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ウーファが可愛いだけのやつ

 道を歩いていたら、三人の見覚えある顔に遭遇した。

「おんやぁ? 我らがクラスの貴重な人間サンプルじゃないか。奇遇だねぇ」

「つまりは見飽きた顔……。折角の愉快な土曜日が平日気分に逆戻りか。クッソ不愉快ね!」

「そ、そんなこと言ったら人間さんが可哀相だよ! あ、こんにちは、人間さん!」

 石猿のウーファ、天邪鬼の裏々りりか、人狼のリュカだった。学校では見られない、私服姿だ。

「なんかいきなり辛辣なこと言われた気がするのは置いといて、三人で何してるんですか?」

「ご覧の通りさ」

 ウーファは手に持っていた大きなビニール袋を見せながら説明する。

「街の清掃ボランティアだよ」

「ほう、ボランティア。それは立派な」

「とはいえ、ただ目についたゴミを拾って歩き回るだけの簡単な作業だけどね」

「いやいやそれでも。しかし、なんでこのメンバーで? リュカは見るからに良い子だから何となくわかりますけど、ウーファと裏々香もこういうのに興味あったんですか」

「ひゃっ!? リュカが良い子!?」

 顔を赤くして照れるリュカ。はい、可愛い。

「ご挨拶にご挨拶をぶつけてきたか……。少しはやるようね」

 裏々香は俺を睨みつける。

「あ、すみません……。そういうつもりじゃ――」

「まぁ良いわ。つまりあんたの中にもこういう考えがあったのよね。『天邪鬼が素直に人のためになるようなことをするはずが無い』、と」

「まぁ……」

「フッ……アッハッハッハッハ!! 甘い、甘すぎる! まんまと常識に囚われすぎているッ!!」

 こちらを蔑むような眼差し。何だかとりあえず楽しそうだ。

「……? どういうことですか?」

「アタシの企み、教えてやるよ。……ただし今じゃない、そのうちだ。もう少しあんたの間抜け面を拝んでからにするわ」

「はぁ……」

 一体彼女は何を企んでいるのか。教えてくれるときは来るのだろうか。

「……とまぁ360度ひねくれた裏々香は置いといて、お次は私が種を明かす番だねぇ。ご存じ銭ゲバの私だけれど、求めているのは小銭ではなく、圧倒的な大富豪。故に求められるは、いずれ最強のビジネスモデルを見出す天才的な発想力。その為に私は日々の行いを修行と位置づけ、発想力の糧にしてやろうとしているのさ」

「相変わらず清々しい煩悩というか……、でもそのためにボランティアとは……」

「ウーファちゃん、いつも頑張っててすごいんだよ!」

 ウーファに憧れの眼差しを向けるリュカ。はい、可愛い。

「クククッ、未来の資産となるのなら、たとえ苦行でも安いものなのさ」

 あくまで煩悩を前面に押し出すウーファ。しかし動機はどうあれ、そのために日々努力し、結果的とはいえ善行を行っているのだから立派ではある。

 だから俺は少し見習いたくなってきた。

「それじゃあ、俺にも手伝わせて貰えませんか?」

「ほーん、君もか。想定外ではあるか、勿論断る理由も無いね。いやむしろ、汚れたのが二人に純粋なのが二人でバランスが良くなるか。クククッ、それではリュカとよろしくやってくれよ」

「わぁい! 人間さんと一緒だ!」

 そういう訳で俺は彼女たちと一緒に街を綺麗にして回った。それはそれとしてリュカは可愛い。


 しばらくして。

「ふぅ、こんなところか。あとはこのゴミを処理施設に持っていくだけだね」

「え? 結構遠いんじゃないですか?」

「人間にとってはそうだねぇ。でもこの私が斉天大〝麗〟(せいてんたいれい)ウーファ様なのを忘れて貰っては困るよ!」

 ウーファは口笛を吹く。すると遠い空から何かが飛来してきた。あれは、雲? 小さな小さな雲のようだが?

「筋斗雲。私の愛車さ」

「ああ、西遊記をモデルにしたバトル漫画で見たことありますね。本当にあったんだ」

「これが便利でねぇ。飛行能力者でも運べない重めの荷物も運べるから使い道はいくらでもあるのさ。……それじゃ、私はこれを置きに行った足でそのままバイトに行くから、また月曜日に学校で会おう」

「え? これからバイトですか?」

「ああ、自分と向き合う修行にもなる無償労働も良いが、いずれ必要になるかも知れない資金も貯めるのも、将来の選択肢を広げてくれる。クククッ、いずれにせよ未来の大富豪の自分を思い浮かべながら汗水垂らすのは愉快で仕方ない! では、今日もこの筋斗雲で美味しいご飯を運ぶとしよう!」

「デリバリーですか。いや、筋斗雲をそんなことに使うんですか……」

 ウーファはゴミ袋と共に筋斗雲に飛び乗って意気揚々と飛び去ってしまった。

 その心は欲望のまま、しかしそのために努力を苦にしないウーファが可愛いだけだった。

「あ、あの、人間さん……」

「ん……?」

「リュカね、今日は人間さんといられて楽しかったよ……」

「……」

 はい、可愛い。しかしきっと気のせいなのだろうが、なんだかその時のリュカは少し寂しげに見えた。

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