第二話
あの、牡丹ちゃんの電話って知ってますか。
夜中の十二時になった時に自分の電話番号に電話をかけると、牡丹ちゃんっていう女の子に繋がるっていう話があるんです。
それで、私、この前の土曜日に、友達とその牡丹ちゃんの電話を試してみようってことになって。
それで、友達の携帯電話で、友達の電話番号を使って、その牡丹ちゃんの電話を試したんです。
本当のところを言えば、みんな小馬鹿にしてました。みんなもう都市伝説とかを信じるような年齢じゃなかったし、自分の電話番号にかけたところで、っていう前例をみんな興味本位で過去に調べてたし。
でも、その時は友達の家に泊まったっていう興奮で、私たちどうにかしてたんだと思います。
私たちは、それに遭遇したんです。
「私、牡丹ちゃん」って、電話の向こうから声が聞こえて来たかと思うと、すぐになにも聞こえなくなって、すぐに、悲鳴がなりました。
私たちは驚いて、急いで通話を切ったけれど、やっぱり不安で、その時、私たち写真撮ってたんです。記念撮影って言って。
写真の、梓ちゃんの肩に、人の顔、ありますよね! これ、牡丹ちゃんの電話に呪われちゃったんじゃないかって、私たちとても心配で……。
と、橋崎結華は語る。
隼人はうーんと唸ってから、「危機感知」は作動しなかったしなあ、と思ってから「本物の方かな」と思い至る。
隼人は数年前から「怪異」と呼ばれる存在と戦ってきた。
大抵の怪異は裏地球という世界から表地球を侵略するためにやってきて、此方の人や動物に特別な能力を寄生させる。
寄生された者は妖怪や幽霊になり、その時点で破壊兵器になる。
ごく稀に友好的怪異が生まれるが、その場合でも、やはり、悪意に満ちた行為に走る。
それを止める方法は「殺害」のみ。
使える心は殺意だけ。
それとは別に、表地球産の怪異も存在する。
その場合の怪異というのは、死後に恨みを強めたり、この世に未練を持ったりといった具合に憎悪感情が高ぶることによって、この世に魂だけが定着する存在。
幽霊から妖怪になる場合も少なくない。
隼人の危機感知能力は危険が迫ると頭の中で「チャリン!」という具合に鈴の音がなる。
裏地球産怪異であれば、宮城県内であればどこであろうと悪事を働いた時点で危機感知は発動するが。
どうやら発動は確認されなかった。
ゆえに、おそらく表地球産怪異であるのだろう。
「オッケーまかせて! 俺がなんとかしてあげよう」
隼人は橋崎の頭を撫でてにっこりと微笑んだ。橋崎は、顔の良い先輩の急なスキンシップに頬を赤らめた。
「さて、どうしようか」
「不満があるとしたら」
「あるの?」
「そこは、俺達だ」
「でもお前ほぼ喧嘩するだけじゃん」
「どうしてそんな事を言うんだ?」