第2話 勘違いから始まる対人戦
起きました。
現在時刻は午前4時。
ゆっくりと起きようとしたら、腕を姉さんに掴まれた。
「どこ行くの?まだ早いでしょ?」
「この状況で起きて居られないから、ログインする」
「……仕方ないね。朝ご飯までにログアウトしてね?」
「うん」
姉さんがベッドから降りて、真冬さんの腕を外してリビングへ。自室には鍵をかけられているからね。夜は1人で寝かせないために鍵をかけられる。自室とは。
ソファに寝転がってヘッドギアを装着。ログインしました。
3人はログアウト中なので、まだ起きてない模様。『先に森へ行ってる』というメッセージを送り、森へGO!
薬草採取、剣で自衛。攻撃を喰らえば回復を。MPポーションを作って【調合】も忘れずに。
「豚さん豚さんこちらへおいで!『ウィンドカッター』」
ブルーボアの群れを発見したので、魔法を撃ち込んだ。キレた豚さん集団が猛突進してきたので、手前から魔法で処理していく。魔法で倒れなければ剣で倒していく。
「肉と毛皮ドロップ……。空腹ゲージ実装アプデは……通知来てたな」
【火魔法】を持っていないので、"森の中で火を起こす"。木々に燃え移らないように細心の注意を。
《【火魔法】を取得しました》
短剣を洗浄して、肉を刺していく。
「血抜きはされてるのか、美味そうな匂いが」
焼き終わると、『ブルーボアの焼き串』が完成した。串じゃなくて短剣だから、山賊食いだが。
《【料理】を取得しました》
「うま」
「「美味そうだな」」
「美味しそうですね」
「ねえ、君……少し」
「誰だ!?PKか!?」
焼いた肉を回収して、剣を構える。
「待て待て、一般プレイヤーだ」
「人が食事をしている所に話しかけるなんて、一般プレイヤーのすることじゃない!!無防備なところを狙う悪党め!今は勝ち目がなさそうなので、逃げさせてもらう!」
流石に4対1では分が悪いので逃亡を選択した。火を消してダッシュで森の中を走り回る。
《【AGI上昇】を取得しました》
「待てって!逃げることないだろ?話を」
話を聞く必要などないだろう。『怪しい人は見かけたら殺せ』、子供なら誰もが知っていることだ。逃がさないためなの、本当に話をするために止めたかったのか、魔法を撃ってきやがった。
相手はパーティで、こっちはソロだ。1人が攻撃を仕掛ければ、全員が俺の正当防衛対象に入る。
「あぶねっ!?」
「止まってくれ!話を聞いてくれ!」
「お願い!君、【調合】か【錬金】を持ってるでしょ?その取得方法と【料理】の取得条件を」
「情報の対価も払う!」
「対価はPKの恐怖か!?クソ野郎!誰がお前らなんかに……痛っ!?」
「「「「あっ」」」」
PK疑いというだけでは、攻撃するとこちらがPK扱いとなってしまう。だが、今、俺に魔法が直撃した。仮に情報を求めるとしても、PKやモンスターの心配がある森の中で話しかけるのはマナー違反だろう。
「悪い!」
「『ウィンドカッター』!!」
流石に反撃しないとこちらが死ぬので、まずは回復を潰すために風の刃を放ち、僅かに目を瞑った瞬間に近くの木を蹴り、飛ぶ。治癒士の後ろに着地し、首に剣を刺して倒す。
「お前、それがどう言う意味か分かってんのか!?」
「先に襲ってきたのはお前らだろ!集団戦に置いてヒーラーを先に潰すのは鉄則だろ!」
「魔法を当てちゃったことは謝るけど、やり過ぎでしょ!?」
こいつらの話なんて聞きたくない。【隠蔽】を自身に付与して、3人の視界から外れる。女魔法士の後ろから、先程と同じように首を刺す。
「2人目……」
「まずい!!一旦退く」
「カイン!」
「3人目」
魔法士を倒した直後に【隠蔽】をかけ直して、剣士を倒す。残りは拳士だな。【隠蔽】は戦闘中にも使えるが、攻撃をすると解除されてしまう。
「おい、落ち着けよ……」
「ソロ相手に、PKの危険がある街の外で話しかけたのは失敗だったな」
「お前……PKだったのか!?」
「いや、それはお前らだろ?」
どこの国もそうだろうが、エルフ王国も安全じゃないな。種族がエルフなだけで、ステータスに差は無く、クエストや進行エリアに差があるだけ。エルフのイメージとして、魔法や弓の遠距離に特化してる……とでも思っていたのかな。拳士も倒した。
《【暗殺術】を取得しました》
ゲーム2日目でPKに遭遇か……。もっとLvを上げないと、ソロでは動けないな。
「グリーンネームのままだから、正当防衛は成立したか。ずっと魔法を撃たれてたからな」
お金ゲットでホクホク。
朝ご飯まであと2時間程、魔物を倒してLv上げをしておく。
〜その頃、掲示板では〜
15.一般男性プレイヤー
聞いてくれ!森にソロのPKがいるぞ!
16.一般男性プレイヤー
どこの森だ?
17.一般男性プレイヤー
エルフ王国の森。
18.一般女性プレイヤー
遠くから見ていた者ですが、あれは立派な正当防衛では?ソロ相手に森の中で話しかけ、逃げられたら魔法を撃って足止めをし、終いには当ててしまった。あれでは反撃されても文句は言えませんよ。
19.一般男性プレイヤー
ソロの方は明らかにPKを警戒していたからな。そこで止めていれば事件は起きなかっただろう。
20.一般男性プレイヤー
それは……そうだが。俺達の非は認めるが、全員殺さなくてもいいだろ……。金をめちゃくちゃ盗られた。
21.一般男性プレイヤー
【強奪】持ちだったか、お疲れさん。話を聞く限り、ソロの方に非は無さそうだな。PK扱いはやめてやれ。
22.一般男性プレイヤー
そうだな……。
23.一般女性プレイヤー
それよりも!今のLv帯なら強めの4人パーティを、ソロで瞬殺していくプレイヤーだよ!アキナ達と一緒に居たプレイヤーのはずだけど、ベータテスターに居た?
24.一般女性プレイヤー
どうでしょう?テセウス達の口からは「チュートリアル」と出ていましたから、初心者では?あの3人とパーティを組む時点で、ゲーマーであることは間違いないでしょうけど。
25.一般女性プレイヤー
全員首を後ろから刺されて瞬殺でした。魔法職はともかく、前衛職2人も瞬殺なのは……AGI特化でしょうか。
26.一般女性プレイヤー
あれはどちらかと言うと【隠蔽】だと思います。【暗殺術】を持っていたのか、そういうレアアイテムを持っていたのか。
27.一般男性プレイヤー
テセウス達と組むならPKでないことは確かだが、PKKか?要注意プレイヤーだな。森の中で話しかけたら殺されるぞ?w
28.一般男性プレイヤー
あれか、テセウス達と一緒ってことは、ウルフのレアドロ装備のやつだな。
29.一般女性プレイヤー
そうです。可愛い子です。
当人不在で繰り広げられる、ハル関連トーク。
〜ハル視点〜
アキナ:まだ森にいる?そろそろご飯よ。
ハル:分かった〜。
フレンドチャットでアキナから連絡が来たので、急いで街に帰ることに。
宿に戻ってログアウトした。
目を開けると、雅弥と真冬さんがじっと見ていた。
「な、なんすか?」
「何でもないよ〜」
「好きな男子が寝顔を晒しているのよ?写真を撮るしかないじゃない」
「消せ」
「怜美と尊に送ったら消すわ」
ダメだこいつ。こういうのを肖像権侵害と言うんだっけ?
「流石に、あの短時間で問題は起こしてないと思うけど」
「そ、そっすね……」
「「「あら?」」」
「いただきます」
「待って。久遠?」
「大したことじゃないよ」
「全部話すまでログイン禁止ね」
仕方ないので話しました。頭を抱える姉さんと雅弥、苦笑いをする真冬さん。待ってくれ!俺は悪くないだろ!?
「街の中で話しかけるべきだろ!?森の中で、こっちはソロだぞ!もう少し考えるべきだったかもしれないけど!」
「違うよ、問題はパーティを全滅させた事じゃないよ。"ソロで4人パーティを倒す力"だよ」
「掲示板で注目されてるね。なにか特殊なスキル持ちじゃないか〜とか、暗殺持ちか、PKKか」
「【調合】は街の中の宿で使いなさい」
【鍛冶】や【裁縫】は初期職に合ったが、【調合】や【錬金】は無かったらしい。ラノベの定番、不遇職不在。
朝ご飯は、俺だけ米とウィンナーとスクランブルエッグ。姉さん達はパンとウィンナーとスクランブルエッグ。ただの好みの差だな。米の方が腹を満たせるし。
「ご飯食べたらログインね?夏芽と大聖もログインするから」
「ん?分かった」
「「久遠をよろしくね、雅弥」」
「任せて」
「子供扱いやめてもろて」
「まだ子供だし、どちらかと言うと問題児扱いだよ?」
「くっ……」
かくなる上は!ゲーム内だけでも自立する!!姉さんと真冬さんが仕事に行ったので、雅弥とログインした。
さっさと起き上がって森へ行こうとしたら、アキナに捕まった。
「離せ!子供扱いするなら、俺はソロになる!」
「へぇ?幼馴染との約束を破るんだ?」
「あ、いや、その……」
「狩りいくぞー!」
「そ、そうだな!!行くか!」
テセウスとミカンもログインしたので、パーティを組んで街の中を歩く。装備は安定のウルフレアドロ。これより強い装備も作れるのだが、なんかめんどくせぇから。
「ハル、SP振った?」
「……」
「え!?振ってなかったの!?」
「早く振れよ!!」
「振ります……」
「SP振らずに、4人パーティ倒したのね。舐めプ?」
「いや〜、あはは〜」
「「笑って誤魔化すな!!」」
そして、まだ振ってない。狩りをした後に振ればいいっしょ!!
「ハル、あなたの【隠蔽】よりも、私達の【鑑定】の方が高いのよ?」
「ふ、振ります」
「「「全く……」」」
名前:ハル
種族:エルフ
職業:治癒剣士
調合士
基礎Lv.67
HP:1,710/1,710
MP:4,420/4,420
基礎ステータス
STR 58
VIT 28
DEF 73
INT 140
DEX 40
AGI 42
LUK 70
SP 0
《称号》
【特別クエストの先駆者】【殲滅者】【狂気】
【付与の先駆者】
《基礎スキル》
【鑑定Lv.93】【植物鑑定Lv.86】
【地図】【アイテムボックス】【採取Lv.86】
【強奪Lv.79】【強奪防止Lv.50】
【隠蔽Lv.97】【挑発Lv.69】
【自由落下Lv.1】
【MP上昇Lv.59】【INT上昇Lv.52】
【STR上昇Lv.48】【DEF上昇Lv.43】
【AGI上昇Lv.22】
《職業スキル》
【治癒術Lv.58】【剣術Lv.51】【調合Lv.34】
【付与術Lv.39】【暗殺術Lv.1】
《戦闘スキル》
【光魔法Lv.40】【水魔法Lv.40】【風魔法Lv.40】
【無魔法Lv.50】【火魔法Lv.30】
【身体強化Lv.50】【道連れ】【詠唱省略Lv:95】
《耐性スキル》
【落下耐性Lv.28】【九死に一生】
「良し!」
「追いつかれそうだな」
「高Lvプレイヤーを倒したことが大きそうね」
「Lv.6のポーションを50本ずつ渡しておくね」
「「「ありがとう」」」
4人居てもオーガに挑めるほどではないらしく、崖下の森へは行かない。オークを中心に倒すことにした。
「「「働け盾職」」」
「当たり強くね!?ミカンは仕方ないとしても、ハルは……アキナ護衛か!」
「ハルは治癒士だし」
「いや、ミカンが前に出ろよ……」
「盾が押さえないと!」
ふむ。テセウスの『ヘイトアピール』では数が多すぎか。回復できるやつは2人いるが、俺も【挑発】を使うか。
「ミカン、俺と護衛交代。俺が【挑発】しながら削るから」
「ん!了解!」
「かかってこいや!豚共!!」
「治癒士有るまじき前衛スキルね」
テセウスとミカンが前衛、俺は中衛、アキナが後衛。えーっと?物理攻撃・魔法攻撃・回復か。俺だけやること多いな。
「「ハルのSTR低くてよかった!」」
「油断はできないけど、まだ前衛を任せられる程ではないわね」
「ん?」
「よく見たらウルフ装備ね……」
「剣もボロボロだし」
「SPは振らないし」
「めんどくせぇから」
「「「はぁ……」」」
後でおすすめの鍛冶屋と裁縫屋教えてね。
オークを倒し終わったので、休憩します。
「何してんだ?」
「空腹ゲージ実装までにご飯の準備をね」
「【料理】の取得方法は?」
「肉焼いた」
「それだけじゃ取得できないのよ?判定がよく分からないけど、焼くだけじゃ料理ではないらしいわ」
ハル:火加減の調整とか、調味料とか?
テセウス:どっちもありそうだな。
ミカン:テセウスは無理だと思うから、私とアキナが検証しよっか。
アキナ:そうね。
テセウス:それくらいならできるわ!!馬鹿にすんな!
だがこの男、焼肉を食いに行った時に、焼くだけなのに真っ黒にした前科持ち。俺達がひっくり返すタイミングを見てたら分かることだろ!!なんで焼肉で真っ黒焦げが作れるんだ!?
「そう言えば、ハル。冒険者ランク上げてる?」
「上げてねぇけど文句あるか?」
「文句しかねぇよ!!上げろよ!!」
「なんか得あるの?」
「ランクを上げないと入れないエリアとか、他国に行くにはD以上とか」
「まだFだな」
「ランクを上げないと、同じ依頼を受けられないんだよ?」
それはまずい。置いてかれたら寂しい。
「素材を防具と武器に使うか、素材を納品して金を得るか。どっち先?」
「お金は出すから、装備だけ作りましょ。必要な分は後で回収するから」
「おけおけ」
「「借金じゃん」」
「思ったけど、態々言うな!」
肉を焼いて、摘まれて、オークやボアを倒してまた休憩。まだLv上げの段階だが、基礎Lv.100になったら依頼を受けるかもね。
「ハル、【詠唱省略】の経験値が超過してるわよ?」
「ん?おお!進化させるか」
【詠唱省略】は【無詠唱】に進化した。【無詠唱】のLvを上げると、【二重詠唱】になって同時に2つの魔法を使える。付与は別腹。
「基礎スキルは進化しない感じ?」
「えっとね、するやつとしないやつがあるかな。【鑑定】系は進化しなくて、いくつか揃うと統合されるの。統合先は【識別】ね」
「進化はするわよ?【識別】のLvを上げると【看破】になるわ」
「「「へぇ〜!」」」
「ハルはともかく、ベータテスター組はなんで知らないの?」
二次転職行けそうだな。次は『魔法士』となる予定だな。
3人も二次転職するそうなので、装備は転職してからとなった。
街に帰り、教会へ行くと、『魔法剣士』となった。
《【魔法術】を取得しました》
「あれ?」
「なんだ?」
「『魔法剣士』になった」
「「でしょうね」」
「それだけ【剣術】のLv高かったらな?」
「次の転職で『聖法剣士』ね。【剣術Lv.100】と【聖魔法Lv.1】とその他魔法系3つの進化ね」
地道に上げていきますか。
テセウスが『大盾使い』、ミカンが『戦士』、アキナが『魔道士』だな。
お次は装備作成ターイム!!
「SP振ったか?」
「あ」
「「「はぁ……」」」
振ってから歩き始めた。振るまで3人が動かなかった。
謎のルビが入っていますが、入れた覚えがないので確認します。消えなかったらバグです。