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* Д.д 心配だから *

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「今日は、これから少し騒がしくなるかもしれませんが、私が指示を出すまでは、静観していただけますか?」


 その質問に、ギルバートも、一瞬、考えてしまう。


「それ――は、騒ぎが起こるから、動くな、とおっしゃっているのですか?」

「いいえ。たぶん、騒ぎにはなりません」


 益々、セシルの質問の意図が判らないギルバートだ。それで、なんだか、少し顔をしかめてしまっている。


「では、騒ぎが起こり得る可能性があるのですか?」

「その可能性はありますが、問題になることではありません」

「問題にはならないのですか?」

「ええ、そうですね」


 そして、全くセシルを理解できないギルバートだ。


 だが、目の前のセシルは、それ以上、深く説明する様子がない。何かセシルには考えがあっても、今の段階では、ギルバート達に教えるつもりはないのだろうか。


 問題が起こりそうな気配でも、問題になる可能性はない?


 ギルバートとしても、全くその状況が想像できないままだ。

 うーん……と、苦虫を潰したような表情を一瞬見せたギルバートだったが、その場は仕方なく、セシルの言うことを聞くしかないようだった。


「……わかりました」

「ありがとうございます」

「ですが」


 ギルバートとしても、この部分は、ちゃんと、しっかりと強調してみせる。


「ご令嬢の邪魔をするつもりはありませんが、危険だと私が判断した場合、ご令嬢を止めに入るかもしれません。私の最優先事項は、あなたの身の安全です。それは、絶対に譲ることはできませんので」


 本気でセシルの身の安全を心配して、もしかの場合は、セシルに怒られてしまうことになろうが、ギルバートはセシルの身の安全を最優先する、という本気の意気込みが見て取れて、セシルも少し感動してしまった。


 今の所、ギルバート達には全く責任もない予定外の仕事をセシルは押し付けているのに、ギルバートはそのセシルに対し、出された指示に反対したことはないばかりか、いつでも、どこでも、セシルの要望を聞き入れてくれたほどだ。


 救済活動中も、ずっと、セシルに付き添ったまま、セシルの力になってくれ、王国騎士団の騎士達を動かしてくれて、セシルとしても、ギルバートには感謝してもしきれないほどの感謝をしている。


 気がついたら、いつも、セシルの後ろにはギルバートが静かに控えていて、セシルのほんの些細な行動も言動も見逃さないように、その全ての注意がセシルに注がれている感じだった。


 そこまで気を遣ってくれる男性など、ギルバートが初めてである。


 それを改めて自覚して、セシルも、じーんと感動してしまったのだ。


「ギルバート様、このようにお力を貸していただきまして、ありがとうございます」

「え? 私は……、あなたの指示に従っているだけで、ほとんど、自分からは何もしていませんが」


「そんなことありませんわ。ギルバート様には、感謝してもしきれないほどの感謝をしております。ギルバート様の好意に甘えてしまい、騎士団の皆さんにも、助力をしていただきましたもの。ですから、改めてお礼を申し上げます」


「いえ……。そこまで大袈裟にお礼を言われることをしているのではありませんので……」


 なぜ、セシルがそこまで感謝しているのか自覚していないところが、ギルバートのいいところだろう。


 それで、セシルも嬉しそうに瞳を細め、素直にギルバートに感謝を向けている。

 感謝の理由が判らなくても、セシルの微笑みが嬉しくて、ギルバートも照れてしまっている。


 そして、にこにこと、ギルバートの後ろで、微笑まし気にギルバートの行動を見守っているクリストフだ。


 お節介焼きの老夫婦でもあるまいに、ギルバートの可愛らしい恋愛を見守りながら、にこにこと、意味深な笑みを浮かべているクリストフだ。


「どうやら、全員が集まったようですね」


 先程、騎士団の騎士達には、救済・復興活動をしている領民達を呼び戻してほしい、とお願いしていたのだ。


 それで、ゾロゾロと、集合場所にしている場所に、村人達が戻って来る。


「では、行きましょうか」


 集合場所で煮炊きをしたり、家族や子供達の世話をしている村人達も、その場にゾロゾロを集まっていた。


 セシルから話があるのでその場に座って欲しい、と言う指示を受けて、立っているセシルの前に、村人達が地面に腰を下ろし座った。


 その後ろを囲むように、セシルの指示が聞こえるように、コトレア領の騎士達も、王国騎士団の騎士達も、村人の後ろに立つように待機している。


「皆さん、まずは、今日までの救済活動の報告を済ませますね。ケルト?」

「はい」


 セシルの隣で控えていたケルトが前に出て来た。


「まず、現時点で、領民の生存確認は全て終了しました。名前や、家族関係、住居地の場所の照らし合わせも、全て終えています」


「ありがとう。その報告書は、オラフソン伯爵嫡男の方に渡しておきますので、村長も後で一緒に確認しておいてください」

「……わかりました」


 一番前に座っている老人が丁寧に頭を下げた。



読んでいただきありがとうございました。

Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)


Hvala vam što ste pročitali ovaj roman.

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