【7冊目】 『ぶっせん』 三宅乱丈
聖職者――といえば。
司祭や僧侶、教師が入る場合もありますね。
冬野は昔、中部地方の有名な禅寺の宿坊に、卒業旅行で泊まりに行ったことがあります。
宿坊に宿泊した翌日の、早朝5時からの朝課に参加させていただきました。
季節は春の芽吹きが感じられる3月。
だというのに、深夜から大粒の雪が降りだしていました。宿坊からお堂へと続く渡り廊下から見る外の景色は、木の枝にも厚く雪が積もり、真っ白な一面の銀世界でした。
雪がしんしんと降り続く中の、禅寺の荘厳な雰囲気が漂う厳粛な朝のおつとめ。
畳敷きの広いお堂に火の気はなし。
おまけに、座敷と外との仕切りも開けられていたように記憶しています。
冬野の服装はジーンズとTシャツ、その上に薄いカーディガンいち枚だけの軽装。
いうなれば、スキー場にその格好でのこのこと出掛けていったようなものです。
……アホですね。
なにを考えてそんな薄着でいたのでしょう?
お坊さんが黒い法衣姿で読経をするなか、それを正座をして拝聴しました。
朝課は貴重な体験です。
しかし……当然といえば当然のこと。あまりの寒さのために、ガタガタブルブルとした身体の震えが止まりません。
正直、朝課どころじゃない! 一刻も早く、この地獄の寒さから逃れたい!
早春の中部地方。日本海側の気候を舐めていた冬野は、お坊さんたちのありがたいお経が響く中、そんなことを考えていました。
寒すぎると本当に、歯の根が合わないんですねぇ……。
……さてさて。
かなり前ふりが長くなりましたが。
今回はそんな聖職者のコメディ漫画です。
★『ぶっせん』 三宅乱丈
簡単に作品紹介です。
檀家も少ない、極貧の禅寺『仏物専寺』。
生き残るための苦肉の策として、インチキ仏教専門学園を始めます。略して『ぶっせん』。
『ぶっせん』は男子校です。言い方を変えると、女人禁制。
同じお山には別の宗派の裕福なお寺、『金々腹寺』があります。そこからは『ぶっせん』を潰すため、内情を探るべく一番下っ端の正助が密偵として入学してきます。
正助と同級生たちと教師(老師、山伏、禅僧)と、金々腹寺の僧侶と四姉妹&末っ子跡取り息子、外野なのに存在感がハンパないその他もろもろ。それぞれにかなりクセの強すぎる登場人物たちが巻き起こす、青春炸裂ハイテンション仏教コメディです。
2013年に吉沢亮さん主演で、同タイトルでドラマ化もしていますね。
聖職者の方々って、なんだか常に自分自身を律している印象があります。
それはとても気高い精神ですよね。
そして世間も、彼らは高潔で当たり前。というような目を持っていると思うのです(あくまで冬野の勝手なイメージですが)。
しかし……!
この作品は良い意味で、そのイメージのすべてを裏切ります。
人間の煩悩は通俗的には108つあると云われます。
クセの強い登場人物たちは、全員が煩悩まみれの愛すべきおバカたちです。
生活のすべてが授業なのですが、授業は修行です。
外食という名の托鉢。水浴びという名の滝行。ピクニックという名の荒行。
そんな毎日を送っていても彼らは悟りの境地には程遠く、解脱して涅槃にはとうてい辿りつくことはできないであろう煩悩まみれです。
ですが、きっとそれが真理だと思わせてくれます。笑
とにかく、読んでいて笑いが止まりません。
読めばたいていの悩みは吹き飛ぶこと請け合いです。
そして、最終講(最終回)には、なぜだか……じんとさせられるのです。
仏教とは、より良く生きていくための哲学だと聞いたことがあります。
きっとそれを、この作品で教わったからでしょう(え?)。
こんな『ぶっせん』があったなら。
めちゃくちゃ面白いと思います。
もちろん。
入学するのではなくて、外側から観察して楽しむのですヨ。
☆注意
実際のお寺とは絶対に比べてはいけません。
あくまでこれはフィクションです。
恒例です。
毎回書きます。
冬野の趣味嗜好に沿ったおすすめです。肌に合わなくても、苦情は一切お断りいたします。笑
神社仏閣巡りが好きです。
ご近所もいいですが、
伊勢神宮と出雲大社に行きたいなぁ。
『ファンシイダンス』も好きなのです。