」

「滝隼人ォ! お前のせいで俺の人生は鈍色さ! それに加えて犯罪者に仕立て上げるつもりか!」

「仕立て上げてはいませんよ。先生と話してみてはどうですか。認めるも認めないもあなた次第なんだから」

「ここで殺す!」


 梅田は筆箱からハサミを取り出して、隼人に向けた。


「怒りますよ」


 隼人の声は低くなる。声変わりですっかり低くなりきった男の声を、いつもは柔らかくしていたが、怒りが来ては、さすがに気を使う余裕がなくなる。


「俺も二発ほど殴り返したいし……」


 隼人は袖をまくる。すると、洗練された筋肉質の腕が現れて、梅田は更に震え上がった。


「勝平、取り押さえろ」

「へいへい」


 勝平は仕方がないなあ、と言うふうに梅田の首に腕を回して、腰のところを蹴り、跪かせた。


「あんまり舐めとると痛い目見るで、梅田ちゃん」

「本当は嫌だけどなあ、隼人の頼みとあればなあ、目をつむってくれる奴も大勢いるしなあ」

「逃がすなや、勝平」

「任せろよ。俺だぜ」

「やめろ」

「人に刃物を向けておいて」

「やめてくれ」


 隼人が拳を握ると、血管が浮かび上がり、拳からコキコキと音がなる。それがまた恐怖を煽った。


「本当の事を怒らずに正直に言うてくれるか」

「い、言う! 言うから、やめてくれ……!」


 梅田は耐え切れずに全て認めた。

 本当に自分がやったことなのだ、と。


 梅田が村山先生に連れていかれると、隼人は泣き出した。


「はちゃめちゃに怖かった~」

「関西弁みたいなのなに」

「なんで止めてくれなかったのさ! 本当に殴らなきゃ済まされない感じになりそうで本当に怖かったんだけど!」

「始めたのはてめぇじゃねェかよ」


 隼人はひいひい言いながら、梅田の荷物をまとめはじめた。「全部演技か」と気づく頃には、「滝の声って本当はめちゃくちゃ低かったんだな」という話題に移った。

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