【8冊目】 『トリエステの坂道』 須賀敦子
『和』の雰囲気も好きです。
特に心を惹かれるのは平安時代。十二単を着てみたい。和歌を詠んで暮らしてみたい。ですが、これは貴族の家に生まれることができたら、ですよね。
冬野はもし転生することができても、確実に庶民の家に生まれる謎の自信があります。一般庶民に生を受けたのなら、きっと生きてゆくだけで精一杯だったはず。『羅生門』にもそんな様子がうかがえますよね。
そんな大変な思いはしたくはない(キッパリ)。
ですのでやっぱり平安時代に生まれるのではなく、できることなら俯瞰する立場で時代を眺めてみたいなぁ。
そしてそれとは別に、異文化圏にも相当の憧れがあります。
ヨーロッパが大好きです。もしかすると、幼いときに遊んだジグソーパズルの影響もあるかもしれません。
そのパズルの出来上がりの写真は、石畳の路地に暖かそうなランプが灯っているクリスマスの冬の光景でした。
ヒーターの前に座り込み、温風を受けながらパズルを嵌めて遊んでいた当時、まだ知らぬ遠い異国の冬の光景に心を奪われて、夢中で眺めていたことを思い出します。
はい。また前ふりが長くなってしまいました……。
今回はそんな異国の香り満載のエッセイ作品です。
ご存知の方もいらっしゃるかと思います。
★『トリエステの坂道』 須賀敦子
簡単に作品紹介です。
イタリアの都市トリエステに、詩人サバが愛した面影たちを求めて、著者の須賀敦子さんがひとり旅をするエッセイです。
以前からエッセイ作品は読んでいました。主にイギリスを舞台としたものや旅行記です。
今でこそエッセイまがいのものを書いていますが、当時は特にエッセイに興味があったわけではないのです。イギリスや旅行が好きだから、という理由で読んでいました。
なぜこの本を書店で手に取ったのかは、はっきりとは憶えていません。おそらく好みのシンプルなタイトルに惹かれたのだと思います。
ページをめくれば旅行記でした。
一行、二行を読むと、文章が自然にすっと馴染んできました。とても冬野に「合う」文章だったのです。描写というよりも「文章」に惹かれました。
そして日本語が美しい。今まで読んできた作家さんの中でも、そう思った方のおひとりです。
トリエステの町をひとり歩き、サバ縁の書店や町並みや人や匂いに彼の愛した面影を探してゆくのですが、なんというか、一緒に町を歩いた気分になれるのです。
景色はもちろんのこと、カフェの雰囲気、町の音、人々の生活、そういったことが目の前に広がり、須賀さんのお話を隣で聴いているよう。
詩人サバのことも町の歴史と一緒に触れられているのですが、正直、そこは……理解はできてはいません。
サバの詩も読んだことがありません。不勉強でスミマセン。いつか読んでみたいとは思っているのですが……。
この作品は旅行記として楽しみました。
『トリエステの坂道』という文庫には、イタリアで暮らしたエッセイや、サバと同じトリエステ生まれの詩人ジョッティにかんするエッセイが収録されています。
旅行やイタリアや詩に興味のある方。いかがですか?
イタリアを身近に感じて、日本にいながらもこの夏に旅をしたようなお得な気分になれるかも?
恒例です。
冬野の趣味嗜好に沿ったおすすめです。肌に合わなくても、苦情は一切お断りいたします。笑
以前に予告したものは児童書だったのですが、まだ再読ができてないのです。児童書とはいっても、けっこうな頁数がありまして……(*`艸´)
なので今回はこちらの短編作品を先に紹介させていただきました♪