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В.в ご冗談を - 03

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「こんな危ない場所に、私の付き人を呼び戻すなんて、そんな非情なことをするわけもないでしょう? それとも、権力を振りかざして、命令なされば? 言うことを聞かなければ打ち首、かしらね? アトレシア大王国の夜会にて、他国の貴族令嬢、不敬罪で処罰される、とか?」


「自覚があるようだ」


「あら? なんの自覚かしら? 不敬など働きまして? 最初から、()()()()()()()、話すことをお許しになったのは、どなただったかしらね? 私は、思ったままのことを、話しているつもりですけれど?」


 そんな意味で言われた言葉でないことくらい百も承知で、よくもまあ、取って付け加えたような屁理屈を、アルデーラの前で並び立ててくるものだ。


「夜会に着いたばかりで、すでに、王国内の貴族を二人も捕縛。随分と、タイミングがいいように、見えないでもないが?」


 ふんっと、伯爵令嬢が冷たく鼻で笑い飛ばした。


「まあ、脅しですか? ああ、怖い、怖い」


 一体、どこの世界に、来たくもない夜会に、無理矢理、連れて来られて、おまけに、その場で賊に襲われてかけているのに、それが、最初から仕組まれた陰謀?


 全く無関係の他国の令嬢が、裏で糸を引いた?


「随分、面白い言い分を聞いたものです。ふんっ。そんなくだらない戯言(ざれごと)を、考えるなんてね」


 その口に出されぬ言葉の続きが、まるで、幼児以下の愚鈍以外何者でもないわねと、完全にアルデーラを――いや、アルデーラだけでなく、そこに控えている全員を、侮辱している有り様が明確だった。


 アルデーラの冷たい表情の上に、ピリッと、眉間が揺れきつくしかめられていく。


「別に、そんな理由で投獄なさりたいのならなされば?」


 証拠もなにも無い。全く無関係の他国の令嬢を夜会に招待したのは、アトレシア大王国の方だ。


 今夜の夜会と、ヘルバート伯爵令嬢が揃った場で、賊が侵入したのは、あまりに偶然だったとしても、王国に全く関係も因縁もない他国の令嬢が、裏で糸を引いていたなど糾弾(きゅうだん)し、伯爵令嬢を捕縛・投獄などしたものなら、さすがに、隣国ノーウッド王国だって、黙ってはいないだろう。


 ノーウッド王国を通しもしないのに、全く、アトレシア大王国に関係もない伯爵令嬢を夜会に呼ぶほどの、重要な理由があったのか、と。


 それは、罪を(なす)り付ける為に、わざわざ仕組んだのか。

 それなら、ノーウッド王国を標的に――まさか、それで、国交問題にする為に、わざとに仕組んだのか。


 などと、最悪に、ノーウッド王国から警戒され、アトレシア大王国との国交断絶を宣言されてもおかしくはない。


 たがか伯爵令嬢一人の罪で、ノーウッド王国が、そこまでの最終手段を取るとは思えない。


 それでも、今回は誰がどう見ても、アトレシア大王国側に非があるのだ。


 その夜会に参加したというだけの理由で、他国の伯爵令嬢を投獄してしようものなら、その非道な仕打ちを――などと、そんな噂が、一気に他国に知れ渡ってしまうことだろう。


 王宮内の大広間に繋がる道を塞ぎ、おまけに、王宮内を警備している騎士達の目を(あざむ)いて、夜会に侵入してくるなど、内部犯の犯行以外に有り得ない。


 そんなこと、アルデーラだけでなく、目の前の伯爵令嬢だって、一番に理解していることだ。


 その賊を捕らえられたのは、認めたくなくとも、この目の前にいる伯爵令嬢のおかげだったのだから。


 だから、アルデーラが脅しをかけようが、そんな強気で、それ以上に、非礼に当たる行為をすれば、立場が更に悪くなるのは、アルデーラ達であることはあまりに明確だった。


「権力を笠に着て、威張り散らして好きになされば? そうでなければ、なんの為の権力なのか、分かりませんものねえ」


 さっきから、あまりに礼儀知らずな態度に、度を超え過ぎている口調に、明らかなほどの侮辱に、その度を超え過ぎた非礼を続ける伯爵令嬢に、その場の全員から、無言の怒気が上がっていた。


 全員が全員揃って、ギリっと、歯ぎしりが聞こえてきそうなほど、難しく顔をしかめている。


 あまりに腹の立つ扱いを受けて、アルデーラだって、こんな侮辱を受けたのは初めてである。


 だが、自分の怒りのままに伯爵令嬢を責めたのなら、それこそ、伯爵令嬢の思うつぼである。

 威張り散らすだけしか能の無い男、などと、問題解決どころか、更に、アルデーラの立場を侮蔑することだろう。


 アルデーラの口は、難しく真一文字に閉じられたままだ。だが、これ以上、伯爵令嬢のペースに乗せられないよう、鼻だけで長い息を吐き出していた。


「しばらくは、この王宮で生活してもらうことになる。もちろん、()()()として、不便などなく過ごせるよう、こちらも尽力を尽くすので」


 だから、投獄するのでもなし、監禁するのでもない。


 それ以上は、伯爵令嬢であろうとも、口を挟めぬ無言の圧と雰囲気で、アルデーラがこの会話を締めくくっていった。


「部屋までお送りしよう」


 その視線の先が、起立して黙って控えている――若い騎士の一人に向けられた。


「かしこまりました」


 若い騎士が頷き、その視線を伯爵令嬢の方に向けてくる。


「どうぞこちらに。お部屋まで、ご案内いたします」


 まだ若そうな騎士なのに、王太子殿下の私室のような部屋に通ることを許されて、おまけに、団長並の極秘の話し合いにも参加してきた騎士だ。


 まさか、こんな若さで副団長――並みの立場をもらっているわけでもあるまいに。


 セシルが無言で椅子から立ち上がった。


 そして、アルデーラに見向きもせず、挨拶もせず、さっさと動き出す。その後ろをすぐに、イシュトールとユーリカがついてくる。


「どうぞこちらへ」


 寄って来たセシルを前に、騎士が一緒に歩き出した。


 それからすぐに、その部屋からは、完全に伯爵令嬢の気配が消えていた。



* * *



 ギルバートがセシル達を客室に送り届け、そこを護衛させている騎士達に厳しい指示を残し、またアルデーラの私室に戻って来た。


 一礼して部屋に入って来たギルバートは、まだ難しい顔をしたまま、アルデーラが座っている椅子の方に寄っていく。


「客人はお部屋の方にお送りいたしました。扉の前に護衛を数名、その周囲一帯にも、十名程の騎士をおいております」

「ご苦労だった」


「客人は、食事は、一切、必要ない、とのことですが」

「それでよい」


 そんな条件にも、アルデーラは驚いている様子はなかった。


 ギルバートの眉間が微かに寄せられ、

「――――王太子殿下。先程の者達は、何者です?! あのような非礼を働くなど、他国の貴族であろうと、許されるものではありません。不敬罪も(はなは)だしいものだ」


 さすがに、王太子殿下であるアルデーラに対しての、あのセシルの非礼極まりない態度に、言動に、ギルバートがかなりの不快を表している。


 だが、アルデーラも――傍に控えている第一騎士団団長のハーキンも、難しく顔をしかめたまま、何も言わない。


 その様子が信じられなくて、ギルバートの眼差しが、自分の上官である、第三騎士団団長のヘインズに向けられる。


 そのきつい眼差しが、



「これは、一体、どういうことなのですかっ――!?」



と責めているのは間違いなかった。




読んでいただきありがとうございました。

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