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* Е.а ごろ寝 *

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 最高潮に疲労している時に、しっかり、ぐっすり眠ってしまうと、目を覚ました後は、今まで以上に、更にものすごい疲労が襲ってくる。


 医学的にも、その理由も原因も理解している。


 疲労が溜まっている間は体の緊張状態が続き、アドレナリンが活発になっている。だが、一旦、熟睡を経験した体は、そこから生存本能が一気に誘引され、極度の疲労による身体の危機感を、脳が登録してしまう。


 だから、身体の危機から脱出する為、体を保護する為に、身体機能の低下が生じてしまう。その間は、体を動かすことなく、休んで体の危機から回復する、という仕組みである。


 そして、熟睡を経験した脳が、緊張状態から解放されたとの勘違いが生じ、一気に休眠状態へとホルモンが切り替わる。


 そんなことを医学的、理論的に説明しようが、理解しようが、今のセシルには全く意味はなかった。


 昨日、あまりの疲労で熟睡してしまったセシルは、例外なく、もちろんのこと、今朝、目を覚ましてから、ほぼ動くことがままならないほどの、更なる疲労に(さいな)まされていた。


 再起不能――には近いかもしれない。


 あまりに体が重く、だるく、動くことがままならないので、今日は仕方なく、休息を取ることにした。

 動けない状態のセシルが無理をしても、余計な仕事を増やすだけである。


 それで、セシルは会議室にある長いソファーで――だらしなく、貴族の子女としてははしたなく――クッションに寄りかかりながら、横になっていた(ごろ寝状態)。


 それでも、セシルが領地を空けていた間の領内の仕事の報告はあるので、時間が空いた者達から、会議室に立ち寄ってもらっていた。


 セシルのそのだらけたごろ寝を見ても、訪れる領地の代表役達はなにも言わない。


 午前中の何人かの報告を聞き終えたセシルの顔が、申し訳なさそうである。


「――あの……、お疲れでしょうから、どうぞ、今日は休息なさってください」


 朝食の場でも、それを提案したセシルではあった。


「ああ、私のことはお気になさらないでください」


 そして、朝食時と全く同じ返答をするギルバートだ。

 クリストフは、ギルバートから今日一日、休暇をもらったので、今は自分の客室で休んでいることだろう。


 だが、ギルバートはずっとセシルに付き添っていて、セシルとは対になる長いソファーに腰を下ろしている。


 普段だったら、もう少し休むように提案しているのだろうが、今日のセシルは、完全に集中力が途切れて思考が働かない。体も、動かない。


 ソファーの上で横になりながらギルバートを見上げてくるセシルの瞳も、明らかに疲労の色が濃く映し出されていた。


 話をしながらも、ほとんど動きを見せないことから、セシルは、今日一日、身体的にも完全にアウトだと見て取れる。


 それで、余計にそのセシルが心配で、ギルバートは朝からずっとセシルに付き添っていたのだ。


「そのままお休みになられたらいかがですか?」

「ええ、そうですね……」


 反対もなく、異論もない。

 それで、それ以上話を続けることもなく、セシルは目を閉じていた。

 それだけで、セシルは眠りに落ちていた。


 ギルバートも少々気だるく感じる体を動かして、テーブルの上にある呼び鈴を手に取る。

 呼び鈴を鳴らすと、ほんのしばらくして、執事のオスマンドが顔を出し、丁寧に一礼した。


 顔を上げて、ソファーの上で眠っているセシルを見るだけで、

「毛布をお持ち致します」


 長年セシルの執事をしているオスマンドには、全てお見通しなのである。


「では、毛布を二枚」

「かしこまりました」


 突然の指示を出されても、オスマンドは動じることもない。静かに頭を下げて、会議室を後にした。


 それからすぐに、二枚分の毛布が用意され、一枚はセシルの上に掛けられ、二枚目はギルバートに渡された。


 説明もなしにギルバート用の毛布を手渡すオスマンドは、本当に有能な執事である。


 その後、執事が去って、その会議室では、ソファーの上でセシルとギルバートが休息を取っていた間、邸中の全員が会議室に近寄らず、昼を過ぎるまで、二人は熟睡していたのだった。





「王宮から、使者が送られてきたそうですね」

「ええ、そうですね。ボイマレを経つ前に、使者がやって来ましてね。それで、今日は領地に戻って来たんです」


 ソファーに横になった――はしたなく、失礼な姿――のままのセシルを見ても、レイフはその点を全く指摘しない。ギルバートの横に座って、出された紅茶を優雅に飲んでいる。


「どのような内容で?」

「どうやら、王宮は、ボイマレ地区の当座の救済援助を承諾したようですよ」

「ほう。その程度の慈悲はあるようで」

「ええ。さすがに、そこまで非情ではないでしょう。自国の民ですし」


「なるほど。それでオラフソン伯爵家の対応は?」

「オラフソン伯爵次期後継者は、今、その使者と、被害状況の報告と確認を済ませている最中です。双方での話し合いで、救済援助の詳細をお決めになるでしょう」


「では、ご令嬢の仕事は、ほぼ終わりですね」

「ある程度は」

「今回の災害救助及び救済への損害は、どうなさるのです?」

「もちろん請求しますよ。うちだって、領地、領民の生活がかかっています。無償でお金の木がなるわけではありませんから」

「そうですね」


 そして、レイフはセシルとの会話を進めながら、ただ静かに話に耳を傾けてもいるだけだ。



読んでいただきありがとうございました。

Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)


Hvala, ker ste prebrali to knjigo.

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