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エクストラムマン2  作者: モッズコート
怪の四 進化する男
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第四十四話

 顔面に拳を受ける。よろめいた所で頭の突起を掴まれ引き戻されてまた顔面に拳を受ける。

 地面に膝を着くと、背中を思い切り踏まれる。

 息が出来なくて悶えていると、首を蹴られる。

 なんとか立て直そうと後退りをすれば脚に稲妻が突き刺さる。

 逃げられない。恐怖で腕脚が震える。

 頭を捕まれて後頭部を無理矢理地面に叩きつけられる。

 全身がジインと響いて、痙攣が始まる。

 立ち上がらせて、顔面を横から薙ぐ様に拳を叩きつける。

 倒れそうになった所を肩を掴んで無理矢理立たせる。

 みぞおちに蹴りを入れる。

 もうすぐで死ぬ。死にたくない!

 ビリビショップの目からボロボロと涙が溢れる。

 呼吸が苦しいのに、幹部特性の再生能力が働く。

 再生すれば、再生した先から壊されていく。

 最初から壊すための暴力だ。

 ああダメだ。やられればやられるほど気付いていく。

 滝隼人は怒りのままに拳を握っている。

 ハナから楽に死なせるつもりはない。

 それが出来る領域に存在している。

 逃げたい。身体が、身体に宿った本能が、逃げ出そうとしている。逃げ出せばその時点で蹴飛ばされる。

 逃げなければその時点で蹴飛ばされる。

 小さく丸まって難を逃れようとする。

 腕の方から腋の方に隼人の腕が通ってきた。

 その腕がグンと引かれると、防御の型が崩れる。

 起き上がりたくなくて意地を張っていると、そこに蹴りが入って膝が浮く。

 その隙を突かれて、起き上がらせられた。

 後頭部に手を添えられて、顔面を何度も殴られる。


「待って、待って……待って! 待って、助けて。ごめんなさい、ごめんなさい。待って、お願いだから助けて。もうこんな事二度としません。巣窟からも脱するから、どうか命を見逃して。このままだったら死んでしまう。死にたくない、死にたくないよ。死にたくない。助けて、嫌だ、嫌だ」


 隼人はビリビショップの肩を外すと、喉に拳を叩き入れた。

 殴り抜く勢いだった。呼吸困難に陥って、喋れなくなった。

 再生能力が働くと、腕を決められながら背負い投げ。

 腕がボキと折れて、激痛が走る。

 腹部の強化皮膚の装甲が剥がされて、隼人の手が侵入して来る。肉を裂いて筋肉を別けて、隼人の手が臓物を掴んだ。


「アアアアア! アアアアア!」


 首を掴まれ、ギリギリと握り絞められる。

 叫ぶ事すら許されていない。

 隼人に睨みつけられ、ビリビショップは恐怖した。

 絶対に勝ち目なんかない。勝てる訳が無かった。

 強いだけの怪異人間なんか作り出して。

 強いだけで意気がって人を殺して。

 ただそこだけが間違っていたのかと言われれば、恐らく隼人から言わせてみれば違うのだ。

 わかっている。隼人が言いたい事の一つや二つ。

 生まれてきた事、それ自体が大間違い。


 突如、隼人はビリビショップから手を離した。


「ハア、ハア……」


 許された、と思えば、即座に本能が「違う!」と叫んだ。

 ただ、観察されているだけだ。


「滝、隼人」


 名を呼んで、命乞いに方向をチェンジした。全力で生き延びてやる。生きていればいつか、もっと強くもっと賢い誰かに意志を託せる。


「助けてください。本当に、本当に反省しています。だからどうか助けてください。お願いだから、死にたくないんだ。本当に頼みます。いつか絶対、いつか絶対、人のために生きると誓います。だから助けて。私には妻と娘がいます。だから、助けてください。お願いです。私が殺されれば、妻も、娘も、首領の慰み物にされてしまう。そんなの堪えられない。あいつらに苦痛を強いたくない。だから助けてください。お願いだから、絶対に、あなたに損はさせない。嫌だ、死にたくない。死にたくないよ、滝隼人、お願いだから……」


 まくし立てて、必死さをアピールする。

 すると、ビリビショップの肩に、隼人がポンと手を置いた。


「滝隼人……!」

「で?」


 あ、ダメだ。


 赦すつもりなんて毛頭ない。


 怪異は──おそらく、幹部怪異は絶対に殺す、という意志を持っている。生っ粋の怪異差別者だ。

 滝隼人は、生っ粋の人類の守護者なんだ。


「お前の間違いはいろいろある。それがわからないなら、謝罪をするべきではなかった。謝罪をして見逃されたいという欲求が丸分かりの目をしていたのがいけないな」

「いやだ、いやだ、死にたくない」

「傲慢だよ。傲慢だ。死にたくないのなら最初から生まれて来なければ良かっただけの話ではないのか。なぜ俺にそれを訴えるんだ。まるで自分の罪を理解していない証明じゃないか」

「なんで、死ななくちゃいけないんだ」

「生まれたからだなあ」

「何故貴様が私たちを罰するんだ」

「俺が『死神』だからだなあ」

「お前は一体、何者だ」

「見て、知れ」


 そこで、とうとう知る。見たことがある。


「宇宙や天候を支配する天空神……」


 口が勝手に動く。


「神々の王……お前は……もしや……」


 隼人の回し蹴りがビリビショップの顔面にあたる。

 肉片が弾け、それを伝うように宇宙色の稲妻が走る。


「あとは……蘇生か」


 するべきだろうか、と一瞬考えた。

 ここまで凌辱されて蘇生などされたところで。

 残る人生に尊厳などあるのだろうか、と。


「やってから、考えよう。何もなかったくらいに綺麗に……」

奈津子    疾風

風の模様─┬─風の模様

     │

    隼人

    雷の模様

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