表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
519/539

Е.д 楽しみ - 02

ブックマーク・評価★・感想・レビューなどなど応援いただければ励みになります! どうぞよろしくお願いいたします。

 セシルの邸でドレスの仮縫いをしていたアトレシア大王国の仕立屋も、セシルより先にアトレシア大王国に戻っている。本格的なドレスの本縫いが始まるらしい。


 メインのアクセサリーを受け持っているカー・サルヴァソンも、仕立屋のグループと一緒に帰っている。そちらも、仕事に専念している、という話を聞いたが、それがどれくらい進展しているのかは、セシルも知らないことだ。


 着々と、セシルとギルバートの婚儀の順義は進められている。


 王宮では、セシル不在の為、有難いことに、王妃陛下であるアデラが婚儀の準備の指揮を取ってくれている。親切に、その役を買って出てくれたのだ。


 感謝しております、王妃陛下――なんて、何度もセシルが感謝して拝んでいたのは、アデラも知る由もなし。


 コトレアはセシルの故郷だ。十歳の時からコトレア領にやって来て、ほとんどヘルバート伯爵領に滞在することもなく、子供時代、少女時代、そして、成人してからも、セシルは年の大半以上をコトレアで過ごしてきた。


 それが、今度からは、アトレシア大王国の王都が、セシルの帰る場所となるのである。


 毎日の生活がアトレシア大王国の王都が基準になって、コトレア領に帰るのは、領地を統治する為の仕事が目的となるはずだ。


 そう考えてしまうと、なんだか、不思議な気分である。

 まさか、この世界で(現世なのか、前世なのか)、セシルの居住地が変わり、おまけに、隣国に嫁いでいくことになるなんて、一体、誰が想像できただろうか。



“グルクスバーグ侯爵夫人”



 未だに、慣れない響きだ。


 セシルの旦那様になるのが、元王子殿下で、騎士団の副団長で、新グルクスバーグ侯爵となるギルバートだ。


 ふと、ギルバートのことを思い出して、セシルもちょっと口元を緩めていた。

 ギルバートから届いた最後の手紙には、



「セシル嬢に会えるのをとても楽しみにしています」



というギルバートの素直な気持ちがこもった一文が、手紙の最後に記されていた。


 セシルも――実は、ギルバートに会えるのを楽しみにしている。


 ギルバートは、これから、セシルの旦那様になる男性だから。ただの“知り合い”という関係ではなくなる。“夫婦”という新たな絆ができる。


 それを考えて、セシルもギルバートに会えるのが楽しみなのだ。


 ギルバートと一緒に暮らす生活は、一体、どんなものになるのだろう。

 どんな風に、お互いの気持ちが深まって、愛情と変わっていくのだろう。それとも、深く尊敬し合う感情なのだろうか。


 どちらにしても、それはセシルが予想できない未来だ。

 だから、セシルも楽しみにしている。


 セシルの“生”が、どんな風に変わっていくのか。どんな風に輝いていくのか。

 セシルの人生に新たな第三者が混ざり、二人で“家族”を作っていく。


 不思議な気分でもあるし、楽しみでもある。

 予想できないし、知らない経験だから、きっと、アトレシア大王国で、セシルもたくさんのことを知っていくのだろう。色々なことを学んでいくのだろう。


 もっと、もっと、セシルの学ぶ意欲が刺激されていく。

 ああ、すごく楽しみだ。



* * *



 ソワソワ――なんて素振りは見せてはいけないだろう。


 それでも、気もそぞろで、仕事なんて手がつかないのは、不思議ではない。

 でも、そこまで仕事をサボっている様子を見せたら、叱られてしまうだろう。しっかりしてください、と。


 でも、気になってしょうがない。

 まだか……、まだか……と、今朝からずっと、そればかり気にしている。


 過去の例から考えると、コトレア領からアトレシア大王国の王都まで旅をするのは、五日半ほどだった。


 でも、それは、馬車の移動が()調()で、休憩だって、あまりに簡単な休憩しか取らなかったからだ。


 今回は、大型の荷場車が一緒なだけに、移動が()調()だろうと、スピードは落ちてしまうはずだ。

 そうなると、早くても六日。または、七日の旅路となる。


 今朝、騎士団にやってきたギルバートの前に、セシルを迎えに行った護衛の騎士が二人揃っていた。

 セシル達一行は、今日の午後に王都に到着する予定です、という報告と共に。


 それを聞いたギルバートが、あまりの嬉しい朗報に、どれほど心を躍らせていたことだろうか。


 王都に近づいたら先触れを飛ばすようにと、護衛に向かわせた騎士達には指示を出していたギルバートだ。

 王宮での、セシルを出迎える準備があるから。


 随分、まともで、正当な理由だ。


 でも、ギルバートの心情を理解しているクリストフは、ただ単に、セシルの到着が待ちきれないギルバートが、心配して、心配して、心落ち着かないから、その指示を出したことをよーく知っている。


 数か月前までは、コトレアの豊穣祭で、ギルバートだって、毎日、セシルに会っていたのに。

 それでも、セシルがアトレシア大王国にやって来るのが待ちきれないのだ。

 会いたくて、待ち遠しいのだ。


 ソワソワ、ソワソワ。

 平常心を保とうとしても、無理があるというものだ。

 今日、やっと、セシルに会えるのだから。


 セシルがアトレシア大王国にやって来る日にちが近づいてきて、毎日、ギルバートはセシルに会えるその時を楽しみにしていた。

 楽しみに待っていた。



読んでいただきありがとうございました。

Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)


O ṣeun tí o ka ìwé yìí.

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Funtoki-ATOps-Title-Illustration
ランキングタグ、クリックしていただけたら嬉しいです (♥︎︎ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾
小説家になろう 勝手にランキング

その他にも、まだまだ楽しめる小説もりだくさん。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ