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Е.в 婚儀の準備と言うのは - 06

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 アトレシア大王国から送られてきた仕立屋がドレスを作るのなら、それはそれでいい。アトレシア大王国の慣習に沿ったドレスなら、それはそれでいい。


 超多忙を極めるセシルは、アトレシア大王国に向かう前に、さっさとドレスのデザインを仕上げなければならないのだ。


 絶対に、ギルバートの恥にならないように。


 普段は、ここまでのやる気を見せているセシルではないが、現状は余裕もなにもあったものではないと一番に理解しているセシルだ。


「デザイン画を何枚か持ってきた、と?」

「はい、そうです」

「では、まずは、デザインの確認をしましょう。大方のデザインを決めなければ、布も、飾りも、何も決められませんものね」

「わかりました」


 これから、数週間、今溜まっている仕事を押しに押して、セシルのドレス作りに精を出さねば!


 婚儀の準備と言うのは、どの時代(世界) にいても、大変ねぇ……。



* * *



 王妃陛下直々の要請とあって、カー・サルヴァソンは、(ものすごく渋々、嫌々に) コトレアの領地にやって来ていた。



「そんな短期間でできません」



 王宮御用達(ごようたし)の仕立屋から送られてきた最初の依頼は突っぱねたのに、それからすぐに、王妃陛下直々の依頼だ、ということで、カー・サルヴァソンは、自分の意思でもなく、王宮に呼びつけられていた。


 年を明けてから第三王子殿下の婚儀が予定されているので、花嫁である令嬢の宝石類、アクセサリーなどの仕上げをお願いしたい、と依頼された。


 王妃陛下直々の依頼など、ほぼ“命令”同然ではないか。


 芸術家気質の一宝石彫刻師が、王妃に逆らえるはずもない。そんなことしたら、即刻、王都から追放されてしまっていたことだろう。


 だが、カー・サルヴァソンは、この依頼が、初めから気に入らなかったのだ。


 以前、第三王子殿下からの依頼でネックレスを創った時は、優に、数カ月近くあったから、その依頼も受けたのだ。


 おまけに、第三王子殿下が説明した後、髪飾りとしての額のアクセサリーに似合うものならなんでもいいと、第三王子殿下は全てカー・サルヴァソン任せだったから、依頼を断らなかったのだ。


 だが、今回は、花嫁役のご令嬢の宝石、及び、アクセサリーを任された。

 それも、婚儀が二月の初めだなど、今から大急ぎで仕立てても、二カ月足らずで、王族の婚儀に身に着けるような飾りなど、作れるはずもない。


 隣国の伯爵令嬢だとは説明されたが、貴族の令嬢は、皆、全員、同じである。

 あれがいい、これがいい、これがダメ、あれが嫌――と、注文だけ多く、自分の我を通すのが常だ。


 生活の為に、生活資金はいる。創作の為には、もっと、それ以上の運営資金が必要となる。


 だから、仕方なく、カー・サルヴァソンだって、貴族の令嬢からの依頼を受けざるを得ない。だからと言って、本人が進んで依頼を取っているわけではない。

 余程の紹介がなければ、カー・サルヴァソンだって、普通の依頼など受けはしないのだ。


 王宮から用意された馬車に乗って揺られること六日。

 馬車の中から見ている景色にも飽きてきた頃、隣国への国境を過ぎたと、護衛の騎士から報告され、それからまた数時間、カー・サルヴァソンは、やっと隣国コトレア領に到着していた。


 邸の入城許可がおりて、邸に繋がる一本道を進みながら、気乗りしないカー・サルヴァソンは、貴族のご令嬢の“ご機嫌取り”である。


 入り口では執事に迎えられ、この邸の主は不在だと言われた。


「お着きになられたばかりでございますので、休息を取られてはいかがでしょうか?」

「いえ。仕事に取り掛かりたいので」


 それで、カー・サルヴァソンの荷物は、客室に運ばれていくようだった。

 そこから通された部屋には――たくさんの布が散乱していて、床の上の敷かれた敷物の上や、椅子に座っているお針子が、忙しく手を動かしていた。


「おや? サルヴァソンさん」

「ああ、お着きになったか。長旅だったでしょう?」


 年配の二人の男性が、カー・サルヴァソンの姿を認め、軽く挨拶する。

 片方は、一応、顔見知りである男性だ。アトレシア大王国の王宮御用達(ごようたし)も務める、王都でも伝統的な宝石類を扱う、宝石商の主人である。


「ハトレン殿」


 それで一応仕方なく、その二人の方に進んで行く。


「サルヴァソンさん、長旅はどうでした?」

「ええ、問題なく」

「こちらは、王宮御用達(ごようたし)の仕立屋、フレイ・ダル殿」

「お噂はかねがね、サルヴァソン殿」

「はあ。初めてお目にかかります」


 すでに、棒読みに近い――かなり失礼な態度のカー・サルヴァソンだったが、フレイは気にした風もなく、少し後ろを振り返った。


「これは私の娘で、カリーナです」

「お初にお目にかかりますね、サルヴァソンさん」

「はあ、よろしく」

「王宮御用達(ごようたし)のハトレン殿がいるのなら、私は必要ないでしょう」


 ハトレン宝石商は、伝統的な宝石を扱う格式の高い高級宝石商だ。


 上客は全て上流貴族で占められていて、カー・サルヴァソンとは、宝石商という仕事が同じだけで、ほとんど関りのない人物だ。


「いえいえ、そんなことありませんよ。今回は、うちでは、婚儀の後の祝宴で身に着ける飾りなどを、請け負うことになりましてね。婚儀でのウェディングドレスは、サルヴァソンさんの作られたネックレスを基本として、全て合わせていく方向になったんですよ」

「はあ……」


 一体、いつそんな話が決定したのだろうか。


 おまけに、カー・サルヴァソンとハトレン宝石商とは、一応、商売(がたき)になるであろうに、メインの婚儀の宝飾を、カー・サルヴァソンが請け負っても、ハトレンは全く気にしていないようである。



読んでいただきありがとうございました。

Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)


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