これは何ですか? - 03
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今まで生きて来た中で、こんな高度な仕組みをした装置など、二人ともお目にかかったことがない。
「アクアダクト」 と言うらしい水路は、長い石造りの水路で、所々に木で補強された部分が目に入る。
残念なことに、完全なる石の「アクアダクト」 を設置するには、その技術が足りず、石だけではすぐに崩れやすくなり、何かの拍子で壊れてしまう恐れがある為、その補強には、木で石の水路を留めている場所が何か所もあるのだ。
それで、見た目が……少々でこぼこになってしまい、あまり景観が良いものではなくなってしまったが、それはそれで仕方がない。
なにしろ、この世界初の「アクアダクト」 建築であっただろうから……。
セシルにとっては、記憶に残る古代の長い精巧な「アクアダクト」 のイメージが強く残っていたので、出来上がって完成した「アクアダクト」 を見て、少々、落胆してしまったのは、言うまでもないが。
「これ……が、“あくあだくと”ですか?」
「はい、そうです」
ギルバートの身長くらいある高さで設置されている石の水路だ。
サッと見渡す限りでも、ものすごい長さの距離が続き、その中を水が流れていくらしい。
数メートル先の方では、水路の高さが低くなり緩やかな傾斜になっているだけだ。
それで、興味心から、数メートル先まで歩いてみて、高さが低くなった水路を覗いてみることにした。
ちゃんと、水が勢いよく流れて行っている。
「すごいな……!」
「ちゃんと勢いがあるんですねえ」
緩い傾斜があっても、水渡しの為に長い水路を作ったので、水車の高さも高めにし、その天辺から水が落ちる反動と、木の台から石の水路側に移る時に、急斜面で水を落とす勢いで、遠くまで水を流し込んでいくのだ。
その設計だって、四苦八苦して、思考を凝らして、何度も何度もセシルが試した成果だ。
「こんな装置が王都にあれば、街の隅々まで水を運ぶことは簡単になるだろうに……」
「確かにそうですね」
アトレシア大王国の王都で居住している住民達は、集合水場まで水を汲みにいかなければならない。だから、民達は朝早くから大亀や壺を持って、水を汲みに行くのがまず一番初めの仕事となる。
井戸を見つけた区画もあるが、そう言った場所でも、集合の水場となる為、近隣からの住民達が、水を汲みにやってくるのだ。
「水車」 の見学は、随分、為になるものだった。
二人揃って素直に感心をしていたなど、前代未聞のことではないだろうか。
次の見学場所に移動した。
「これは、何ですか?」
「風車です」
そして、またも“回転”する装置だ。
見上げる上空には、大きな風車の羽が回転している。
「風車は風の力を利用し、あの大きな羽が回転しています」
「はあ……、すごいですね……」
「ほう……、すごいですねえ……」
またも、自然の力を利用した賢い装置だ。回転している羽が大きいから、「水車」 よりももっと強い力の回転が利用できそうな装置である。
「これも……小麦の脱穀用に?」
「いいえ。今の所、風車はお試し用で一台建設されただけですので」
「お試し用……?」
えっ……?
“お試し用”で、こんな大きな、それも、ものすごい凝った仕組みの装置を建設するんですか……?
ただの“お試し用”で……?
自分達には到底理解できない質問ばかりが、グルグルと頭の中で浮かんで来てしまい、頭痛を押さえつけるのではないが、無意識で、ギルバートが自分の頭を手で押さえつけてしまっていた。
「……これは、何ですか……?!」
「果樹園内の果実を運搬するトロッコです」
「……とろ、っこ……?」
またしても、意味不明な単語が出てきてしまった。
「はい。本来は、鉄を使用しレールを作ることが最善であるそうなのですが、さすがに、果樹園内全部にレールを設置するだけの鉄がございません。ですから、今は、レールは木で作っております。気温の変化や、季節の変化で、少々、木の膨張や縮小がみられ、レールのこまめな確認が必要となってくることが、少々、欠点となっておりますが……」
それでも、木のレールの上を走るトロッコは、大いに役立っている装置だ。
領地の果樹園は、広大な土地に広がっている。セシルが領地にやって来た時から、たくさんの果樹を植えさせた結果が実り、今では、かなりの生産量が期待できるようになったほどだ。
それでも、その広大な果樹園で、果樹の採集を人力だけに頼っていると、ものすごい人員が必要となってきてしまう。コトレアは、そこまで人口の多い領地ではないのだ。
読んでいただきありがとうございました。
Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)
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