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Б.б 見限るしかない - 06

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 セシルの話が終わるか終わらないか、いきなり、うるさい怒鳴り声が、その場に割り込んできた。


 ガラガラ、ガラガラ――!

 ガランっ、ガラガシャッ――!!


「うわぁぁっ……!! これは、なんだ!? 一体、どういうことだっ……!」


 全員がその騒音に反応し、子供達が、馬や荷馬車から即座に飛び降りていた。

 全員がボーガンを取り出し、騒音の出場所へ駆けていく。


「うわぁっ……! これはなんだっっ! こんな仕打ち、許されんぞっ!」


 全員が駆けつけた場には、地面に仕掛けてあった罠に引っかかり、縄で足が縛り付けられている――あの能無し中尉が、地面を転げ回っていたのだ。


「何事です」

「貴様らっ! こんな仕打ちが許されると思うのかっ!」


「侵入者は武力行使で叩き潰すことを、忘れてるんですか?」

「なにをっ……! いいから、これを外せっ――」


 あまりに無表情に、セシルが転げ回っている中尉を見下ろす。


「偉そうに。勝手に忍び込んできて、命令しないでもらいたいですね」

「生意気なっ! お前ら、こんな仕打ちが許されると思っているのかっ!」


「我々は王国軍じゃない。()()()義勇軍として、()()この地に残っていただけですが?」

「ふざけるなっ! 部族連合が侵入してきたんだぞっ!」


 それで、ふんっ、とセシルが鼻を鳴らしていた。


「勝手に侵入してきただけではなく、部族連合にまで侵入されて、まあ、無事でいられたらいいですがね」


 ひぃっ……と、(わめ)き散らしていた中尉が蒼白になる。


「くそっ……! これを外せっ! 外さないかっ」

「人にお願いする時は、礼儀正しくしなさい」


 それだけを冷たく言いつけたセシルが、全員に視線をやる。


「さあ、行きましょう」

「待てっ……! これを外せっ――」


 だが、全員が中尉を無視して、馬に乗りあがっていく。


「待てっ……頼むっ! これを外してくれっ。部族連合が来てるんだぞ。頼む、外してくれ……」


 本気で、中尉に見向きをしないでこの場を去っていきそうな勢いの連中に向かって、中尉が更に声を荒立てる。


「待てっ……! 頼む、外してくれっ! お願いだっ! 待ってくれ……」


 あまりに(わめ)き散らしてうるさいので、感情もないセシルの眼差しが、リアーガの方に向けられた。

 リアーガだって、嫌そうに顔をしかめる。


 馬から降りて来たリアーガが中尉の足を縛り付けている縄をナイフで切り落とした。


「貴様ら、こんな仕打ち、許されんからなっ――」

「うるせーぞ。ピーチクパーチク喋ってんなっ」


 グイッと、リアーガが中尉の胸倉を掴み上げ、その顔を近づけた。


「うるせーぞ。次にうるさく騒いでみろ。木の下に真っ逆さまに吊るし上げるぞ」

「な、なにをっ……」


「うるせーって言ってんだよ。お前、戦が勃発してるっていうのに、随分、呑気なこったなあ?」

「――そ、それは……」


 狼狽を見せて、目をギョロギョロとさせる中尉の行動は、随分、怪しいものだ。

 リアーガの瞳が細められ、中尉の顔の真ん前で、鋭く睨みつけた。


「おい。てめー、何を考えてやがる?」

「な、なにも……」


「胡散臭い奴の言うことを信用するかよ」

「時間の無駄です。行きましょう」


 セシルがリアーガに割って入る。


 ふんっ、と冷たく鼻を鳴らし、リアーガが乱暴に中尉の胸倉を突き放していた。


 簡単に馬に乗り上げ、それで、全員が動き出した。


「……くそっ!貴様ら、覚えていろっ――」


 後ろで興奮した中尉が叫び上げているが――誰一人、聞く耳を持たない。


 こんな切迫した戦のど真ん中で、一体、何をやっているんだ?


 ロクデナシで大馬鹿者だけでなく、“間抜け”まで混ざって、手が負えない。


 セシル達は崖側に陣を張っていて、そこから少し回れば、すぐに内門に到着する。

 セシル達が近づいていくと、兵士達が(ただ) 立ち並んで、内門を囲んでいる。



――この緊迫した状況で、敵側に背を向けてバカじゃないの?



 全員、暗黙で一致した意見だった。


 内門から襲ってくる可能性もある。だが、今は、国境側に敵が侵入してきているのだ。

 その攻防が崩壊し、敵が駐屯地内に進撃してきた場合、背を向けている兵士達は、背中ががら空きである。


「そいつらを逃がすなよっ!」


 後ろから大声で叫んでくる――(またも、うるさい) 中尉が走り込んで来た。


「戦を離脱する奴らだっ――!」


 ええ?! ――と、門に向き合って(睨み合って) いた兵士達が、叫び声に驚き後ろを振り返るが、意味の解らないことを叫ばれて、全員の頭に“?”マークが明らかに浮かび上がっている。


 走り込んできた中尉が、はあっ、はあっ……と息を切らせ、それで、立っていられなくて、前屈みになって両手を膝に押し付けた。


「………戦線離脱など、許されんぞ!」

「ふざけたことは、言わないでもらいましょうか」


 静かで、それなのに、その困惑が上がり出している場でも、全員に聞き渡るほどのはっきりと聞こえる声が、その場を支配する。


「我々は、ノーウッド王国の者です。アトレシア大王国の軍律が通用するはずもない。いい加減、馬鹿げた主張は、やめてもらいましょうか」


「ノーウッド王国だろうと関係ない。今は、部族連合が攻めて来てるんだぞ。貴様らだって、戦に出陣しろ!」


 セシルが馬から飛び降りて来た。

 スタスタ、スタスタと、足並みも止めず、中尉の真ん前にやってくる。


 立っている中尉は、セシルよりほんの少しだけ背が高いだけだ。


 覆面で隠している顔も、長い前髪も、セシルの顔を出させる要素はない。だが、歩いてくるだけで――その口に出されない静かな怒りが、ヒシヒシと肌に突き刺さるかのように、セシルの背後で立ち上がり始めていた。


 ビクついて、中尉が、無意識で一歩下がる。


「な、なんだ……っ?! ――生意気なっ……。部族連合が襲撃してるんだぞ……」

「その戦の最中で、一体、無能な指揮官は何をしている」


「む、無能……! 偉そうに――」

「黙りなさいっ」


 ピシャリ、とセシルが言いつけていた。


「敵が今この場で進撃してきているのに、一体、何をしている!? 無駄な時間を費やして、他国の貴族に戦の強制参加? 自分の兵士達も指揮できず、これだけの非礼を働き、いい気になっているのは、一体、誰だと思っている」


 ジャっ――

 子供達全員が、マントの下からボーガンを取り出し、一斉に、中尉に向かって標準を定めた。


「……ぃひっ……ぃ……! 一体、なにをしておるっ……!? おれに向かって攻撃してくるんだぞ。そいつらを捕まえろ……!」


 だが、その場の兵士達は、一体、何が起こっているのか、さっぱり理解していない状況だ。

 それで、顔を見合わせて、どうしたものか……と、立ち尽くしている。


「貴様ら、全員、捕縛してやるっ! このおれを侮辱した罪で、捕まえてやる――」


 グイッ――と、セシルが中尉の胸倉を掴み上げていた。


「度重なる非礼、契約違反、違法行為、職務怠慢、それ以上の無能さ。その全部、叩きつけて、王国に報告して欲しいのか!?」

「な、なにを……」


「ノーウッド王国など関係ない? アトレシア大王国に全く無関係の貴族を拘束し、意思に反して恐喝行為。さあ、もっともっとくだらない罪を積み重ねてみるか?」

「……っ……くっ……くそっ……」


 口ではセシルに勝てないと判り、中尉が焦りながら自分の腰の剣を抜き放つ。


「……っくそっ……! 貴様ら全員、斬ってやる……! 牢屋にぶち込んでやるぞ!」


 リアーガがすぐに反応していた。

 馬から飛び降り、数歩、大股で走って来たリアーガが、中尉の腕を跳ね除け、その剣を吹っ飛ばした。


「ふざけんなよっ」



読んでいただきありがとうございました。

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