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なんなんですか - 02

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 人質として捕らえられ、剣で脅されて下を向いている令嬢は、恐ろしさで怯えているのか、そうでないのか、遠巻きからでは全く判断することができなかった。


 なのに、ふと、奇妙な動きを見せる令嬢の行動に、あの場の全員が息を潜め、令嬢の動きを凝視していた。



――ドレスを、脱いでいる?



 謎の行動だった。


 あっ……と思った瞬間、人質に捕られていた令嬢が――何と言うことか、あの賊を殴り倒してしまったのだ!


 いや……、剣で殴りつけたのは、令嬢の護衛の一人だったが。

 あまりに予期せぬ行動だった為、ギルバートもクリストフも、一歩出遅れてしまったのだ。


 その後の令嬢の行動だって、あまりに驚きなものだった。


 ギルバートが賊を相手にしている間だって、どこにいようと、必ず、あの令嬢の動きを視界の片隅には入れていた。


 なのに、会場を走り抜けて行って王国の貴族を蹴り飛ばした光景を目にして、さすがに、ギルバートだって目が点になって唖然としてしまった。


 一瞬、ギルバートの集中が削がれてしまったが、すぐに、我に返ったギルバートは、残りの騎士達と共に、その場にいた賊達を全員押さえつけることに成功した。


 捕縛用の縄がないので、王国騎士団の騎士達が賊を床に押さえつけている状態だ。

 だが、ギルバートはその役目をする必要がないようなので、チラッと、会場の片隅にその視線を向けてしまう。


 驚くことに、あの令嬢が蹴り飛ばした貴族――あれは、エリングボー伯爵とダル男爵――は気絶している様子のまま、令嬢の護衛二人にズルズルと引きずられて、中央に連れていかれている場面だった。


「ギルバート様……」


 近くに寄って来たクリストフだが、さすがに、この状況が理解できないだけに、次にどう動くべきかクリストフだって困惑しているようだった。


「手を出すな」

「ですが……」


 中央に戻ってきたあの令嬢の(そば)には、王太子殿下が護衛を引き連れて近寄っていた。


 王太子殿下の傍に集まっている騎士団の団長・副団長達は、全く状況が呑み込めないまま、口を(はさ)むことも許されない。


 なのに、謎の令嬢と王太子殿下の二人だけで、全く言葉を交わさないのに会話を済ませているような状況にも、更なる困惑を生んでいた。



――一体、なんなんだ、この令嬢は……?!



 あの場の誰もが、無言でその質問を繰り返していたことだろう。


 賊を捕縛したばかりだと言うのに、謎の令嬢はそれだけで留まらず、賊を尋問する気なのか――と次の行動を判断しようとしたその場で、賊の男を刺し殺してしまったのだ!



――なにをっ!!



 咄嗟に、ギルバートの左手が腰にぶら下がっている剣の(つか)に届いていた。

 その動きは、ギルバートだけではなく、その場に残っていた二人の副団長も同じだった。


 全く予想もしていなかった行動に、全員が絶句していた。

 全員が、一斉に、謎の令嬢を全身で警戒し出していた。


 第一騎士団の団長は、目立たないように、気配を殺しながら、王太子殿下のすぐ後ろに移動していた。


 どんな些細な動きだろうと、賊を刺し殺したあの剣が王太子殿下に向けられたのなら――即座に全員が動けるように。

 全員が殺気を潜ませ、その警戒も露に身構えていた。



「……ひぃ…っ……ぃぃ――助けてくれっ! ――おれは何も知らん……。裏切ったのはエリングボー伯爵だっ……おれじゃない……っ!」



 全身全霊で警戒を呼んでいたのに、たったその一言で、その場の騎士全員の殺意が、寝転がっている貴族二人に向けられたのは言うまでもない。



――こんな所に裏切り者が!



 なぜ、無関係の他国の令嬢が裏切り者を知っていたのか、今はそんなことが問題ではなかった。


 目の前にいる敵が王太子殿下を狙った事実だけが、疑いようもなく、これからの長い夜を連想させた。


 賊だけではなく、裏切り者の貴族二人の尋問で、絶対に裏の首謀者を見つけ出さなければならないのだから。


 ――とは、意気込んだものの、ギルバートは賊の尋問をするどころか、人生最大とも言える憤慨を見せて、抑えつけられないほどの怒気をどうにか抑え込むことに必死だった。



――ふざけているっ!



 その一言だった。



 ふざけているっ……!



 さっきから、その一言ばかりがギルバートの頭に浮かんできては、更なる怒気を呼んでしまう。


 どんなに礼儀のなっていない貴族だろうと、貴族令嬢だろうと、ギルバートの人生で、これだけあからさまに王族を侮辱する人間がいたなど、あまりに信じられなく、沸々と上がって来る怒気だけが止められなかった。



――不敬罪・侮辱罪程度でなど、全然足りぬではないかっ!!



 ギルバートは騎士団に入団してから、王族であるとか、王子殿下であるとか、自分の立場をひけらかすことをしたことがない。


 ギルバートの騎士団入団からしてあまりに異例で、むしろ特例なケースであったせいか、王族だからと依怙贔屓(えこひいき)されて騎士になったと、ギルバート自身の力量を全く受け入れられていなかったからだ。


 だから、残りの騎士達と同じように仕事をし、雑用も済ませ、王族の立場を乱用したこともなければ、ひけらかしたこともない。


 それでも、長年、王族として、王子殿下として育てられてきた習性が、あまりに横柄で非礼を繰り返す令嬢の態度に我慢がならなかったのだ。



読んでいただきありがとうございました。

Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)


আশা কৰো আপোনালোকে খণ্ডটো ভাল পাব।

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