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EPILOGUE - 03 (セシルの歴史教室:大晦日)

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やはり、最後のエピソードは”セシルの歴史教室” で締めるべき! なんて?

「ええ、そうです。兄上にしてみたら、コトレアがアトレシア大王国に加入して、王国の一部となったのですから、これから――まあ、大義名分なしに行き来が可能になって良かった――なんて、考えていると思うんですよね」


「ええ……? そう、でしょうかしら……」

「ええ、たぶん、その線が強いんじゃないかなぁ、なんて」


 なんて……どころか、たぶん、()()その理由以外ないのではないか、とさえ思えてしまうギルバートだ。


 黙々と、自分の食事を平らげているクリストフも、無言でギルバートに同感だった。

 たぶん、この中で、コトレア領がアトレシア大王国に加入することになって(大いに) 喜んでいるのは、あのレイフ殿下だろうなぁ、と……。


「その……ような、理由があったのかもしれませんが、それでも、アトレシア大王国からの多大な好意のおかげで、コトレア領は無事ですもの。国王陛下にも、宰相閣下にも、心からお礼を申し上げたく思っております」

「そうですか。それなら、新年が明けて――たぶん……、婚儀を終えてから、ではないでしょうか」


 最後の一言で、ギルバートは少し照れているようだった。


 今、思い返せば、今年の一年もアッと言う間に過ぎてしまった。目まぐるしく、息をつく暇もないほど行事が満載で、驚きがたくさんで、気が付けば、もう、一年最後の大晦日(おおみそか)を迎えている。


 新年初っ端から、ギルバートがコトレアにやって来て、セシルに求婚してくれた。それから、あっという間に婚約が決まり、婚儀が進められて、瞬く間に、セシルはギルバートの婚約者となった。


 そして、今年最大のイベントであるコトレア領10周年記念の豊穣祭。


 超多忙の毎日で、おまけに予定もしていない()()()お荷物が混ざって来て、セシルの周囲ではどこもかしこもてんやわんやだった。


 怒涛の嵐を乗り切ったと思いきや、近隣での天災で、これまた予定にもない救済活動で追われてしまった。


 その後からはドレス選びに、アトレシア大王国への(民族) 大移動に(大) 引っ越し。

 今だって、アトレシア大王国の習慣やら、規律やら、マナーを学ぶことで大忙し。息をつく暇もないほどだ。


「多忙な……一年、でしたわぁ……」


 妙に、心が籠っているような口調に、はは……と、ギルバートも、少々、同情めいた空笑いが上がってしまっていた。


 ずっと思っていた、ずっと恋焦がれていたセシルと婚約できた今年は、ギルバートの人生の中でも、一番と言っていいほどの最良の年となった。

 こんなに嬉しさが止まない一年はないといほどの、満足できた一年だった。


 ただ……セシルの立場や状況にしてみたら、うん、きっと大変な一年だったことだろう……。疑いようもなく。


「婚儀……を終えれば、セシル嬢にも、少しリラックスした時間を送ってほしいです……」

「ありがとうございます、ギルバート様。私も、毎回、毎回、気力と根性だけで突っ走っているのも無理があると思いまして、そろそろ、スローダウンすべきだろうなと考えていたところなのです」


 そして、失礼ながらも……はたと、ギルバートの頭によぎったことがある。



――このセシル嬢が、スローダウン……なんてできるのだろうか……?



 いやいや。さすがに、それは失礼な考えかもしれない。


 そう、自分に叱咤しているギルバートの周囲で、その場の全員も、実はギルバートと全く同じことが頭に浮かんでいたなんて、誰が知り得ようか。


「ああ、マスター。そろそろ、時間になりました」


 懐中時計を取り出したフィロが、それを口に出した。


「あら、もう、そんな時間なのですか? 早いですわね」

「そうですね」


 そして、フィロは、特別、セシルに向き直ることもせず、ただ、懐中時計を見下ろしている。


「では、カウントダウン。――10、9、8……4、3、2、1。――新年になりました」

「皆、新年おめでとう。どうか、今年も良い年を過ごせますように」

「「新年おめでとうございます、マスター」」


 コトレアからの全員は嬉しそうに新年の挨拶を済ます。


 その光景を見ているギルバートも、自分もセシルに向かって新年の挨拶を済ませるべきなのだろうか、と考えている。


「ギルバート様」

「はい」


 そそっと、セシルが少しだけギルバートの方に近寄って来て、そのまま顔を寄せてきたセシルの――唇が、そっと、ギルバートの頬に届いた。


 ぱちくり、と大きな瞬きを一度したギルバートが、その場で硬直している。


「身内や親しい者の間で、このように、新年の挨拶をしているのです」

「――それは、残りの者達、にもですか?」

「いいえ、さすがに、それは」


 それを聞いて、ものすごく安堵するギルバートだ。

 だが、すぐにゆるんでしまう口元も、顔の表情も、自分を止めることができない。


「……ありがとう、ございます」

「今年も良いお年になりますように」

「ありがとうございます。すごく……嬉しいです」


 豊穣祭での『祝福』を受けた時だって、ギルバートは幸せを感じて、あまりに嬉しすぎるのに、今年は、一年の始まりから、大好きなセシルから新年の挨拶を受けた。


 もう……初っ端から、最高の気分で、この一年が最良の年になるのは目に見えているじゃないか。


「昔は、シリルもよくコトレアで年越しを迎えていたのです。ですから、その時に、新年の挨拶に、と」

「そうだったのですか」

「これからは……ギルバート様と一緒に、こうして新年を迎えることができますね」


 なんと……嬉しすぎる発言だろうか。

 新年早々、にやけ顔が止まらないギルバートだ。


「これから、どうぞ、よろしくお願いいたしますね、ギルバート様」

「私の方こそ、よろしくお願いします」





 そして、数週間後には、ギルバートの臣籍降下と新爵位授与式が待ち構えている。


 来月初めには――とうとう、二人の結婚式だ。

 もう、本当に、あとわずか。


 独身最後の年を、無事に終えました。これから、また、新しい生活が始まります。

 セシルの新たな道が拓けていきます。


 ずっと、これからも進んで行く為に。

 最後まで生き抜いて、生き残る為に――





 そこで、ちょっと歴史の雑談なんて?


~*~ セシルの歴史教室:大晦日(おおみそか) ~*~

 大晦日(おおみそか)。New Year’s Eve ですね。

 おおつごもり、とも言います。


 (つごもり)とは、陰暦(いんれき)または太陰太陽暦(まあ、日本の旧暦ですね) で、月の終わり、30日のことを言います。


 「つきごも(月隠) り」 の音変化で呼ばれるもので、月が徐々に隠れて見えなくなることを意味しています。


 旧暦では、月の最後の日(29日や30日)、晦日(みそか)です。


 月命で、新月((さく))から始まって、三日月(みかづき)、上限の月(7~8日頃)、十三夜、望月(もちづき)(満月)、十六夜(いざよい)立待(たちまち)(づき)、下弦の月(22~23日頃)で、そして、(つごもり)(29~30日) です。


 それで、一年の終わりの晦日(みそか)に「大」 を付けて、「大晦日(おおみそか)」 と呼ばれるようになりました。

 現在では、グレゴリオ暦の12月31日を指します。


 大晦日(おおみそか)の前日は、小晦(こつごもり)と呼ばれていました。グレゴリオ歴では、12月30日のことですね。


 昔の人達は、月になぞらえる表現が好きでしたね。現代語は、あまりそういった表現をしないことが多い気がするので、こんな月の表現も風流だなぁ、なんて思います。





 そんなこんなで、ちょっと歴史雑談でした。

~*~~*~~*~~*~~*~~*~~*~


読んでいただきありがとうございました。Part3も無事に終えました。長かったのか、短かったのか、アッと言う間でした。お話の流れから行くと、Part3でセシルの独身時代は終わることになります。次からは、結婚生活編? また新たなキャラも登場してきます(し過ぎてしまうかな……?)。Part4に向けて、少し時間を置こうかなと考えています。。頑張ってよりよい面白い作品を書く為の準備期間と充電期間にしたいと思います。

その間、何点かのサイドストーリーを投稿する予定ですので、ご期待ください。

では、また、本編のPart4にてお会いしましょう。


Enkosi ngokufunda le noveli

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