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В.б 夜会へ - 07

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「では、確かめようか」


 王太子殿下の足の先が、デブ()を踏みつけていた。

 デブ()の股の間、いや、そこから少しだけずれた場所を、王太子殿下が問答無用の強さで押し潰す


「……っわぁ……っぅ……ぐぅぅぅ……!!」


 声にならない悲鳴を上げて、“デブ()”と呼ばれた恰幅のよい男が、体を床の上で上下に激しく揺らす。


 後ろ手で縛り付けられ、その短い腕が邪魔になって、更にまん丸いお腹を押し上げている醜い格好で、拷問のような痛みから逃れる術がない。


 グリッと、非情に、無情に、アルデーラの足が男の睾丸を圧し潰していく。


「まあ、随分と、興味深い尋問方法ですこと」

「一番有効的な手段なもので」


 セシルの皮肉をものともせず、セシルに向きもしないアルデーラが、冷たく言い捨てていた。


 セシルは、冷たく皮肉気に、口端を曲げるだけだ。


「……っぅ……ぐぅ……――!!」

「二度は言わない。この場で白状しないのであれば、先程の賊のように――二の舞にならないとは、保証できんな」


 ひぃぃぃっ……! と、デブ()の真ん丸の顔が一気に青ざめていた。


「わかったっ! わかったっ! 全部話すから、命だけは助けてくれっ――」


 グリッと、アルデーラの足が、更に、男の睾丸に食い込んでいた。


「………ぅぐっ……ァ#&★§*▼――――!!」


 声にならない悲鳴を吐き出して、デブ()の顔が痛みで歪み、その目が涙で潤んでいた。


「貴様、何様のつもりだ。いい気になるな」


 絶対零度とも聞こえそうなほど感情の機微もない、あまりに冷たい、突き刺すような低い声が出され、声も上げず、アルデーラの静かな怒りが男に向けられた。


「……っひ………すみま、せんっ! すみませんっ! ……どうか、お許し、ください……っ!」

「さっさと話せ」


 ひりひりと、身が(すく)むような感覚は、この場が殺気で溢れていたからだ。


 隠しもせず、平気で殺気を飛ばしてきて、嫌な動悸を促すような空気が、身体(からだ)も思考も強張らせていく。


 王太子殿下の殺気だけではなく、王太子殿下の周囲を囲む騎士達からも、冷たい突き刺さるような、そして息をも殺してしまいそうな、あからさまな敵意と殺気が上がっている。


 ひぃ……、ひぃ……ひっ……と、男の呼吸が上がり、意識していない――本能が、この場の震撼(しんかん)とする殺気を浴びせられ、血の気を奪っていた。


「……っひ……ひぃ……お、助けを……っ…………」

「さっさと話せ」


「……は、はいっ……! エリングボー伯爵が、持ちかけて来たんだ……。戦勝祝いで、王太子殿下の名声が上がり、また余計な貴族が、王太子殿下の方に成り下がる、と。それで、夜会を狙って、夜会を滅茶苦茶にすれば、名誉どころか、その立場も危うくなるはずだ、と――」


 まさか、その程度の自白だけで済まされると思っているのか。

 グリッと、冷酷に容赦なく、王太子殿下の足が股の間に食い込む。


「………ぅぐっ……ァア*▼#&――!!」


 息も切れ切れに、あまりに醜い真ん丸の体躯が、激しく上下している。

 パクパクと、陸に上がった魚のように、呼吸困難な顔が一瞬赤くなり、それから、真っ青に血の気が失せていく。


「それで?」

「そ、そ……っひ……やめ、てくれ……」

「それで?」


 容赦ない、冷酷な王太子殿下の責めは、止まない。


 うぐぅっ……と、デブ()が失神寸前だ。


「それで?」


 スッと、一瞬だけ重さが離れたような感触に、ひっほ……、はぁ……、ひっ……と、デブ()が一気に呼吸を取り込むように、その胸が上下した。――が、その動作で、またも激しく、咳き込んでしまっている愚鈍だ。


「それで? いつまでも、時間をかけないでもらおうか」


 時間の無駄だから、と口に出されない、あまりに冷酷な暗黙の言葉が、背中を凍り付かせるような冷たさだった。


 ひひぃぃっ……と、デブ()が、過呼吸で、呼吸困難に陥っていそうな勢いである。


「……べ、別に大掛かりなことをする必要はない。ただ、人質に上流貴族の女達でも取れば、王太子殿下も、その他の奴らも、身動きが取れない」


 まして、その場に騎士がいれば、必ず、女達をかばい、自分から人質になることを言ってくるだろう、と。


 なにせ、騎士など“紳士道”なんてくだらない考えを(かか)げてるから、女を見捨てる非道など、できもしまい。


「その騎士の一人や二人でも斬り殺せば、残りの貴族達も、賊の侵入が本気だとわかるはずだろう。それで、女達と王女の一人でもさらっていくのが、作戦だったんだっ――」


 口を挟ませる隙もないほど、与えないほど、デブ()が、それを一気にまくし立てていた。


「なにをデタラメをっ! 私は何も知らない。関与などしていない――」


「なにを言うっ! お前が、夜会の出入り口を封鎖している間、おれに、動かせる駒をくれ、と頼んできたのは、どこのどいつだっ!」


「私を(おとし)めるつもりだ! これは、誰かの計略だ。私は知らない――! ダル男爵の逆恨みだ――」


 見苦しいことこの上ない。


 最悪の状況に追い込まれて、互いに互いを(おとし)れようと、躍起になっているのだから。


 このまま踏み潰して、息の根を止めたいのは山々だが、その程度の罰で済ましてなどやるものか。


 足を外した王太子殿下が、薄っすらと――あまりに冷酷な微笑を浮かべ、デブ()を見下ろす。


 ゾワッ――と、一気に体中の産毛が逆立ったかのように、デブ()の全身が凍り付いた。


「…………ひぃぃ……っ! …………お助けを……!」

「ふっ。そんな義理が、どこにある?」


 あまりに冷酷な色を映した瞳なのに、その声色だけは乾いた音を出し、熱もなく、嫌な動悸が、血の気を奪い取るかのようだった。


「……ひぃぃ……っ……!」

「連れて行け。牢屋の最奥の牢でもあてがってやろうじゃないか。この私に仇をなした礼に、お前らを、しっかりともてなしてやる」


 その視線だけが動き、二人の騎士が、重たいデブ()の腕を引き、無理矢理、立ち上がらせる。


 もう二人が、暴れる最後の男がうるさくて、邪魔くさそうに、その足で男を気絶させていた。

 それで、あまりに無残な様子で、ズルズルと引きずられていく。


 王太子殿下が、後ろにいる騎士に顔だけを向けた。


「ご令嬢を私の私室へ」

「わかりました」



読んでいただきありがとうございました。

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