第十六話
隼人は次の日も学校に行って、なんとか普通の生活をした。政府が怪異と守護者の存在を公表したおかげで、「守護者」という視線が付き纏ってきたが、なんとか無視した。勝平には「生身」という視線が突き刺さっていた。
それから、半ギレのまま家に帰って、半ギレのままシャワーを浴びていると黒い高級車が家の前に泊まった。
身体を拭いて、半ギレのままドアチャイムが鳴って一秒ですぐに戸を開けた。
「なんすか」
「宮城の守護者ですね、滝隼人くん」
「うるせぇです。そうですけど。てかなんすか。家に押しかけて来ないでください。電話して来ればいいでしょ」
「すいません、ですが」
「俺いま思想偏りそうなくらい政府にキレてるんですよ。俺がせっかく身につけた正体隠す方法全部無駄になったので」
「い、いえしかし」
「なんんですか」
政府の黒服二人が半ギレ隼人に困っていると、そこにティユルシ──という、黒猫が現れる。
ティユルシは隼人に能力を授けた張本人である。
エクストラムという上位存在にあたる生物だ。
人の言葉を話す。
「落ち着け、隼人」
「落ち着けったってね! ティユルシ、お前はなにも思わないわけ?」
「これは我々の提案なのだ。そもそもいままでがおかしかったのだ。個人で活動するのはおかしなことだった。組織として運営していくべきだったのだよ」
「だったら最初に守護者に相談するのが筋ってもんじゃないの? エクストラムが認めちゃったならもう俺がウダウダ言っててもしょうがないので、もう決定についてはなにもいわないけどさ、せめて筋通してよ。役目でしょ」
「申し訳なかった」
隼人は「いいけどさ」と言って、ため息をつく。
「ごめんなさいね! ちょっと許容すべきことではなくて! ウダウダ文句吐かしちゃって」
隼人はそういうと、黒服二人を中へ案内した。