第五十二話
勝平も絢も、思わず影の中から飛び出したエクストラムマン第フ号──怪異人間シングスの連絡を受けてやってきた頃には、隼人の行動に言葉を発する事が出来ないでいた。
隼人はティユルシのなきがらを解剖していた。構造を全て記憶して、忘れないように深層心理に刻み付けた。
そしてまた元に戻すと、それを眺めて、二時間ほど固まった。
シングスが堪え切れずに、隼人に声をかけた。
「なにしてんですか」
「理解できなかったのなら、申し訳ない。命を踏みにじった訳じゃない」
隼人は血涙を拭きながら、三人の方を向き直る。
「ティユルシの記憶を呼んだ。存在が消えかかっていて死ぬ直前──一時間前からの記憶しか読めなかったが、そこでティユルシは俺に『君が思うやるべき事をしろ』と言っていた。だからやるべき事をした」
「それ……いや……解剖ではなくない!?」
シングスが叫ぶ。
「解剖したのは構造を機械に置き換えられるかを知って起きたかったからだ。説明の一つでもしておくべきだった」
「機械って……!? ハァ!?」
隼人は腕時計の様な機械を取り出した。
「中一の頃からちょくちょく弄ってた奴だ!」
勝平が叫んだ。
「本当は渡り鳥号の様なワープマシンを作るつもりだったが、この際だからこれを改造する。能力を発生させる器官があった。これを少し弄れば変身装置にすることができる」
「でももう少し間を置けよ……弔えや!」
「首領が自ら手を出してきたんだ。俺の方に向かうのも時間の問題だ。恐らく俺の能力がなくなったタイミングで狙って来るはずだ。事実、俺の守術痕は薄まって来た。だからいち早く戦力の再調整をするべきだ」
絢は違和感をおぼえた。
「お前、なんか変だぞ」
「俺の悪いところだよ。怒りすぎて脳みそが壊れたらしい。ある程度のエミュレーションは努めているつもりだ。妥協してくれ」
「わかった……」
声はずっと低いままだぞ、という言葉は飲み込んだ。
「決着をつけなければならないんだ」
怒ってる。