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Е.д 楽しみ - 05

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 でも、ギルバートの館は、どこを歩いていても日当たりが良く、午後の日差しが輝いて部屋や廊下を映し出すほどの明るさだ。


 直射日光にあたり、家具や調具品が色落ちしているかと言えば、そんなことは全くない。

 全てピカピカで、セシルにしてみたら、どれも新品に見えてしまうほどの高級品ばかりが置かれていた。



(これ……、下手に触らない方がいいわよね……)



 手をぶつけました。アクシデントです――なんて、花瓶一つ落としてしまったら、ものすごい惨状になってしまうのではないだろうか。


 そんな心配も、少々、上がって来てしまうセシルだった。


「ギルバート様のお部屋はどちらに?」


 なぜか、その質問には、ちょっとした間が降りた。

 不思議に、セシルは隣を歩いているギルバートを見上げる。


「えーっと、ですね」


 それで、理由は判らないが、なぜかは知らないが、ギルバートは少し照れてしまっているようなのだ。


「私の部屋は、その……ですね、セシル嬢の部屋の隣です」

「隣ですか?」

「そう、です。セシル嬢は、私の婚約者で、妻となる女性です。通常でしたら、王女(おうじょ)()となる女性ですから、私の私室の……隣に、その……王女(おうじょ)()用の部屋があります」

「まあ……、そうでしたの」


 いや……、さすがに、そんな立派な部屋をあてがってもらうとは、露にも思わなかったセシルだ。


「ですが、繋がっているドアは、絶対に、許可なく開けませんから、心配なさらないでください」


 大慌てでそれを付け加えるギルバートに、セシルの口元がちょっと綻んでしまう。


「アトレシア大王国では、やはり、婚儀までは清い関係でいなければなりませんか?」

「えっ……!?」


 ギルバートは目を丸くする。


 珍しいギルバートの表情を見て、セシルの口元が更に綻んでいく。

 なんだか、今日は王宮に到着して早々、随分、可愛らしいギルバートの表情を見られたものだ。


「ふふ。冗談です。さすがに、王宮では、そのような行動も醜聞になってしまうでしょうから」

「そう、なんですが……」


 それでも、冗談だとしても、心臓に悪い一言を出してくれたものだ。

 ドキドキと、ものすごい速さでギルバートの鼓動が高鳴っている。


 本当に、セシルは、これだけセシルにほれ込んでいるギルバートの心情を理解していないことだろう。


 それが悔しくて、ギルバートは自分の腕に乗せられているセシルの手を取った。

 そして、その手をそっと握りしめ、自分の口元に近づけていく。


「私はあなたを前にすると、歯止めがきかなくなってしまいますから、あまり私を刺激しないでください。あなたに襲い掛かってしまっても、知りませんよ」


 ギルバートはセシルの前では、いつも、どこでも、満点がつくほどの紳士だ。その行動も、仕草も、言動も、どれをとっても紳士的で、(うるわ)しの貴公子だ。


 そのギルバートのタガが外れて、普段とは全く違う行動を起こすなど、セシルも想像がつかない。

 つかないけれど、ちょっと、想像してみたくもなる。


「ふふ。私も、ギルバート様のお部屋に忍び込まないように、気を付けますね」

「……っ!」


 しっかりと、自分の唇をセシルの手の甲に当てているギルバートの動揺が露で、その頬がうっすらとだけ紅く染まっていた。


「セシル嬢……、私で遊んでいるでしょう?」

「そんなことはありません。ただ、これから、もっとギルバート様のことを知っていく機会ができて、私も嬉しく思っています。楽しみにしております」


 その一言で、ギルバートも降参である。

 セシルの掌の上で転がされようが、ギルバートはセシルにメロメロなのである。心底惚れ込んでいる女性を前にして、ギルバートになど勝ち目はない。


「私だって……ずっと楽しみにしておりました」

「これから、どうぞよろしくお願いいたしますね、ギルバート様」

「私こそ、よろしくお願いします」


 セシルは、無事、アトレシア大王国に到着しました。

 婚儀まで、もう、あと少し。



* * *



「えっ……? ――コトレア領への視察、でございますか?」


 これは予期していない要望と展開で、セシルも(礼儀正しく) 聞き返してみた。


「はい。無理をお願いしているのは分かっているのですがね――是非にとも、お願いしたく」


 一体、どんな状況変化か展開で、今の状況に陥ったのかセシルも考えてはみるが、全く思い当たる節がない。


 そして、今、セシルの目の前には、王宮であてがわれた客室の椅子に、王国の現外務大臣を務めるハラルド・ヴォーグル侯爵が座っている。


 ハラルドから、セシルに直接お会いしてお話したいことがありますので――と、ギルバートは頼まれ、それで、セシルの了解を得て、ギルバートはハラルドをセシルの客室に連れて来た。


 今は外務大臣に任命されたが、それまでは、王国の宰相を務めていた敏腕侯爵だ。そして、現国王陛下の統治下、ヴォーグル侯爵は筆頭侯爵家でもある。


 公爵家を抜かせば、()わば、王国内で王家に次ぐ最高位の貴族だ。


 ヴォーグル侯爵は、ギルバートの婚約の儀でセシルに一度会ったきりで、その後は、セシルと会ったり話したりする機会もなかったものであるのに。


 それで、ギルバートはセシルの隣に座って、事の成り行きを見守っている。



読んでいただきありがとうございました。

Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)


Ngithemba ukuthi ujabulele lesi siqephu

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