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В.а アトレシア大王国 - 02

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* * *



 アトレシア大王国は大国であるから国土が大きく広い。封建制の典型的な政治体制で、貴族を領主と立て、封土として領地を与え、広い国土を統治している。


 治世は穏やかで、現国王陛下の性格を表している――という表現はよくされるし、よく(ちまた)でも聞くものだった。


 それでも、どこの国とも変わらず、権力に()び、権力に貪欲な貴族はたくさんいる。


 その目に余るほどの貪欲さを隠しもせず、権力を独り占めしている勢力が、アトレシア大王国にはあった。

 “長老派”と呼ばれている、貴族の派閥があった。


 王国で続いている昔からの高位貴族がほとんどで、長きに渡る彼らの権力への強欲さ、傲慢さ、それらが積もりに積もって、今では、王族に匹敵するほどの富と権力を押さえているほどになってしまった。


 悪政だろうとなんのその。薄汚い貴族共が集まり、その派閥が肥大し、王宮内でも絶大的な権力を押さえている派閥だ。


 なにかと、王政・国政に意見し、政治の決定権だって、“長老派”の許可がなければ行使できないことも、何度もある。


 王政を取りながら、国王の権力も()められたものである。


 だが、その“長老派”に真っ向から対抗している派閥を揃えているのが、この王太子殿下であるアルデーラだった。


 幼い時より、“長老派”による腐りに腐った悪政・横暴を見て来ただけに、王族として、王子として、“長老派”に権力を握られている今の王宮の状態を徹底的に壊滅させようと立ち上がった、王太子殿下だった。


 その為、若くして、“長老派”に対抗できる派閥、権力、新興貴族達を引き入れ、そして、王国騎士団を作り上げた一人だ。


 だから、王国騎士団は、王太子殿下の直属の部下でもあり、王太子殿下が、唯一、自由に動かせる武力だった。


 この国の宰相であるヴォーグル侯爵ハラルドは、元々は中立の立場で、(まつりごと)に関わっていた。


 宰相を務めている間ずっと、今まで、なににつけても“長老派”の邪魔が入り、“長老派”が治めている領土でも悪政が止まず、その成り行きを見守っていた。


 だが、王太子殿下が成人すると同時に、王太子殿下が、真っ向から“長老派”を叩き潰す体制を整え始めたので、今では、宰相も王太子殿下の元で、“長老派”を真っ向から敵対関係とする、筆頭貴族となった。


 国の(うれ)いを払い、王政の立て直しを試みる王太子殿下に従う貴族達は、かなりいる。それと同時に、未だ、様子を伺い、状況を伺っている中立派もかなりいる。


「なるほど、王国軍の堕落(だらく)、兵士達の統率の欠如、兵力の低下。国境警備として、全く役に立ちませんね」


 分厚い報告書を読み終えた宰相が、ふむ、と表情も変えず考える。


 宰相の前にあるのは、ブレッカの戦の後、コロッカル領の領主に提出させた、ブレッカの王国軍の報告書だ。

 コロッカル領の領主は、元王()騎士団に所属し、師団長を務めいたほどの男である。


 アトレシア大王国には、王国軍が存在する。要所、要所に王国軍を配置し、特に、辺境やら国境近辺の土地を守らせているのだ。


 だが、王国内には、王国軍を管理し統治する総督や総司令官がいない。その為か、部署ごとに、地方ごとに、配置されている王国軍は、その場の指揮官が責任を任されていることが多い。


 その欠点と言うか、欠陥(けっかん)が――今回のブレッカでの最大の問題点として、浮き上がってしまったのだ。


 その他、重要な主要都市などには、元王()騎士団の騎士達も揃っていることが多い。コロッカル領の領主も、その立場だった。


 王()騎士団は、アルデーラが立ち上げた王()騎士団ではない。


 王宮騎士団は、“長老派”の息がかかっていて、ブレッカに駐屯していた王国軍同様、締まりのない、横柄で、貴族ばかりを相手にする、役立たずが揃った騎士団だった。


 だが、幸運なことに、地方を任されていたコロッカル領の領主は信用できる男で、アルデーラの味方の一人である。あの男がいてくれたから、ブレッカの国境だって、敵に落とされずに済んだのだ。


 その領主に、戦の後片付けをしている間、ブレッカの国王軍の現状を調査させ、その報告書をまとめさせていたのだ。


「ブレッカの国王軍を一から叩き直すとしても、時間がかかり過ぎてしまうでしょう。今は――そうですね。仕方がありませんが、国王軍で、ただ、ブレッカの“無人”を防ぎ、コロッカル領の騎士達で、コロッカルからの敵の侵入を防ぐよう警戒させましょう」


 現状では、ブレッカの()()()()を訓練し直させるほどの指揮官もいなければ、王国軍を指揮できる能力のある兵士もいない。


 だから、宰相の提案が最低限の予防策であるのは違いないのだったが、それでも、アルデーラも、その策にはあまり賛成しかねているようだった。


「王太子殿下も、ご無事の帰還でなによりです」


 それは皮肉か?


 あまりに淡々と、とてもではないが心配していた様子などなく――むしろ、王太子殿下の立場でありながら、戦場(いくさば)に、自ら参戦していってしまったアルデーラを責めているような口調だ。


 ブレッカに発つ前も、危険だからダメだ、とあまりに冷たく止められた。


 だが、王国軍の要請だけなら、アルデーラ自身もブレッカに発つことはなかったが、コロッカル領領主からの報告を聞いて、すでに最悪の状況になっていた事実を知ったから、アルデーラにもその選択がなかったのだ。


 ブレッカを攻め落とされてしまっては、本格的に、今度は、コロッカルで侵略戦争が勃発(ぼっぱつ)することは目に見えていた。

 そうなると、王宮からだって、近隣の領地からだって、援軍を派遣しなければならなくなり、かなりの被害と損害が出てしまっていたことだっただろう。


 本格的な戦の勃発(ぼっぱつ)だけは食い止めなければならなくて、それで、緊急で、アルデーラが出陣したのだ。


「王国軍の内情は判りました。ブレッカでの戦の報告書は?」


 そして、切れ者で有名な宰相だけに、王国軍の堕落だけの報告書で許してくれるはずもない。


「ハーキン」

「はい。こちらに」


 ハーキンは王宮に戻って来てから、ハーキンも、騎士団からの報告書をまとめていたのだ。だから、次の分厚い書類が、宰相の前に渡される。


 ペラ、ペラと、分厚い報告書を一枚ずつめくっていく宰相の手は止まらない。


 ペラ、ペラと、書類が次々に進んで行く。


 だが、一瞬――滅多にその冷たく厳しい表情を変えたこともない宰相が、眉間を寄せていたのだ。


「――――これは、何です?」


 ハーキンは――問題になる正にそのページに宰相がたどり着いてしまったので、気が重く、口も重く、次の言葉を出したくない……。


 だが、宰相はそんな甘い男ではない。


「――不正です」

「不正?」


 そして、その片眉だけが、不快そうに上がる。


 この顔をする時は、きまって(いや絶対に)、宰相自身が納得していない報告を聞いた時なのだ。だから、自分が納得するまで、納得できる説明を聞くまで、宰相は容赦がない。



読んでいただきありがとうございました。

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