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В.г いいでしょう - 03

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「王都に入り、居住区ではない繁華街、または大通り、お店が並ぶ場所は、どこですか?」


「ここから、真っ直ぐこちらの方向に進みまして、そこから少し開けてくる場所が見えてきます。その四方に広がる道が、店などが立ち並ぶ通りになっております」


 ギルバートが、前方側に手を上げてみせて、簡単な説明をする。


「そうですか」

「ですが、少々、歩くには、長い距離になってしまいますが」

「構いません」


 その程度のことなど、全く気にもしていない様子のセシルに、ギルバートも内心で疑わしく思ってしまう。


 貴族の令嬢なのに、長々と通りを歩いて、疲れないのだろうか?


 おまけに、王都の中心街はかなり混雑しているし、そんな煩雑(はんざつ)な通りを好んで歩いていくご令嬢なんて、お目にかかったことがない。


 だが、セシルの行動に、一切、口を挟むことはしないと契約されているし、約束されていることだから、ギルバートもそれ以上は口出しをしない。


「では、行きましょうか」

「はい」


 二人の護衛を連れて、セシルはさっさと歩きだしてしまった。


 はっきり言って、一緒に付き添っているギルバートのことは、完全無視。その後ろで控えている騎士達も、完全無視。

 これだけの騎士の数が揃っているのに、もう、その存在自体、完全無視されているようなものだ。


 なんとはなしに、ギルバートだって、つい、溜息(ためいき)をこぼしてしまう。


 ギルバートは後ろにいる騎士達に合図を送ると、全員が無言で頷き返す。


 王都に向かう準備をしている間、揃えた騎士達には、徹底した指示を出している。それぞれの任務と、目的、そして、セシルが要求してきた内容も、だ。


 ギルバートとクリストフが、セシル達の後ろから追うように動き出す。


 それを待ち、騎士達が、バラバラと後ろで動き出していた。


 敵が潜んでいるかは、判らない。監視しているかも、判らない。


 だが、騎士達は、セシルに気取られないように、全員が分散して、それでも、ギルバート達からは絶対に離れないように、護衛しなければならない。


 特に、一番重要なことは、あの隣国からやって来た令嬢の邪魔を絶対にしてはいけない、ということだった。


 セシルの足並みは、しっかりとしたものだった。


 真っ直ぐ道を進んで行き、セシルの両脇を囲むように、二人の護衛が。

 だが、迷いもなく、セシルは進んで行く。


 何か目的地に向かうのか、と後ろで控えているギルバートも、警戒を緩めない。


 そうして、最初の広場に到着して、セシルは、説明通りに、大通りとして賑わっている通りに曲がる。

 お店もたくさん並び、建物も多く、通り過ぎる人で混雑している。


 さすが、大国の王都である。


 一応、通りの端を歩き、混雑した人込みに巻き込まれないように進んで行くセシルは、特別、目的があるのでもない。お店を見に来たのでもない。

 だから、横道に入る必要もないので、ただ真っ直ぐに突き進んで行くだけだ。


「クリストフ」


 ギルバートが口も開かないようなまま、小声でその一言を出した。


「ええ、分かっています」


 隣にいるクリストフも、同じように返答する。


 周囲の喧騒でかき消されそうなほどの小声だったが、二人の耳には、ちゃんと届いていた。


 スッと、ギルバートが一歩前に進んでいた。


「ご令嬢」


 後ろで護衛していたギルバートが、前を歩いているセシルのすぐ背後に寄って来ていた。


 周囲の喧騒にかき消されないほどの、それでも、小声で、その一言を、セシルの耳元で言ったのだ。


 セシルはギルバートも振り返りもせず、

「尾けられているの?」

「ええ」


「何人か判ります?」

「一人ではないですね」


「それは好都合。では、二手に分かれましょう」


 このセシルは、事の重大さを、理解しているのだろうか。


 突拍子もないことを、よく、平気で口に出してくれるものである。


「マスター」

「大丈夫です。地理に詳しい人に、案内してもらいましょう。さっさと、根こそぎ引っ張り上げましょう。加減は無用」


「わかりました。お気をつけて」

「二人もね」


「我々は、大丈夫です」

「では、二手に分かれます」


 それで、あっさり、セシル達三人で、すでに決定事項である。


 ギルバートが嫌そうに顔をしかめ、仕方がなさそうに、息を吐き出した。


「クリストフ、そっちは頼んだ」

「わかりました」


「散っている護衛に、決して手を出さないように、騒ぎ立てないように、伝えられます? どこで見張られているか、判りませんから」

「問題ありません」


 ギルバートが首を振ると、クリストフはただ頷いて、スッと、一人で先に進んで行ってしまった。


 それで、クリストフの隣に、誰かが近寄っていく。

 特別、二人で顔を合わせたり、話をしている様子には見えなかったが、あれが散っている護衛の一人らしい。


 どうやら、ギルバート達だって、万全で、腕の立つ騎士達を選んできたらしい。


 クリストフの隣を歩いていたような一人が消え去ると、クリストフは態度も変わらず、ただ、歩く速度を遅めただけだった。


 それで、セシル達が進んで行くと、すぐに、クリストフに合流したのだ。


「では、案内を」

「非礼を失礼いたします」


 そう言うや否や、グイッと、ギルバートがセシルの右腕を掴んでいた。


「絶対に、私から離れないでください。それだけは、譲れません」

「わかりました」

「では、こちらに」


 少し腕に力を入れて、セシルを引っ張り出したギルバートが、そのまま駆け出していく。


 人混みを避けるように、それでも、かなり足早で、ギルバートがその場を駆け出していた。その動きと速さに追いつくように、セシルの左手が揺れる腰の剣を押さえ、セシルも走り出した。


 二人の後ろ姿が人込みにかき消されていったのを見届け、クリストフも、セシルの護衛二人に視線を向ける。


「こちらに。少々、走り込みますので、しっかりついてきてください」

「わかりました」


 そして、三人もその場を駆け出していた。





「多勢に無勢ですね」

「そうですね」


 人通りの多い通りをかなり走り込んで、そこから裏側に入っていって、更に、奥へと裏道を駆けていくギルバートに連れられて、セシル達はどこかの路地裏に入っていた。


 混雑した家と家の間の抜け道を走り抜けると、そこは行き止まりだった。


 セシルを自分の背に庇い、ギルバートは、先程から全く態度も変わらず、スッと、剣を抜いていた。


 セシル達を追いかけてきていた輩が、どうやら追い付いたようだった。


 行き止まりで、おまけに、自分達を待ち構えていたようなギルバートを目にして、数人(軽く、五~六人はいて) が、へっ、と小馬鹿にしたように口を曲げて、そこで足を止めながら、ゆっくりと出口を塞いでいく。


「おいおい。そんなんで、俺たちを迎え撃つ気か?」

「はんっ。バカじゃねー」


 やさぐれ風情で、身なりもそれほど整っているのではない。だが、全員、腰に剣をぶら下げ、背が低くても、かなりの偉丈夫だ。


「もしかして、大丈夫ですか?」

「今更、それをお聞きになるのですか?!」


 初めから、ものすごく危険だと承知しているのだから、相手が一人でない以上、戦闘だって、かなり不利な状況なのは、すぐに理解できていたはずだ。


 全く、どこまで本気なのか、ふざけているのか、計り知れないご令嬢である。


 その間も、男達が、にへらと嫌らしく口を曲げながら、剣を抜いて進んでくる。


 家と家の間の隙間道は、一人で立ちながら、両手を広げても届かないほどの幅はあったが、剣を使い、振り回したら、二人で並んで立っていては、互いに邪魔になってしまう。


 一番前にいた男が、わざとらしく剣を振りながら、パチン、パチンと、左手に当て、あたかも威嚇しているかのようである。



読んでいただきありがとうございました。

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