第三十九話
「で? 変身能力は?」
「おそらくは身についているとは思うが……確証がない」
「そっかー。でもまぁ、なんとか頑張るしかないか!」
隼人はいつもこうやって笑う。だからこそ好きで、夜風隼人のあの顔がいたたまれ無かった。
「とりあえず風浴びて来るかなあ」
「俺も行くわ」
と、言うところで「チャリン!」という音が鳴る。
「勝平! 鳴った」
「よし来た」
勝平は壁にかけていたコートを引っつかみ、隼人は着ていたセーターを脱ぎ捨てた。
革製の強化服になる。
「どんな怪異だとかわかるか!? 冬場はそういうのわかんねーと困るぞ」
「怪人が複数体……怪異が一体」
「じゃあ俺は怪人相手にするわ」
「頼む」
二人は部屋の窓から飛び出した。着地の際に勝平を両手で抱える。
「んー、何処?」
「郷土資料館の裏手だ」
「じゃあこっち! ほら行くぞ!」
真逆の方へ走ろうとする隼人の首根っこを引っ掴んで、郷土資料館へ向かう。
「いやしかし、久しぶりじゃないか? こんながっちり怪異と戦うの」
「ウ……ン……裏宮城の方針が定まってきたのだろうね」
全長四メートル程の人型の怪異が全長二メートル程の怪人を引き連れていた。怪異は右手に女性の腕を掴んでいる。
「近付いてみろ、滝隼人!」
怪異が得意げに叫ぶ。
「それ以上近付けばこの女は殺す! そこの人間もだ!」
「チィッ! 小賢しい!」
「やり方を変えたね、賢くなったか?」
「黙れ! 無駄口を叩いても殺す! やっちまえェーッ!」
怪人が隼人も勝平を襲う。