第十七話
幹部撃退数は全国三位なのだという。
一位は北海道で、二位は福岡らしい。
「幹部の明確な数がわかってないんですよ。そもそもどういうフウに怪異が組織化されているのかもわかってないし。というか、早池峰さんはこういうのどう言ってるんですか」
早池峰というのは、岩手の守護者であるのは前にも言っただろうか。
「家族に危害が加わらないのなら別にいい、と」
「はぇ~……早池峰さんっぽい……」
「どうでしょう」
「もういいです。宮城からは絶対に出ませんからね。首領を倒して宮城に平和をもたらすまでは」
「了解です」
他の守護者は割と気軽に県外に出ているらしい。
そりゃあ、一般人として生きてきたから仕事で出張やらなにやらとあるから断固県外には出ない、という訳にはいかないだろうけれど。
隼人は「ポンポン出ていいのか」と驚いた。
ここで、ティユルシが申し訳なさそうに言う。
「かつては毎日のように現れていたが、余所から見ればあれは『暴走状態』とよばれる怪異の大量発生現象と同じような頻度だったのだ。他のエクストラムは君を『あの数を一人でこなすとは』と感心していた。普通は、今のように週に数度の頻度なのだ」
「はへーっ!」
みんな俺と同じくらいばかすか相手しているかと!
隼人はびっくり仰天した。
「俺も旅行とか行きたかった……富士山とか見に行きたかった。京都とか行きたかった……」
隼人は裏宮城の巣窟を恨んだ。
怪異作りすぎでしょ、と。
「毎回幹部が現れるところもあるらしい。そこが北海道だ」
「北海道めちゃくちゃ強そう」
「稽古をつけてもらえるか確かめてみようか」
「え! いいよ、北海道デカいし、忙しいでしょ仕事とか」
「北海道の守護者──鮫島三太郎の生業はゼネコンの社長だ」
「え! 権力者だ!」
隼人はまたもびっくり仰天。もう驚きすぎたため口の中の水分が無かった。珈琲を飲む。
「えーでも、暇があるときにこちらから頼んでみたいな」
「そうしよう」
まだ、誰かに頼るのははやすぎる。
隼人はそういう遠慮をする人だった。