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В.в ご冗談を - 05

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「今回――夜会に招待してきたのは、アトレシア大王国なのに、またも、令嬢が参加した場で、賊の侵入を許してしまった。あの状況を見ても、きっと、またアトレシア大王国が、令嬢を利用する為に呼びつけたのだ、と判断していたとしても、不思議はない……」


「まさか、それで、我々を責めていらっしゃると……?」

「ああ、そうだ。それは疑いようもない」


 あの冷たい、侮蔑も露わな態度が、語らなくても全てを明瞭に物語っていた。


「確かに――あの言動も、態度も、常識で言えば、王家に対する不敬とも言える。だが……、今の我々には、それを責めることもできまい……。伯爵令嬢は、ブレッカでは、あまりに不当な扱いを受け、非礼・非道の繰り返し……」


 そして、ハーキンの口からあまりにも疲れ切ったような、嫌そうな長い溜息(ためいき)が吐き出された。


「今回は今回で、王国に無関係な隣国の伯爵令嬢の命を、また、二度にわたって、危険にさらしてしまったのだから。我々は意図的ではなかったし、計画していたものではない。それでも――無能、と侮蔑されているだけに、絶対に、我々が仕組んだことだと、責めているのは疑いようがないほどだ……」


「えっ……? まさか、そのようなことを、本気で口に出してきたのですか……?!」


 アルデーラもハーキンも、二人とも何も言わない。


 その無言の肯定には、全員が目を丸くする。

 さすがに、そんな非礼は、不敬罪ごときの罪で済まされていいような次元ではない。


 唖然を通り越して、信じられない話である。


 アルデーラが嫌そうに溜息を吐き出し、全員を見渡してく。


()(かく)、きっかけは何であれ、今夜、エリングボー伯爵と、ダル男爵の陰謀が明らかになった。この機会を逃す手はない」


 その一言で、全員の顔つきが変わる。


「第一騎士団は、王宮内の警備を強化するように。虫の子一匹入れることは許さない」

「わかりました」


「第二騎士団は、エリングボー伯爵家、及び、ダル男爵家の邸を取り押さえろ。使用人だろうと、誰一人、取り逃がさないように。全騎士を注ぎ込んでもいい」

「それでは、警護が手薄になってしまうのでは?」


「構わない。王族、及び、主要な高位貴族には、部屋から一歩も出ないように言いつけておく。その間、王宮の警護は、第一騎士団に任せ、第二騎士団は、関係者全員を捕縛しろ。ふっ。叩き潰すチャンスがやっとやって来たようだな」


 監禁まがいのことを冷淡に口にし、その瞳は感情も見せないほど冷たいのに、アルデーラの口が不敵に上がっていく。


「まさか、奴らとて、今夜、予想もしない所で出鼻を(くじ)かれて、陰謀計画が台無しにされるなどとは、考えもしなかったことだろう」

「確かに」


 それも、予想もしていない、全く無関係の他国の令嬢に邪魔をされるなどとは、夢にも思わなかったことだろう。


「証拠隠滅をされる前に、こちらから先制攻撃を仕掛ける。屋敷を完全に取り押さえるように」

「わかりました。お任せください」


「第三騎士団は、このまま犯罪人の取り調べを。この数日で、更なる犯罪人を取り押さえることになるだろうから」

「わかりました」


「ギルバートは、引き続き、ヘルバート伯爵令嬢の監視を」

「わかりました」


「あの令嬢が、大人しく部屋に閉じこもっているとは、思えない」

「――まさか、この王宮で、事を犯すとお考えなのですか?」

「いや」


 だったら、アルデーラは何を懸念しているのだろうか。


 全員が不思議だったらしく、その全員を見渡しているアルデーラの口元が、更に皮肉気に上がった。


「今夜、夜会から抜け出させた一人は、あの令嬢の連れている精鋭部隊の一人だ」

「精鋭部隊? ご冗談ですか?」


「冗談ではない」

「ですが――確か、一緒に付き添ってきたのは、まだ子供のように見えましたが」


 あまりに奇天烈なドレスを着て、夜会に参加してきたセシルのインパクトの方が強烈で、一緒に付き添っていた残りの護衛のことは、あまり注意を払っていなかった全員だ。


 ただ、三人の護衛がいて、一人は背が低く――セシルと同じくらいの背丈だったから、それで、ギルバートも、今思い出して、子供だったのだろうか? と、憶測が出ていたのだ。


「そうだな」

「――子供が精鋭部隊?! ご冗談を……」


 だが、アルデーラの顔は冗談を言っているのでもなんでもなく、おまけに、第一騎士団の団長ハーキンは、苦虫を潰したように顔をしかめている。


 残りの全員の瞳が、飛び上がっていた。


「ご冗談、を……!?」


「あの令嬢が、理由もなく、自分の精鋭部隊を手放すはずがない。それなら、絶対に、理由があるはずだ。だから、監視を怠るな」

「――――わかり、ました」


 あまりに信じられない話で、納得もできないが、当座のギルバートの役目は、あの伯爵令嬢の監視なのだ。


「今夜は、王太子殿下主催の夜会が襲撃されましたが――貴族内の混乱は、どうなさるのですか?」


 アルデーラ主催の夜会は台無しにされ、おまけに、賊が侵入してきたなど――貴族達の間で、次にアルデーラ主催のそのような宴に呼ばれたとしても、また襲われるのではないかという懸念や猜疑心で、王太子殿下であるアルデーラであっても、もしかしたら、そのアルデーラを避けるような行動をするかもしれない。


 今夜の夜会では、賊が全員捕縛されたが、ある意味、王太子殿下の立場と信用を傷つけたことには、成功したのかもしれない。


 やはり、王太子殿下に付き従っては危険なのではないだろうか……などと、陰でひそひそと、更なる“長老派”寄りの貴族の動きを扇動してしまった形になった可能性があるからだ。


「しばらく、混乱はさせておけばいい。王宮内がバタついていて、隙があると思わせれば、こちら側とて、関係者の邸に乗り込みやすい。レイフとハラルドが戻ってきてからの報告次第だが、今は王宮内の混乱は気にしていない」


「わかりました」

「取り掛かってくれ」


 それが合図で、全員がアルデーラの前で一礼をした。そして、それぞれがアルデーラの私室を後にしていく。


 一人残されたアルデーラは、椅子に座ったまま足を組んでいく。


 さて、今夜は一体何人が釣れるものか――――



* * *



 昨夜は、王宮始まって以来と言っても過言ではない、大捕物(おおとりもの)が大々的に行われた。


 第二騎士団の騎士達全員が召集され、エリングボー伯爵家及び、ダル男爵家の王都にある屋敷は、夜更け近くに、突然、やってきた騎士団に制圧された。


 屋敷にいた家族・身内から始まり、使用人だろうと、全員が訳も分からず捕縛され、屋敷の広間に集められていた。


 その間、外は取り囲まれ、騎馬で突入してきた喧騒も周囲に響き渡り、近隣の邸の貴族達さえも、一体、何事なのかと、兢々(きょうきょう)と屋敷から顔を出していたほどだ。


 屋敷に残っていた全員の捕縛後、監視以外の騎士達は全部屋を捜索し、ありとあらゆる証拠品を探し出し、夜が更けても、厳しい捜索任務は継続された。


 朝方、朝日が昇り始めた頃に、やっと屋敷中の捜索を終えた騎士団は、まず初めに、身内だけを王宮の牢屋に連行し、残りは、屋敷で騎士達の監視を置きながら、尋問が始まるまで、全員を蟄居(ちっきょ)とさせた。


 王都内では、その噂が一気に広まり、朝からでも、仕事始めの王都の民だって、通り中で、その噂を、ヒソヒソ、ヒソヒソと、話していたらしい。


 セシルはあてがわれた客室に籠り、護衛が同じ部屋で一晩を過ごし、未婚の令嬢であるのに、護衛だからと自室に男性を泊まらせるなど――と、王宮の使用人から、こちらも、ヒソヒソ、ヒソヒソと、悪い噂が立ち上がっていた。



読んでいただきありがとうございました。

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