第三話
二人は橋崎を家まで送ってから、とりあえずラーメン屋「ぺーたる」に向かうことにした。
今日は「依頼」が入ってしまったため、ラーメンは中止。
では何をするのか?
勝平は「おやっさん!」と店主を呼ぶ。
頭に「PETAL」とかかれたハチマキを巻いた店主が奥から出てくる。その手には銭湯にありがちな板状の鍵があった。
それを受け取って、厨房横の通路を渡って、裏口から外に出た。何をするかと思えば、丁寧に積んである木箱の溝にそれを差し込んだ。
すると、取っ手が出張り、隼人はそれを掴んで押し開ける。すると、階段がある。
そこを降りると、広い地下室かあった。
壁には色紙があり、そこには「ゲイルの誓い」がある。
許してもらえないことに怯えて後悔の稲妻から逃げない事。
心の中の好きって気持ちを忘れない事。
それがゲイルの誓い。
かつて隼人の実父が隼人に託した言葉だった。隼人の実父──林田疾風は、裏地球にある裏宮城の悪の巣窟を壊滅させた表宮城を護る守護者であったが、それが故に復活した巣窟の幹部タグルークに目を付けられ、改造され怪異になった。
はじめはそんな事情を知らなくて、いきなり豹変した父に困惑しながら、母を殴る父を恨んだ。
殴るなら俺を殴れば良いのに、と何度も思った。
何があったかの詳細は伏せるが、隼人は疾風の意志を継いだ。
風が心の風車を回すのだ。
「それはともかく!」
勝平は「ゲイルの誓い」の前で固まってしまった隼人の耳をつねって、壁を叩く。すると壁の一部が飛び出して、テーブルになりそこから大きなゴテゴテとしたパソコンが現れる。
「検索しようぜ」
「耳たぶめっちゃ伸びたかと思った……」
「お前いつもあれ見ると固まるんだもんよ。いいからほら!」
とりあえず検索ボックスに「牡丹ちゃんの電話 とは」と入力して検索にかけてみる。
「あっ、えっちなサイトだ」
「えっちなサイトの牡丹ちゃんしか出てこないな」
「マイナー都市伝説だしね。メリーさんの電話とさとるくんの相の子みたいなもんだし」
「さとるくんって?」
「公衆電話に十円玉を入れててめぇの携帯電話にかけて、『おいでください』って言うと、二十四時間以内にさとるくんから何回か電話がかかっ来るんだよ。電話の度にさとるくんは位置を教えてくれるんだけど、それが電話が続く度にどんどん自分に近付いてくるって言うんだな。でも、その間はさとるくんはどんな質問にも答えてくれる」
「しゃらくせぇカスみたいな怪異だな。そいつ強ェのか?」
「電話越しでしか話してくれないからね。でも近付いてきてるってことはもうオフ会みたいなもんだから人間としてはかなり強いと思う。でも子供だからなあ。ただ危機感がないだけかも」
「大人は何してんだ」
「もういいからやるぞほら!」
次は「宮城 都市伝説 牡丹ちゃんの電話」と入力してみる。
「かなり絞れたけどまだえっちなサイトがある」
「えっちなサイトの牡丹ちゃんは宮城の人らしいな……」
「「うーん」」
二人はインターネットが苦手だった。