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エクストラムマン2  作者: モッズコート
怪の四 進化する男
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第四十五話

杉真理のCatch Your Wayだいすき!

 その日は朝から雨だった。

 それが隼人の心境を表しているみたいで気分は落ちていた。

 縁側に座って、ギターを弾きながら空を見上げる。

 寒い風は隼人の頬に紅をぽたん、と落とした。


「どうかしましたか」


 ユリが隼人の隣に腰をおろした。

 手にはホットのブラック珈琲があった。

 それを受け取って、少し啜る。

 思っていたより熱くて、舌がじんじんとした。


「なんでもないさ。ただ、ほんの少しだけセンチメンタルになってただけ」

「相談なら乗りますよ。姉なので」


 隼人とユリは姉弟である。血の繋がりはない。

 去年の夏頃に、なんやかんやあって家族になった。

(詳しくは「エクストラムマン」内の「怪の二 ラーメン屋の一家心中」の「第十五話」あたりから読むと何と無くわかります!)


「姉だから」

「はい」

「じゃあ相談しちゃおうかな」


 ギターをわきに置いて、隼人は手元の青いマグカップを見つめた。


「俺ね、時々思うんですよ。『自分の行いは正しかったのかな』って。正しいと信じたいけれど、何せ俺は子供だ。人生経験なんて積んでいないから、精神なんて大人から見れば未熟で、恋愛なんてのもまともに出来なくて、相手が俺に合わせてくれるくらいなんだ。そんなに未熟なのに、どうしても俺には選ばなくちゃいけない時が来てしまう。宮城を裏地球から護る守護者だから。……でも、周りの守護者を見てみると、みんなそれなりに苦労を経験している人間だ。北海道の守護者なんてゼネコンを一代で大きくしたやり手の経営者だった。でも俺は、子供だ。髪の毛が決まらないと気分を落とすし、SNSで人気になれないと悶々とするし、好きな人が他の人と話してると少しモヤモヤするし。悪い意味で子供なんだ。だから、もしこれまで俺がしてきた選択が往々にして不正解だったら、大間違いだったら、どうして自分がいるのかわからない」


 隼人の悩みは大いに思春期で、ユリは「化けタヌキに難しい話をする人だなあ」と苦笑いした。


「悩みの解決に至るかはわかりませんが、思ったことを言いますね」

「うん」


 ユリは桃色のマグカップに視線を落として。


「深く考えすぎ、なんです。隼人さんは。良くも悪くも。隼人さんは頭が良いから、それを見たときにパッと物の有益な部分を見付けることが出来る。それにつられて、物事を決めてしまう。でも、隼人さんはそれだけじゃない事も私は知ってますよ。貴方は、本能のまま動ける人でもある。私を助けてくれた時なんてまさにそれ!」


 ユリは笑う。

 風につられて、雨粒が二人の服にぽつんとついた。


「貴方が何を選んでも、私は貴方が悲しそうな顔をしている限り、いつでも笑顔で貴方に『おかえり』って言いますよ。私だけじゃなくて、みんなです。みんな『隼人』っていう人が選んだ未来が大好きですから。なら、貴方が選んだ選択に、間違いなんて一つもないんじゃないですか」

「でも、他の未来の空は、もっと明るかったのかも知れない」

「だからなんですか。明るい空は雲の肩身が狭いですよ」

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