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Е. б やっと、ただいま - 03

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「いいなあ、いいなあ」

「イングラムのおみやげだってあるんだぞ。はなれないと、あげないからね」

「おみやげ? それ、なあに? ぼくの? ちょうだいっ、ちょうだいっ、にーたまっ」

「じゃあ、ショルダーバッグから、はなれなさい。おなじのを、かってあげたんだよ」


 そして、初めて“お土産”というものを買っただけに、オスミンも興奮がおさまらない。


「ねえ、どこ? にーたま、どこ?」

「レイフおじうえがもっているんだよ」


 それで、キョロキョロと叔父を探してみるが、どこにもいない。


「おじうえ、どこぉ?」


 だが、レイフはその場にはいない。

 イングラムの瞳に、うるうると大粒の涙が溢れ出していた。


「……おじうえ、どこぉ……」

「ああっ、イングラム。ないたらダメだよ……」

「にーたまぁ……」


 それで、うわぁーん、とイングラムが泣き出してしまう。


「イングラム、ないたらダメだよ……」

「……にーたまぁ……」


「もう……、ないたらダメだよ、イングラム……。――しかたないな……。じゃあ、いっしょに、おじうえをさがしにいこう」

「……うん……」


 お兄ちゃんらしく、オスミンがイングラムの手をしっかり握りしめ、二人が動き出した。


「えっ――あっ……、ちょっと待って、二人とも――お待ちなさいっ」


 二人だけでさっさとレイフを探しに行く気なのに母親に止められて、二人が母親を見返す。

 きょとんと、その子供らしい瞳が、クリクリとアデラに向けられた。


 アデラは微かに顔を引きつらせながら、


「レイフさんは、今、国王陛下に帰国の挨拶を済ませているのですよ」

「ちちうえの? ――じゃあ、ちちうえに、あいにいこうっ」

「はいっ!」

「あっ――お待ちなさい、二人とも……」


 それで、意気揚々と歩きだした二人を、また止めてくる母親だ。


 二人からまたその視線が向けられるが、今度は、本当に不満げな顔がありありで、アデラも苦笑してしまう。


「お待ちなさい、二人とも。国王陛下はお忙しいのですよ」


 不満げな二人の顔が、ええぇ!? と、更に不満げな色を映す。


「お話が終わりましたら、オスミンのお土産を運んできてもらうようにお願いしましょう。それで、いいでしょう?」


 すごく不満そうだが、母親に逆らうこともできないので、二人揃って口を尖らせているだけだ。


「オスミン、その「ショルダーバッグ」 の中には、なにも入っていないのですか?」


 それで、パっとオスミンの顔が輝いた。


「パズルがはいっていますっ! それから、セシルじょうがくれた、ハンカチも。ハンカチは、おとこのこように、けんのししゅうがはいっているのですっ!」

「まあ、それは素敵ですわね。パズル――とはなんですの? わたくしは、聞いたことがありませんわ。イングラムにも見せてあげましょう?」

「はいっ! イングラム、おいでよっ」


 それで、意気揚々と弟の手を引きながら、オスミンが母親の座っている椅子に戻って来た。

 どうやら、レイフの話題からは避けられたようである。


 それから、大事そうに自分のショルダーバッグから、コトレア領地の工房で自分が色付けしたパズルの箱を取り出し、一個、一個を説明しながら、色付けの過程の説明も忘れず、パズルの仕方も見せてみせて、その午後は話題のつきないオスミンの話であふれていた。


 その後、レイフには侍女からの言伝が伝えられ、お土産のことをすっかり忘れていたレイフは、早速、ショルダーバッグを侍女に手渡していた。


 今か、今かと、(はや)る気持ちを押さえながら待っていたイングラムは、オスミンが自慢するようなお土産をもらって、悲鳴を上げるほどの(いや、実際に上げたのだが) 大喜びだった。


 セシルの助言で、イングラムだって、オスミンが色付けしたパズルとハンカチが入っている。


「あのね、イングラム、これはね、“おそろい”っていうんだよ。ぼくとおんなじなんだよ」

「にーたまっ!」


 兄弟そろってお揃いの小物など、生まれて初めての経験である。


 イングラムのショルダーバッグはオスミンのように黒地にし、一つだけ違う点は、赤のストライプではなく、青のストライプだった。


「ねえ、かっこいいでしょう? すごいだろう?」

「うんっ、すごい。にーたま、だいすきっ」

「そうだろう? “おそろい”なんだよ。ぼくとイングラムだけなんだから」

「すごーいっ」


 小さな兄弟二人は、生まれて初めて見る“お揃い”に、大満足だったそうな。


 夕食時になるまでオスミンの“お土産話”が尽きず、ずっと、色々なことを喋り続けて説明をするオスミンは、まだまだ話の続きがあるようだった。



「まあ、そうですの……」



とは、アデラも相槌を打ってみるが、実の話……オスミンが話している内容のほとんどを理解していないアデラだった。


 なにしろ、摩訶不思議な単語ばかりが上がって来て、オスミンにその意味を質問してみても、すぐに、自分の嬉しい経験談が混ざってしまい、話が脱線して、また新たな単語が飛び出してきて……、更に混乱を極めるアデラだった。


 夕食時は、多忙である国王陛下のアルデーラも混ざって、久しぶりの一家団欒での食事会だった。


 その間でも、オスミンの興奮が収まらず、食事中でも色々な説明が飛び交い、アデラだけではなく……、アルデーラも揃って、理解不能な息子の話を聞く羽目になってしまったとな。




読んでいただきありがとうございました。

Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)


Tack för att du läser den här boken

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