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* なんなんですか *

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大分、投稿が遅くなってしまいました。まだまだサイドストーリーは続きますので、よろしくお願いします。

シリーズ: Part1

場所: 王都の宿場にて

時: 監禁後、王宮を出て王都に向かったその夜



 ギルバートとクリストフはあてがわれた一室に泊まることになった。

 部屋に足を一歩踏み入れて、後ろのドアを閉めた二人の間に、一瞬、シーンと沈黙が降りていた。


 狭い部屋にはベッドが一つ。

 たった一つしかない。


 それも、一人がギリギリ寝られるような細い一人用の狭いベッドだけだ。


 そうなると、もちろんのこと、ベッドは王子殿下であるギルバートが寝る場所となる。クリストフは、ギルバートの付き人で部下であるので、ベッドでは寝れないことになる。


「床で寝たことはありませんが、まあ、仕方がありませんね」


 野営の訓練の時は、騎士達が全員、仕方なく地面の上に毛布を敷いたような場所で眠らされた経験はある。


 あれも、騎士の訓練の一つで、野営一つごときこなさなければ騎士としては認められない、というような風潮に乗って、なんだか毎年恒例行事ではある。


 地面の上で寝たからと言って、それで、経験値が上がる訳でもなし。なにか特別な能力を身に着ける訳でもない。


 ただ、貴族が多い“お坊ちゃま”に試練を課させて、騎士としての忍耐力を確かめるようなテストに近い。


 それでも、王子殿下であるギルバートでさえも、もちろん、その野営訓練には参加した。王子だからと、特別扱いを受けたくないギルバートは、文句も言わず、他の騎士達に混ざって、ちゃんと野営訓練を済ませてきている。


 木の板の床よりは、地面の方が多少は柔らかさがあったのだろうか。地面でも硬いと思っていたが、さすがに、さらし板の床は、座っていても体にきついものがある。


 そうなると、狭い部屋の角で、ドアと壁に寄りかかって寝た方が遥かにマシなのではないだろうか。


 そんなことを無言で考えながら、ジーっと、壁と睨みっこしているクリストフは、きっと今、隣の部屋で同じように寝る支度を済ませているある人物の顔が、ふと、頭に浮かんでいた。


「――あのご令嬢は、一体、なんなんですか?」


 クリストフの呟きに、着ていた洋服を脱いで、簡単なシャツのようなトップに着替えたギルバートがクリストフを振り返った。


 誰のことを言っているんだ? ――と聞き返すほど、ギルバートも馬鹿ではない。


 クリストフが無意識で口に出した相手が誰なのかは、ギルバートだって、すぐに理解している。


「あのご令嬢、一体、なんなんですかね」


 それを口にして、その事実が不快だったのか、理解できない状況が嫌だったのか、微かに顔をしかめたクリストフがギルバートを振り返る。


「…………………………」


 そして、ギルバートは返事をするでもなく、ただただ無言だ。


 出会いは、(ものすごい) 衝撃的、である。

 初っ端から、(ものすごい) 奇天烈なドレスを着込んで、夜会に参加したご令嬢だ。


 見たこともない、全身真っ黒なドレスを着て、あまりに奇妙(異常) な真っ赤なバラの飾りがついたドレスだ。


 真っ黒に、真っ赤。


 そして、顔を隠してしまうほどの大きなバラの飾りが、胸――いやいや、上半身の首下に飾られていたようなものだ。


 あの時のギルバートだって、さすがに唖然としてしまって、口を開けたまま、あまりに奇妙なものを見て、あの場で立ち尽くしてしまったほどだった。


 王太子殿下への挨拶を済ませて会場の端の方に進んで行ったが、あの場に参加していた全貴族が、その後ろ姿を目で追っていたのは、言うまでもない。



――なにか……不吉な塊が、動いている……。



 ギルバートは騎士団の副団長として夜会に参加していたから(王太子殿下からの命令で、護衛の仕事ではない)、王太子殿下が座っている壇上近くに控えていた。


 それで、気にしたくはなかったのだが、それでも、()()()()不気味な塊(一団) の姿は、嫌でも視界の片隅に入ってきてしまっていた。


 その後すぐに賊の侵入だ。

 そして、その賊の一人に向かって進んで行く令嬢の姿を捉え、ギルバートだって驚いてしまったものだ。



「なにを……!」



 馬鹿げた行動を……だったのか、ふざけたことを……だったのか。


 一瞬、あまりに驚いたギルバートだって、その一言を口に出してしまいそうだったのだ。

 すぐに、間近で控えていたクリストフがギルバートの背後にやって来た。


「ギルバート様」

「まだ、動くな」

「ですが……」


 その会話も終わらないうちに、今度は、あの令嬢が人質に捕られてしまったのだ。


「まずいですね」

「わかっている。隙を見て、賊を捕らえるぞ」

「わかりました」


 幸いなことに、アトレシア大王国は“力”を象徴する国家だ。貴族男児であれば、誰でもある程度、剣技を身につけなければならない教育がある。


 だから、あの場に参加していた大勢の貴族達の間でも、動揺してパニックしている貴族達もいれば、その反対で、隙を見て、いつでも動けるように、息を殺して状況を判断していた貴族達もいるのだ。


 夫人や令嬢達を護れる程度の剣技は、あの場にいたほとんどの貴族男児が身に着けていたのだ。

 騎士ではなくても、数でかかれば、賊の捕縛はできたはずだった。


 人質を()られていなければ――



読んでいただきありがとうございました。

Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)


Հուսով եմ՝ սերիան ձեզ դուր կգա։

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