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Д.д 心配だから - 03

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「……わしらが、死んでしまうじゃないか……!」

「そうだ、そうだ……」

「……うちの、子供たちは、どうするのよ……」


「そんなの、俺らはどうするんだよっ。俺らに、死ね、って言ってるのか?」

「うちだって、家族が多いのよ。保存食がなきゃ、冬越えなんてできないじゃない!」


 お互いに言い争いを始め、お互いに相手を非難して、その場が混乱で溢れかえってしまった。


 一発触発――とまでもいかないが、それでも、緊張し出した状態に、ここで村人達の行動を止めるべきか、ギルバートも判断をしかねるものだ。


 ギルバートの前にいるセシルは態度が変わらず、どこまでも冷静で、動じた様子もなく村人達の様子をただ静かに観察しているだけだ。


 セシルのその行動を見る限り、どうやら、村人達の行動は、元々、セシルの予想範囲だったらしい。それなら、ギルバートも深く心配する必要はないのだろう。


 一向に言い合いが終わらない中、パチン――と、セシルがその手を叩いていた。

 その音で、反射的に、村人達が一気にシーンと静まり返る。


 お貴族サマがいる前で、お貴族様の決断に逆らうことは許されていない……。


 そんな懸念がありありと顔に出ていて、それと同時に、お貴族サマの決めることに同意したくない反発した気持ちも、その顔にありありと出ていた。


「解決策がないまま、いつまで無駄に言い争いを続けているつもりですか?」


 言葉も口調も落ち着いて静かなものなのに、手厳しい言動には、村人も黙り込む。


 本当に、こういった時のセシルは手厳しいし、手抜きをしないし、容赦がない。


「言いたいことがあるのなら、今のうちに、きちんと言い終えておくべきですよ」


 それで、何かまだ文句を言いたげなグループが、そっぽを向いたまま、黙り込んでいる。


 今はお貴族サマの前で反発した態度を見せられない――ただ、それだけの懸念だ。特別、自分が好き好んで黙り込んでいる行動ではない。


「何も言わないのでしたら、保存食の回収を始めます」

「――そんな……! ひどいっ……!」

「ひどい……!」


 文句を叫びそうになったグループが悔しそうに顔を歪め、おまけに、恨めし気にセシルを睨みつけて、そっぽを向いてしまった。


 さっきからのあまりに非礼極まりない態度と行動に、そろそろ、後ろに控えている騎士達の我慢の限界に差し掛かっているようだった。


 その反応を見て、ギルバートも今動くべきか考えてしまう。


「ひどい?」


 それをわざと繰り返して、セシルが、少しだけ首を倒してみせるようにした。


「皆さん、何を勘違いしているのかは知りませんが、私はこの地の領主ではありません。この地は、オラフソン伯爵領です。この地の裁量権があるのは、オラフソン伯爵です。私ではありません」


 あっ……と、領民達の顔に驚きが浮かんだ。


 そんな当たり前の事実だったのに、セシルに指摘されて、今気づいた、というようなショックを浮かべた様相だった。


「コトレア領は、地理的に言いましたら、近隣の隣接した領地、ということになるのかもしれません。ですから、最初に、この領地の災害の確認にやって来られる土地柄で言えば、コトレア領が最短だったのでしょう。私達は、最初の災害確認と被害状況の確認をしに、この地にやって来ただけです。そして、オラフソン伯爵には、急使を飛ばし、現状を説明してあります。私の責任は終えていますが?」


「あっ……、そ、そんな…………」


 一気に現実問題を突きつけられて、領民のほとんどが、動揺を露わにする。


 今までは――セシルが災害後すぐに領地にやって来て、それで、領民の救出作業や保護などを全部請け負ってくれていたから、それが当たり前のように、領民達もセシル達の援助を受け入れていた。


 だが、セシルは他領の領主であり、この領地の領民を救う義務もなければ、責任もなかったのだ。


 それで、ひしひしと――差し迫る現実問題を突きつけられて、領民達の顔がまた青ざめていく。


 オラフソン伯爵嫡男のアリーは、昨日、セシル達と一緒にボイマレにやって来ている。それで、自分自身で、災害地を確認し、被害状況などの報告なども、セシルにお願いして聞かせてもらっていた。


 何の準備もしてこなかったオラフソン伯爵嫡男アリーは、その場にいてもただの役立たずであると自覚したのか、セシルに許可を取り、その足ですぐにコトレアに戻り、王宮に救済援助を要請する手紙を出しに行ったのだ。


 それで、今日は、オラフソン伯爵嫡男アリーは、まだコトレアに残っている。


 オラフソン伯爵嫡男アリーが王宮に救済要請を出したことにより、もう、これ以上、セシルがボイマレに留まる理由はない。これ以上、領地の資金を無駄にして、他領を《《タダで》》救ってやる義理もない。


 だから、もう、撤退の時期なのだ。


「今、私達がしていることは、オラフソン伯爵がこの領地にやって来るまでの間、あなた達が生き延びていけるよう、その手助けをしているだけです」


 これから数日、いや、数週間、互いに我慢を強いられ、辛い時間を過ごすことになるかもしれないだろう。


 天災などという災害を経験し、精神的、心理的にも多大なショックを受けたことだろう。


 混乱して、先が見えない不安で押し潰されてしまうかもしれない。



読んでいただきありがとうございました。

Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)


Bu romanı okuduğunuz için teşekkür ederiz

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