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Б.д もう二度と会わない - 03

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 騎士団が弓兵(きゅうへい)として役に立たないと判断したフィロは、さっさと自分達の作戦会議に注意を戻す。


「本当なら、この(かど)の部分の裏に潜ませた弓兵(きゅうへい)で、敵の側面を狙いたかったのに。最初の丸い壁で敵兵の勢いを()ぎ、まあ、壁の後ろで伏兵が立てられるのなら、そこでかなり食い止めることもできるね。それでも、領門を突破して来る敵兵には、側面から撃ち落とし、最後には、落とし穴で殲滅(せんめつ)できる」


「弓兵の狙いは悪くないけど、弓を打てる奴がいなければ、話にならないな」

「そう」


 それで、ふむ、とケルトがフィロの書き込んだ図面を見下ろしながら、なにかを考え込む。


「串刺し――って、落とし穴で?」


 ケルトの質問にも、フィロが簡単に頷く。


「そう」


 昔からの付き合いだけあって、お互いに話も早ければ、理解も早い。


「それはいいけど、この(かど)を有効に使えないかどうかは、ちょっと考えてみるわ」

「わかった。時間はかけられないから、穴を掘ってる間は、外側に騎士団をずらりと並ばせて、威嚇(いかく)させるしかないね」

「そうだな」


 それで、今度は、フィロとケルトの二人からの視線を向けられ、王太子殿下の顔が嫌そうにしかめられる。


 まさか、この場になって、作戦に協力しないのか? ――と、二人からのあまりに冷たい侮蔑された目だけが、王太子殿下に向けられている。


 そう、何度も、何度も、繰り返さなくても、アトレシア大王国の王国軍は、“無能集団”で、“役立たず”だと、強調したいのは、理解した。


 それについては、弁明もなければ、弁解もない。


「――いいだろう」


「それから、僕達が指揮を取っている間、邪魔させないでくださいね。はっきり言って、これからの戦いは、時間が勝敗を決めます。邪魔されたり、指示を無視するような奴らは、速攻で、一番前の前線に送り出しますからね」


 小生意気で、一国の王太子殿下に向かって脅しをかけてくるなど、普通では許されない非礼。


 だが、嫌そうに眉間を揺らした王太子殿下だって、王国の恥さらしを自慢しに来たわけではない。


「話は聞かせてもらったが、戦はお遊びではない。我が騎士団に命を懸けるよう命令するのなら、それなりの勝機がなければ、ただの無駄死にだ」


「勝機があるから、わざわざ、手伝ってやってるんですけど」

「主の(かたき)合戦、ではなかったのか?」


 冷たく言い返されて、フィロだって、その目を冷たく輝かせる。


「そうだけど。それが問題ですか? こんな土地、さっさと手放したって、僕達には、痛くもかゆくもなんともない。さっさと、部族連合にでも取られてしまえば良かったものを。どうせ、マスターがいなければ、当の昔に全滅していた場所だ」


 痛いところを突かれ、それに対しては言い返しができない。


「やる気がないなら、さっさと帰ればいいでしょ。僕達には、別に、王国の騎士団に頼らなくても、やれることはある。ただ、時間が少しかかってしまうだけの話だ」


 だから、今は騎士団がいるから、肉体労働に時間をかけずに済み、手間が省けるから、騎士団を使ってやるんだ――とでも聞こえそうな偉そうな口調だ。


「どうするんです? 僕達は、このままマスターを連れて、さっさと、この地を離れたっていい。王国には、なんの義理もないんですから」


 生意気で、偉そうで、非礼をわきまえない立場でも――戦を経験したこともないような子供が、本気で部族連合を叩き潰す気でいる。


 それも、聞き慣れない戦術を使って。


 だが――王太子殿下も認めるのは(ものすごく、最高に) 嫌なのだが――話を聞く限りでは、子供達が作戦会議で話し合っている戦術は、確かに、理に適っているのだ。


 今は、南側の王国軍は、ほぼ壊滅状態に近く、元々、“無能集団”で烏合(うごう)(しゅう)なだけの集まりだから、これからの部族連合と本格的な領土争いになった場合、絶対に勝ち目はない。


 だが、アトレシア大王国にとっても、この土地を奪われるわけにはいかないのだ。


 人数が足りず、それでも地を生かした戦術で、攻防共に、接戦でもかなり有利になれる作戦を持ち出してくるような――あまりに計り知れない子供を前に、王太子殿下も、この機にすがるしか、方法は残されていないのだ。


「――作戦を実行するに当たり、騎士団の騎士達には、指示に従うように言いつけておこう。ただし」


 そこで、王太子殿下も強調する。


「君達の無茶に、騎士達を付き合わせるつもりは毛頭ない。そう判断した時点で、私がその指示を無効にするということを、忘れないでもらおうか」


「いいでしょう。ギリトル側のことは知りません。今は、中央寄りの穴から、敵をおびき寄せる作戦ですから」


「穴が見つからなかったら?」

「その時は、ギリトル側に同じ罠を張るだけです。そちら側で、おびき寄せればいいだけの話です」

「いいだろう」


 話はそこでついたようだった。


「じゃあ、待ってる間、できる限り木を切り倒そう。騎士団が前方にいるから、その後ろで木を切り倒せば、左程、問題は見られないと思う」

「いいぜ」


 じゃあ、行くか――と、フィロを抜かした子供達全員が、立ちあがった。


「中央で残ってる100人の騎士達は、今は肉体労働に使います。時間が限られてますから、できる限り、さっさと片付けてしまわなければ」


「必要とあらば、待機している前方200の騎士から100人を引いて、必要な労働に回すべきだろう。部族連合が侵入してきた場合、即座に攻撃に加わることを前提に」


「わかりました。じゃあ、騎士達に指示を出してください」


 わかっている……。


 その仕事は、騎士団団長のハーキンの仕事だ、とでも言いたいのだろう。


 ものすごい眉間に(しわ)をよせ、一切口を挟まなかったハーキンも、椅子から立ち上がっていた。



* * *



丸馬出(まるうまだし)枡形(ますがた)虎口(こぐち)ですか?」

「そうです」


 ひと眠りして、目を覚ましたセシルは、借りているベッドの上で、フィロからこれからの作戦を聞いてた。


 フィロが今回提案した戦術と作戦は、セシルが、以前、フィロに教えてあげた()話の例題を使用している。


 ()――この世界ではない、前世(または現世なのか) の戦国時代、お城の護りを強化する為に工夫された仕組みだ。


 セシルは、子供達に、たくさんの戦術を教え込んだわけではないが、それでも――自分の記憶で思い出せる、記憶に残る武将達の戦の歴史や戦術など、思い出せる限りで、子供達に話して聞かせていた。


 そんな状況にはなって欲しくはないが、それでも、ただの知識としてでも、学べることはあるかな、との思いで。


 お城や陣を護る為に、こういった工夫をしたり、敵を攪乱(かくらん)させたり、ちょっとした工夫や仕掛けでも、敵の隙を突くことができるのですよ――と言った感じで、教えていた()話だ。


 だが、フィロは子供達の中でも一番に頭の良い子供だっただけに、その話をした後でも、よく、セシルと二人きりの時に、戦術や戦法の話し合いをして、有利な点や不利な点、改善策など、色々と、ゲーム感覚でいつもやり取りをしてきた。


 だから、戦の経験がなくても、実戦経験が少なくても、フィロはただの子供ではなかった。



読んでいただきありがとうございました。

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