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Б.б 見限るしかない - 04

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* * *



 長い長い行列が、ゆっくりと行進していく。

 馬車が一台程度通れる幅の内門をくぐり、ゾロゾロ、ゾロゾロ、大した急ぎ足でもなく、ただ、ノロノロとした単純な動きで、(一応) 武装した兵士達が駐屯地を去っていく。


 その視界の端に――黒っぽい塊がいたような気はするが、兵士達は、特別、注意を払ってもいない。


 面倒臭そうに、ダラダラと足を動かしているだけの怠慢な動き。


 昨日、かなりの数の兵士達が戦準備を始め、(どれだけ時間がかかっているのかは知らないが)今日やっと、南東に向けて出陣するらしい。


 すでに、部族連合の最初の襲撃が始まってから、五日も経ってしまっている。同じ町で、大した距離があるのでもないのに、()()とやらを出すのに、一体、どのくらい時間をかけているのか。


 呆れてものが言えない、とはこの駐屯地のことを言うのだろう。


 はっきり言って、この駐屯地も、この駐屯地にいる王国軍も、絶望的だとすでに見切りをつけているセシルには、この地に残る理由も、ほぼなくなっている。


 ただ、今日、(あまりに時間をかけて準備した) 援軍を東南側に送るらしい動きを聞いて、さて、どうなるものなのか――と、最後の状況変化を見届ける為に、まだ残っているだけだ。


 大した期待があるわけでもないし、期待しているのでもない。


 それで、いつでも出発できるように、荷造りは終わらせていた。


 ゾロゾロと、のろい行進が終わり、駐屯地もある程度の静かさが戻っていた。戦が勃発している町なのに、普段と全く変わらない日常が戻って来る。


「300人程でしょうか。100人位が騎馬で、残りは歩兵でした」

「そう。ありがとう、θ(シータ)


 小さな焚火を囲んで座って待っている全員の元に、戻って来たフィロの報告が終わる。


「ここから南東の駐屯地や砦までは、どのくらいの距離なのかしら?」

「馬で、30分もしない場所だっていう話だがな」


 ブレッカの商店街で仕入れて来た情報を思い出し、ジャールもそんなことを口にする。


「そうなんですか。結構、近いんですね」

「まあ、馬なりゃな。歩兵――歩いてる奴がいるなら、数時間、ってとこか? 他に、荷物はないのか?」


「ありましたよ。荷馬車が数台」

「へえ。じゃあ、荷馬車も歩兵も、のんびり行軍ってとこか?」


 それで、全員が納得する。


 だが――

 この時、全員が全く予想していない大惨事が――駐屯地を発って行った兵士達に降りかかっていたなど、一体、誰が予想できただろうか。





「――――うあぁ……ぁわ……っ……!!」

「――なんだ……? ……っがわっ……!」


 突然、予想もしていない場所で、時で、後方をのんびりと進んでいた兵士達の間から、叫び声が上がっていた。

 悲鳴が上がる。


 なんだ……、なんだ……! と、全く状況が掴めない兵士達が一気に動揺し、そして、後ろを振り返っている暇もなく、ブシュッ、ザっぁ――!

 次々に後方にいた兵士達が倒れていく。


 異変に気付いた前方の兵士達は、すでに時遅し。


 突然、後方から――全く予想もしていないのに、部族連合の騎馬兵たちが、ドッと押し寄せてきていたのだ!

 それで、全く警戒もしていなかった後方の兵士達は、すでに斬り殺されていた。


 馬が(いなな)き、暴れ、兵士達が逃げ出し――その場は、一気に、阿鼻叫喚(あびきょうかん)と化していた。


 「――一体、どこからっ……!?」


 戦う余裕もなく、暴れ出した馬を押さえながら逃げ出していく兵士達の後を追って、部族連合の兵士達が手を抜かない。


 ザザッ――!

 ガザッ、グサッ――――!!


 その度に悲鳴が上がり、アトレシア大王国の王国軍の兵士達が地面に伏していき、またも、(しかばね)だけが積み上がっていた。





「大変ですっ――!」

「どうしたのです?」


 いきなり、駐屯地内が騒がしくなり、様子の確認にいっていたジャンとフィロが、駆け戻って来た。


「部族連合の襲撃です」

「この駐屯地に?」


「いえ。先程出ていった兵士達が、襲われたようです。それで、逃げ帰って来た兵士達が数人いて、緊急の救援を呼んだようです。それで、駐屯地内の兵士達がパニックになって、内門側に兵士が集まっています」


 そうなると、いつでもこの地を出発できるはずだったセシル達だって、今は動けなくなってしまった。


「わかりました。全員、いつでも動けるように、ここで待機していなさい。私が確認してきます」

「いや、俺が行く」


 リアーガがセシルを止めていた。


δ(デルタ)、一緒に来てくれ」

「わかった。マスター?」

「いいでしょう」


 そこで、少しだけセシルが考える様子をみせた。そして、その視線が、ジャールの方に向けられる。


「何して欲しいんだ?」


γ(ガンマ)と二人で、国境側の領門も確認してきて欲しいのです。ですが、部族連合の襲撃がそこまで来ていた場合は、すぐに戻ってきてください。強行突破で、内門を破り、この場を脱出しなければならないでしょうから」


「いいだろう」


α(アルファ)δ(デルタ)も、敵の姿を確認したら、すぐに戻ってきてください」

「わかった」


 四人が素早く、一斉に、その場を駆けだした。


 一気に、その場に緊張が張り詰めていた。


 その後ろ姿を見送って、

「全員動けるように待機。κ(カッパ)、ここらの地図を見せてください」

「わかりました」


 トムソーヤが荷車に飛びつき、ゴソゴソと、何かを探り出しながら、大きな筒を取り上げた。

 その中から地図を取り出し、セシルの元に走って来る。


 地面に広げられた地図を見下ろし、セシルが膝をつき、目を凝らす。


「援軍が出発したのは……」

「1時半頃です。今は――2時半になりました」


 フィロもまたセシルの隣に寄って、膝をつき、自分の懐中時計を確認する。


「一時間――。となると……」


 南東までの駐屯地までが、馬で30分ほどの距離で、のんびりと徒歩で、二時間くらい?


 そう考えれば、援軍は、ここと南東の中間位に進んでいたはずである。


 確か、ジャール達が確認行った時は、昔の街の路程度は残っているようだったが、誰も手入れをしないだけに、今はほぼ、ジャングルと化しているという話だった。


 だから、南東へ行く道は、馬車道で草花が潰された路が一本程度と言う話だ。国境側には近寄っていないし、領境の領壁がどうなっているのかは、セシル達も詳しくは知らない。


 なのに、行軍で進んでいた王国軍に奇襲だ。


 一体、どういうことになっているのだろうか?


「騒いでいる兵士達から、他に何か聞いていませんか?負傷兵は?」

「さあ。そこまでは判りませんでした」

「そう。それなら――α(アルファ)達が、なにか確認できればいいのだけれど……」


 そこまで呟き、セシルが顔を上げた。



読んでいただきありがとうございました。

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