【3冊目】 『泥の河』 宮本輝
ジャンルはいわゆる純文学。
太宰治賞を受賞している作品です。
(しかし、純文学ってなに? 謎です。「なろう」にも定義はあるし、冬野の作品にもシリーズでつけてありますが、ずっと、謎。エンタメ作品の中にも芸術性が高いものってありますよね?)
御存知の方もいらっしゃると思います。
★『泥の河』 宮本輝
簡単に作品紹介です。
舞台は昭和30年の大阪の街。
河畔で食堂を営む両親と暮らす8歳の少年、信雄。
川に浮かぶ「廓舟」と名付けられた舟に住んでいる同じ年頃の姉弟と信雄との、一時の交流を描いています。
泥の河なんて聞いたら、どんな河を思い浮かべますか?
透明な澄んだ水が流れている清流を想像する人は、たぶん、いないはず。
泥の河――まさに信雄の家の裏手を流れるのは、汚物の塊が岸辺で腐り、藁や板切れを浮かべている黄土色の川です。
なんだか小汚い河どころじゃなくて、そんな水に足を浸すのもイヤですね。笑
でも、ですね。
文章と描写が美しいのです。
きれいとは言い難い、河や現実を写実的に描き出す文章は、とても美しい。
矛盾していることを言っているようですが。笑
純文学と括られる作品だからといって、難解な言い回しや表現はありません。
むしろ解りやすくて柔らかい、角のない読みやすい文章だと感じます(←冬野の個人的主観です)。
物語の内容は。
明るいか、そうでないかといったら、まったくそうでない。
つまり、暗い。
そして、重い。
作品全般に漂うのは、即物的な哀しさと艶かしさ。
描かれているのはときには残酷であり、容赦のない過酷な現実です。
『生、性、死、別れ』
この作品に「なろう」的キーワードを入れるとしたら、これらの言葉は外せないと思います。
文章と描写の美しさで描き出されるその世界は、薄昏い闇。
子ども目線からの大人の世界って、怖いもの見たさで知りたいし覗きたいけど、知るのは怖い。みたいなところってありませんか?
知ってしまっても、その現実をまだ受け止められなくて、抱えきれない……。そして、知ってしまったら戻れない。
そんな感覚が胸に迫ります。
物語の読後感は……人それぞれです。笑
それをいったら、すべての作品がそうなのですが……。
冬野は好きです。
繰り返しますが、文章と描写がとても美しい。
特に「うわぁ! すごい」と思う表現があるのですが、ここには書けないっ!
ああ、日本語って美しい……。
いかがでしょう?
その入り口に立って、薄闇の淵を覗いてみませんか?
毎回書きます。
冬野の趣味嗜好に沿ったおすすめなので、肌に合わなくても苦情は一切お断りいたします。笑
今回、どう描けばいいのか悩んで一ヶ月以上かかってしまいました。
レビューって難しい……( ´△`)