Е. б やっと、ただいま - 08
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「コミュニケーション方法が統率されていて無駄がありません。混乱は上がりませんが、領土内の領民へのコミュニケーションも一貫していて、あれなら、不安さえ上がってはこないでしょう。なににおいても一貫しているというのは、従いやすいそうですね。混乱や困惑を防ぐには、最善の方法なのでしょう。それで、ご令嬢は、いつも“何”ではなく、“なぜ”を尋ねるようにしていらっしゃるとか」
「なぜ?」
「ええ、そう尋ねることで、相手側も、自分自身で考えなければならなくなってしまいますからね。“何”を押し付けられると、指示通りに動いている時は問題ないかもしれませんが、指示通りに動けなくなってしまった場合、動きに乱れが出てしまうのは、大抵、命令している上からではなく、指示を聞いているだけの下からだ、ということで」
「ほう?」
「この方法は、戦略にも使えるそうですよ。あの地の領地の騎士達は、そういう訓練を受けているらしいです。ギルバートの話によると、以前、合同訓練で王国の騎士団が、たった数人の子供達に負けてしまった時、ご令嬢がギルバートに説明したそうです」
もちろん、もう定例、いや恒例行事となっているギルバートの“報告会”で、しっかり話を聞いているレイフだ。
「あの子供達は、普段からいくつもの問題を想定して、状況を想定して、そういった予想外の状況内で、常にどうやって自分一人で動けるか、自分達だけで動けるか、そういった訓練をしているそうです。“シミュレーション訓練”というらしいのですが」
「シミュレーション、訓練? 聞いたことがないな」
「そうでしょうね。そう言った訓練の繰り返しにより、あの子供達は、自分達の能力の限界、長点や欠点といったものをとてもよく理解しているのだ、と。だから、あの子供達は自力で動くことができるし、判断もできるし、必要とあらば、自分達で解決方法を簡単に見つけていくことができるそうです。なにしろ、根本的な指針が揺らがない。それを重々に理解している子供達だけに、どんな状況になろうと、道に迷うことはないのでしょう」
「その根本的な指針とは?」
「絶対に生き抜いて、生き延びる、ですよ。お聞きになったでしょう?」
「そうだが――そんなことで、自力で行動できる、立ち上がる能力が養われると?」
「そんなこと、ではありませんよ。その揺らがない絶対的な指針があるから、あの領地は、領民全員は、ご令嬢を支持しているのです。毎回、気分次第で、状況次第で、目的や行動を変えていては、安定も保てず不安がでてくるものです。ですが、ご令嬢の絶対的な指針は、どこにいようと、どんな状況だろうと、一度として揺らいだことがない」
その指針と信念が、一貫して領地全体に、領民全員に、明確に提示されている。
「いつも、その指針を目標に、ご令嬢の行動を決めていくのですから、子供達も絶対的な忠誠をご令嬢に誓えるのでしょう。絶対に生き抜いて、生き延びて主を護る――だから、できないことはなんでもし、補えるものはなんでもし、殺すことも厭わない。それが、彼らにとっての絶対真理となっているから、どんな戦いの場でも、彼らのすることは変わらないんです」
ギルバートは、騎士の誇りの在り方が、子供達と全く違っていた、と話していた。
だから、子供達の覚悟には及ばなかったのだ、と。
「生き延びる為に逃げ切るのが最善と判断したのなら、一寸の躊躇もなく、それを実行するでしょう。他人から見れば卑怯な手に見える作戦や方法でも、それが最善なら、全く躊躇うことはない。彼らにとって、それは全く「恥」 にはならないのですから。それが、王国騎士団が負けた一番の理由です」
アルデーラも、去年は、合同訓練の内容などは報告で聞いていたが、騎士団長のヘインズからだって、敗因の理由は聞いていなかった。
「ご令嬢は、災害地区の後片付けと引き継ぎを終えれば、次は領地の今年度の決済、年度末調整があり、それから翌年の歳入歳出の経済プラン、領地の運営プラン諸々終わらせなければなりませんからね、これからまだ忙しくなるでしょう」
だが、ギルバートとの婚儀の期日も迫ってきている重要な時だ。
「当初の予定では、豊穣祭を終えて、できる限り、一カ月で領地での運営の引き継ぎを終わらせる予定でしたが、急な災害問題が発生しまして、その予定も大幅にずれてしまった。ご令嬢も、年末、ギリギリでアトレシア大王国に戻ってこられるかどうか、と言ったところでしょうか」
「そうか」
セシルが多忙なのは周知の事実だ。
それでも、ギルバートとの婚約を終えて、年が明けたら婚儀が控えているこの時期。
ギルバートの臣籍降下は年が明けてすぐだから、その前には、セシルが王宮に戻ってこられると良いのだが。
なにしろ、ギルバートが臣籍降下したからと言って、王家の繋がりが消えるわけではない。だから、セシルにはアトレシア大王国の国政から、王族の歴史から、慣習、その他諸々、新たな教育が必要になる。
読んでいただきありがとうございました。
Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)
ఈ పుస్తకాన్ని చదివినందుకు ధన్యవాదాలు