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В.в ご冗談を - 04

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 だが、ヘインズも事情を把握しているのではないから、ギルバートに責められても、助けようがない。


 それで、質問の方向を変えてみることにした。


「――王太子殿下、それに、ハーキン殿。なぜ、あの者――伯爵令嬢でしたか? あのような令嬢を、夜会にお呼びになったのですか? 見るからに――貴族の令嬢とは思えない様相をしていたようですが」


 会場に入って来たセシルのドレスは――奇天烈、とさえ呼べるほどの、見たこともないドレスのデザインだった。


 見慣れないドレスを着る令嬢がいてもおかしくはないが、セシルのあの様相は、とてもではないが、王族が開く夜会にやって来られるような出で立ちではなかったと、間違いなく断言できる。


 セシルを夜会に呼んだ理由はさておいても、セシルがあんな――奇天烈なドレスを着てくるなど予想外で、その点については、アルデーラだって言葉なし。


 だが、アルデーラのからの返答はない。

 未だに、気難しそうに眉間を寄せたまま、黙り込んでいる。


 いつまで経っても、アルデーラが口を開く様子はなく、説明する様子もなくて、微かに苛立ちを見せている残りの全員を見て、ハーキンが少し疲れたような息をつく。


「あの者は――あの令嬢には、王太子殿下の命を救われているのだ……」

「なんとっ――!?」

「なんですって――?!」


 驚く全員を前にして、ハーキンが、更に疲れたような、長い息を吐き出した。


「ブレッカの小競(こぜ)り合いがまた勃発(ぼっぽつ)して、王太子殿下を含む我々第一騎士団は、ブレッカの南東側で、部族連合の急進派が仕向けた大規模な領土進行を食い止める為、部族連合を迎え撃っていた」


 それを説明しているハーキンの表情は、なぜか浮かなないものだ。

 それも、あまりに――嫌々に、話をしているように見えないでもない。


「だが、その反対の南西でも、二派に分れた部族連合の兵達が、後ろから回り込んで、挟撃をするつもりだったのだろう。それで、ブレッカに駐屯させていた王国軍で、南西、いや、南の砦側は制圧させる予定だったのだが……」


「問題が?」

「ああ……。それも、小競(こぜ)り合いをしかけてきた部族連合ではなく、我々、王国軍が」

「どういうことですか?」


「南側の奇襲は――我々も、初め予想はしていなかったのだ。南の小国、ギリトルから、賊などの略奪行為なら解るが、わざわざ、ギリトルを抜けて、部族連合の賊も、他国からアトレシア大王国に攻め入ってくるとは考えなかった」


 それは、別に地理的な位置を考慮すれば、誰にも不思議はない状況だ。


「まず先に奇襲を受けていたのは、ギリトルからの南に近い南西だったようで、現地の王国軍が制圧にむかっていたはずだったのだが――その間、不正が発覚した」


「――不正っ?!」


 その事実を思い出すだけで頭痛がしてきそうだ……とでも言いたげな様相で、ハーキンも、嫌そうに手を額に押し当てていた。


「あの場に――我々よりも先に、現地に到着し、そして、奇襲から始まった小競(こぜ)り合いに参戦していた者がいたのだ。それが、あの令嬢なのだ」


「――――ちょっと待ってくださいっ。伯爵令嬢が、戦に参戦していたっ?」

「ご冗談をっ――」


「冗談ではない。あの令嬢は、ノーウッド王国ヘルバート伯爵家の代行として、ボランティアで、義勇軍として、現地にやって来ていたのだ」


 その話を聞いている全員の顔に、なぜ? という激しい疑問が浮かび、それ以上に、令嬢が義勇軍などという話が信じられず、顔を強張らせている。


「その条件として、ノーウッド王国では、ブレッカの戦の影響で、必ず南の通商路が影響を受け、流れ込んでくる移民問題が出る為に、それの調査と、そして、ブレッカの民の怪我人の手伝い程度なら力を貸す――という契約で、隣国からの義勇兵――として、戦に参加していたのだ」


 伯爵令嬢ともなる令嬢が戦場に参戦したなど前代未聞で、残りの全員は、その話があまりに信じがたく、強張った顔を今度はしかめ出す。


「――――なぜ、たかが一国の伯爵令嬢が、戦場へなど……?」

「ヘルバート伯爵家は、ノーウッド王国の南に位置する場所に、領地を構えているようだ。あの令嬢は――その領地の女領主でもある」


「えっ……?!」

「令嬢が領主っ――?!」


 これまた信じられない話に、全員が目を飛びださんばかりに驚いている。


「では――ヘルバート伯爵とは、令嬢のことなのですか?」

「いや。領地の正式な領主任命を受け、準伯爵の地位を授かったそうだ。ヘルバート伯爵は、令嬢の父親の方である」


「でも、準伯爵? ――で、女領主……?」


「そうらしい。私も、そこら辺の事情はよく知らないのだが、その女領主として任命された伯爵令嬢がブレッカの戦に参戦していた。そして、王国軍の不正を知らせてきたのも、令嬢だ」

「!!」


 本当に……、今思い出しても腹立たしい、王国の名を汚す行為そのものでならない、悪質な不正に無能な仕事ぶり。


 はあぁ……と、更に嫌そうに、ハーキンが息を吐き出していた。


「王国同士の戦争援助や兵士の援助ではなく、同盟国の支援でもないのに、個人的に、まして、ボランティアで義勇軍として参加した伯爵令嬢に向かっての――」


 不正行為、略奪行為、違法行為、契約違反、強制的な戦への参戦、礼も(わきま)えずに侮辱罪、不敬罪で問われてもおかしくない数々の非礼行為……。


「おまけに、最悪なことは……現地で駐屯していた王国軍の兵士達は、あの令嬢がいなければ、全滅であったかもしれない……など、もう……、あまりに目に余る行為の数々……」

「なん、と…………!!」


 まさか、自国の兵士たちが、他国から義勇軍としてやってきた伯爵家に対し――そんな卑劣な行為を働いていたなど露にも思わず、全員が絶句している。


「王国の恥さらしもいいところだった……」

「――――王国軍の指揮官は、どうなったのです?」


「もちろん、あの場の指揮官である中尉、及び、指揮していた上位兵士達は、捕縛、即座に処罰を受け、投獄されている。――だが……、その程度の処罰で拭いきれないほどの罪を犯し、あの令嬢に借りまでも作ってしまった……」


「――――だから、あの令嬢に――非礼な態度をさせても、許していらっしゃるのですか?」


 それにも何と言っていいのか、判らないものだ……。


 シーンと、嫌な沈黙が降りてしまった。


「不正発覚で呼びつけられた王太子殿下は、あの令嬢との話し合いの場で、兵士に紛れ込んでいた賊に、命を狙われかけた」

「なんとっ――!」


「だが、あの令嬢に、間一髪のところで、王太子殿下は命を救われ、代わりに、あの令嬢が毒を受けてしまった……。その事件で、令嬢が引き連れていた――彼女の精鋭部隊が、自分達のマスターを傷つけた賊など許しておかないと、まずは邪魔な部族連合の賊の排除をすると言ってな……。――あの令嬢の指示の元、信じられない話だが、南の戦を、滅茶滅茶に叩き潰してしまったんだ……」


「ご、冗談を……?」

「冗談なら、どんなに笑えたことだろうか……」


 それも、セシルが引き連れていた兵士など、護衛に付き添ってきた騎士達ばかりだ。おまけに――子供まで混ざった!


「あんな少人数で、徹底して、部族連合の賊を叩き潰してしまった……。――その後、令嬢は、ブレッカの戦争も、不正・不義、違法行為から諸共、ノーウッド王国の王宮には知らせるつもりはない、とおっしゃってくれたが……」


 セシルは、もう二度と会わないから、今回の(恥ずべく) 問題は不問にしてやる、と言った。


 だが、もし、ブレッカでの隣国に対する非礼や不敬が発覚していたのなら、ノーウッド王国とて、侮辱されたとして、今頃、アトレシア大王国を責めていたのは疑いようもなかった。


 国際問題、親善関係に亀裂さえ入っていたかもしれなく、王国を揺るがす大惨事にだってなりかねなかったはずだ。



読んでいただきありがとうございました。

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