Е.д 楽しみ - 06
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「第二王子殿下――ああ、いえ、宰相が、「コトレア領には、たとえ仕事を放り投げてでも、視察に行く価値がある。それをしなければ、外務大臣だろうと、国の発展は遂げられない」 と、豪語されましてね」
「まあっ……」
あのレイフは、随分、セシルの領地を気に入ったようである。
「そのように……おっしゃっていただき、とても光栄ですわ」
ハロルドは、座っていても、その瞳に隙のない男性だった。
以前は、王国の宰相を務め、内政を一手に仕切っていたほどの敏腕なのだから、隙の無い瞳や所作は――ある意味、不思議はなかった。
ハロルドはその瞳を少し細め、
「ご謙遜なさらなくとも、お噂は兼ねがね、伺っております」
「第二王子殿下からですか?」
「ええ、まあ」
曖昧な口調と返事で、セシルも、ハロルドが以前から、セシルの領地やセシルのことを探っていたのはすぐに気が付いた。
まあ、王宮内でも、王国内でも、セシルはあれだけ派手に暴れまくったのだ。アトレシア大王国側からしてみたら、セシルは全く見知りもしない他国の貴族令嬢で、あまりに突拍子もない行動をする“じゃじゃ馬”的な存在ともとれる令嬢だ。
それからも、国王陛下であるアルデーラも、おまけに、使者として飛ばされた第三王子までも執着してみせるものだから、ハロルドとて、(個人的に) 独自の調査をさせていても全く不思議はなかった。
「婚儀を終えて、次に領地に戻られる時、是非、ご一緒させていただければ、と」
「それは、構いませんが……。どのくらいの滞在を、ご希望でしょう?」
「今の所、一週間ほどできればよろしいのですが」
「そうなると、移動もいれても、三週間程にはなってしまいますが、よろしいのですか?」
「ええ、全く問題ありません」
なぜ、そこまではっきりと断言できるのか、セシルもギルバートも不思議そうだ。
ハロルドの口端が薄っすらと(悪魔の笑みのように) 上がる。――なぜ、ここで、ゾワッと、悪寒が襲ってくるのだろうか。
「ええ、全く問題ありませんよ。仕事の方は、宰相が、しっかりと、面倒をみてくれるでしょうからね」
前回は、予定外の滞在延長で、レイフが抜けた穴を、ハロルドがカバーしなければならなかったのである。
外政だけでも多忙であるこのハロルドに、また、内政の仕事までも押し付けてくれて―――いや、頼んで行ったレイフには、もちろん、しっかりと、その埋め合わせをしてもらう(させる) つもりなのだ。
「では、奥様もご一緒に?」
「それは――そうですね……」
自分は視察を考えていたのに、妻のことは頭に入れてなかったようだ。
まさか、本気で、仕事の理由だけで視察に来たがっていたとは、セシルも、はは、と乾いた笑みが上がってしまう。
「せっかくの機会ですので、どうぞ、侯爵夫人もお呼びになられてはいかがでしょう?」
「よろしいのですか?」
「ええ、かまいません。領地の視察は、観光も含まれています。ですから、侯爵夫人にも、楽しんでいただけると思いますので」
「それは、ありがとうございます」
「私は婚儀の後に、一度、領地に戻らせてもらいますが――」
種植え時期で、新年明けでもあって、最も忙しい繁忙期の一つである。
「ああ、もし、私の世話をしてくださることをお考えなら、そのようなことは気にしないでください」
ハロルドも、レイフから、領地での繁忙期の話を聞いている。それで、多忙を極めるセシルの仕事量も、レイフから説明されていた。
「今回は無理をお願いして、視察をさせていただきますから、どうか、私のことは気になさらずに」
「そうですか。種植え時期は、少々、時間が押しているものでして……」
「多忙であるとお聞きしています。私はご令嬢の邪魔をする為に、領地の視察をさせていただくのではありませんので」
「そうですか、わかりました。では、最初の予定は、一週間ほどということで」
「ええ、ありがとうございます」
「今の所、二月末に、領地へ発とうと予定しておりますの。ですが、その日程が合わないようでしたら、少し遅れてお越しになられてもよろしいのですよ。ギルバート様には、一カ月ほど領地に残ってよいと、お許しを頂きましたので」
さすがに、セシルが婚儀を終えてすぐに領地に戻るなど、常識的にも、新しい妻となった立場的にも、体裁が悪いものだろう。
それでも、ギルバートは、「気にしないで行ってきてください」 と、セシルの領地帰りを許してくれていた。
「いえ。私も、その時期に時間を空けるように、手配しておきますので」
「わかりました。ヴォーグル侯爵は、宰相閣下から私の領地のお話を伺っていらっしゃるかと思いますが、もし、事前に視察内容でご希望がございましたら、どうぞおっしゃってくださいね。時間的にも、全部、お聞きできるとはお約束できませんが、説明できるように、人員を手配しておくことはできますので」
「ああ、ありがとうございます。ご令嬢にご迷惑はかけないようにするつもりですが――そうですね、例えば、あなたがなさっているという定例の報告会など、参加させていただけたら、とても勉強になると思いまして。宰相のお話からしても、私――いえ、我々には、全く知らぬ会議方法をなさっているとお聞きしています」
読んでいただきありがとうございました。
Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)
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