これは何ですか? - 06
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「図書館に置かれている本であれば、誰でも好きなものを借りることができます」
「誰が、借りるんですか……?」
「誰でも借りることができます。領地の人口はそれほど多いものではございません。ですから、図書館で働いている従業員は、領民の顔を覚えています。身元証明をせずに、図書カードを作ることができますので、領民であれば、誰でも本を借りることができます」
「図書、カード……?」
いや、もう……意味不明な単語続きで、理解不能に陥っているのだから、これ以上の質問は、更なる疲労を呼び起こすだけなはず……。
「その、領民は……その、読み書きなど、できるので……?」
「ええ、できます」
あまりにあっさりした返答に、ギルバートとクリストフの二人とも絶句していた。
「できる、んですか……?!」
「はい、できます。元々、この領地にいた最初の領民達は、読み書きができる者と、いない者もいますが、その後にやって来た領民達は全員、読み書きができます。子供達は5歳になると、小学に行くことができます。小学では、読み書きと初歩的な計算を教えてくれますので、領民達は全員、読み書きができます」
「…………………………………………」
嬉しそうに、自慢して説明してくれる案内役の騎士の前で、すでに、ギルバートとクリストフはあまりの驚愕で、完全に言葉を失っている。
この時代、貴族なら読み書きを教わる機会はあるが、平民はそうではない。仕事の関係で初歩的な読み書きを覚えるようになる場所はあっても、全員が全員、「小学」 などという高等な場所に行けることは決してない。
だから、ほとんどの平民など、読み書きや計算などできもしないのだ。
なのに、なぜ、こんな小さな町の領地では、領民全員が貴族でもなんでもないのに読み書きができて、領地の子供達は「小学」 などという、貴族しか許されないような教育制度に参加することができるのだろうか……。
もう、なにもかもが、あまりに謎過ぎて、自分達の知っている常識が当てはまらなくて、脳ミソが破裂しそうである。
「これは何ですか?」
「コニュニティーセンターです」
「コミュ……センター?」
「「公民館」 と言えば、お分かりになるでしょうか?」
いいえ……、判りません。
現代の「公民館」 という概念だって、この世界にはありません。
「これは何ですか?」
「領地内の移動用に作られたバス停です」
「バス……てい?」
「はい。領地内の移動には、領民達が利用できるように、公共の幌馬車が定期的に運行しております。それを、この地では「バス」 と呼んでおります。このように、通りに設置された小屋は、「バス」 となる幌馬車が停車する駅になります。領民達はこのバス停で次の「バス」 を待ち、少々、遠い場所への移動も可能になってきます」
馬車や馬がないから移動手段がない、なんてそんな不便さを、いつまでも放ったらかしのままにしているセシルではない。
移動が不便だったり、不可能なら、さっさと移動手段と方法を作れば済むことだ。
だから、「バス」 という交通手段を提供して、今は幌馬車で移動をしているが、いずれは、技術や知識が発展したら、大型の移動車を作ることが可能になってくるかもしれない。
そんな未来の可能性も考えて、領地内の移動の幌馬車は「バス」 と呼ばれているのだ。
読んでいただきありがとうございました。
Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)
N lafi su kɛ ndɛ akpasua sɔ’n yó amun fɛ.





